7話・訓練初日
昨日部屋に帰ったら先生と翔奈絵が抱き着いていたんですが……いったい何があったんでしょうか……
とりあえず、今日は訓練の初日です、何か良さそうな知識を得られると嬉しいですね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
読書を終え部屋に戻ってから夜が明けるまでは翔奈絵と先生の抱き枕状態で夜が明けるまでを過ごした絢は、扉に近づいてくる気配によってその瞼を開ける。
扉の前で立ち止まったその気配は3度扉をたたく。
その音に対して「どうぞ」絢がそう言うとゆっくりと扉が明けられ、そこには昨日の二人のメイドの少女が立っていた。
「「お食事の時間になりましたのでお呼びに伺わせていただきました」」
「わかりました、この子たちを起こしていきますね、場所は昨晩の食堂でいいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
そういうと二人は次の部屋へと歩いていく、絢が周囲を見回すと都月の姿が無い、それを何も思わずに近いところから起こしていく。
起こしても2度寝をするものやそもそも起きないものなど、色々いる中で、再び扉がノックされる。
「入ってください」
その返事の直後に開けられた扉の向こうには、いつも通りにバーワゴンを押して都月が部屋に入っり部屋の惨状を認識する。
「朝の紅茶をお持ちいたしました……、他の方も飲まれますか?」
シーツはぐちゃぐちゃでいまだに夢の中の者や寝息を立てている者など様々だった……
「お願いします」
「私がしますので、絢様はひとまずこちらを……」
そういって都月は紅茶を注がれたティーカップを絢に手渡す、そのカップからはとても芳醇な香りが漂うが、それは絢からすればほんのりと違和感が浮かぶ。
「やはり、この世界には地球のような物はありませんでしたか」
「申し訳ありません、お口に合いませんでしたでしょうか」
本当に申し訳なさそうな声でそういった都月の顔は笑っていた。
「別にいいですよ、そもそもこのルーティーンは私が作ったものではないですし……」
そんなことを言っている間に、都月は他の人を起こし、暖かい紅茶を手渡していた。
「本日はまだ着替えが無い物で、申し訳ございません」
こちらは先ほどとはとても違い悔しそうな、血の涙を流しそうな表情で言っていた。
「大丈夫ですよ、1日2日なら臭いも濃くはありませんし」
そうして、いつもより賑やかな朝を迎えた彼女たちは食堂で合流した他のクラスメイトやボディーガード達と朝食を食べ、またも狙ったようなタイミングでマッドとジムラドが食堂に突撃してきた。
「さあさあ、食い終わっただろう、訓練を始めるぞ!!」
そうして、先日の絢の発言によりそれなりのやる気を持つ彼らは二人に素直についていった……
そのまま昨日の闘技場のような場所につくと、そこには見るからに騎士と魔法使いのような2人1組で数組並んでいて、昨日はなかった案山子のようなものがあった。
「それぞれが名前を呼ぶからの、そこで待っとれ」
ジムラドがそう言った瞬間からそれぞれの名前が呼ばれる、次々に名前が呼ばれて行き、各々の思い思いの挨拶をしてから呼んだ組の前へ歩いていく。
1組当たり6人呼ばれ、最終的に残ったのは絢と唯、都月、先生と学級委員長と翔奈絵の6人
「で、貴様らの訓練を担当するのは……儂らじゃ」
ある意味その場の全員の予想通りで、ある意味その場の全員の予想外だった。
「とりあえず、儂らの位置まで行こうかの」
そういったジムラドが、既に簡単に訓練を始めているその他の組の横を通り過ぎ、絢達もそれについていく。
一つだけ空いている案山子の近くに行くとジムラドが絢達に話しかける、その言葉は絢に向けているようにも見える。
「さて、お主等の得意な武器はなんじゃ?」
「とりあえず私と唯は何でも大丈夫ですよ」
その絢の回答に唯もうんうんと言ったように頷く。
「お主等はどうなんじゃ?」
今度は絢以外に視線を向けて質問される。
それに対して学級委員長は剣を、翔奈絵は弓を、先生は特にないと答えていた。
「ふむ……そうじゃの、とりあえず絢と唯と言ったか、お主等はマッドと戦うと良い、儂はとりあえず残りのこ奴らの底上げじゃ」
そういったジムラドは、絢と唯、マッドの三人を残し、その他を連れて行ってしまった。
「相変わらずあの爺さんは強引だなぁ~
っま、一回やってみるか、とりあえず今は大した武器が無いからな、剣で我慢してくれ」
そういってマッドが鉄製の剣を二人に放り投げる、唯はそれを受け止めた後、片手で切っ先を上空に向け、絢は足で蹴り上げて両手で持つ。
「剣を握るのは何ヵ月ぶりでしたでしょうか」
「8ヵ月です」
(もうそんなに立ちますか、思ったよりも長いですね)
「まあ、大丈夫でしょう」
絢と唯が話していると、マッドが二人に向けて二度手をまげて挑発をする、その姿は「早く来い」と言っているようにも見える。
「30秒で終わらせますよ」
その後に「体力が持ちませんし」と付け加えた絢に「それはもう鍛えてください」と返す、絢は剣を両手で持ったまま、切っ先を後ろに向けてマッドに向けて走り出す、絢とマッドの間は凡そ5歩、1歩目から最高速まで加速した絢は一秒とたたずにその5歩を通過しマッドの間合いに入ると同時に、マッドを自分の間合いにも入れる。
その一瞬前、自身の間合いを把握し絢の動きにタイミングを合わせ右上から振り下ろした剣は、絢に当たることなく空を切る。
ほんの一瞬の焦りを見逃すはずがなく、マッドにその剣を振りぬく……がその剣はマッドに当たることなく剣の柄で受け止められた。
「俺の動きに合わせて最後の一歩を後ろに飛ぶって、どういう反射神経してんだッ」
(あの剣は帰ってこないと思ったのですが……、急に身体能力が上がったような動きですね)
「手加減するつもりだったのになぁ、身体強化使っちまったじゃねぇか……とわ言え、まだまだローギアだぜ」
一閃を防がれたことにより後方へ退いた絢に対し、マッドは自信満々と言った風にそんなことを言う。
「慢心とはずいぶん余裕ですね」
絢は地面に散らばる砂や小石をマッドの顔に向けて蹴り上げる。
(これで視界を潰してくれれば楽なんですが……、つぶれなくても注意は向けられるのでいいのですが)
絢の狙い通り、その砂によって視界を失ったマッドは一瞬怯み半歩後ろに下がるが、絢がその隙を見逃すはずもなく一瞬にして距離を詰める、それでもさすが騎士総括長と言う高い地位を持つだけのことはあり、音や足から伝わる振動で絢の動きを把握し一直線にその剣を振り下ろす……
その剣には、受け流した感覚も、ましてや受け止めた感覚もなく、絢は剣に自身の一切を触れさせることなく体をその左側に移動させそのまま回転し、マッドの首筋文字通り皮一枚の距離でその剣を止める。
「私の勝ちです」
その顔はにっこりと笑ってこそいるものの、その目は達成感やそういったものを何も表していなかった。
「あー俺の負けだ、負け
それにしてもそこの嬢ちゃんは全く手を出してこなかったがよかったのか?」
「唯ならマッドさんの初撃を跳ね上げてそのまま終わりでしたよ、私よりも筋力は上ですから」
マッドは負けたにもかかわらずどこかすがすがしそうだ、その光景にいつの間にかその場にいたジムラドが感想を言う、その後ろにはどこか疲れたような、翔奈絵達3人と。
「小僧が負けおったわ」
まるで小ばかにするような言い方に、マッドは荒々しく返事を返す。
「よう爺、そっちは終わったのか?」
「儂の方は今は十分じゃ、ここからはお主が体の使い方を教えてやれ」
そしてここから二人に教えを乞う生徒を交代し、互いにまた離れていく、ジムラドの後についていった絢達はジムラドに一つ質問される。
「そういえばじゃが、簡単でも魔法は使えるかのぉ」
その質問に絢は……
「いいえ、全く」
と笑顔で嘘をついたのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何故でしょう、執筆は進むのに全然一話が完成しません。
一体どうしてしまったというのでしょうか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます