第13話 古きをしる者

「ちょ、ちょちょちょ!何をしているんだ!?」

「え?何って兵士達を振り切って館に入ったのですが?」

「もっと隠密行動をしろーーー!!」

 確かに振り切れとは言ったが、それにしても足音や兵士やらの騒音を引き連れて屋敷の庭にまで入るものだろうか?

「兵士達が諦めないんで仕方なくですよ」

「振り切るってのは諦めるまで走るもんだろ」

「え?振り切るって走り抜けるって事じゃないんですか?」

「微妙に違ーーーう!!」

 確かに昨日から言葉について疑問に思う事は所々あった。だがそれよりも道具や体力を気にして行動させてしまったが、こんなことなら簡単な知力テストを行っていた方が良かったかもしれない。

「仕方ない。鉤縄を二つ使うことになるが、ロープを結べば木と柱につけれるはず……結ぶからなげてくれないか?」

「かまいませんが……効果はあるんですか?」

「少ない人数だろうが、必ず転んだり止まったりする人が出てくる。そしたら反応出来なかった後ろとぶつかり転ぶと何人ものが止まる事になるからいいんだ。ほら、結び終わったぞ」

「ではこれをあそこに!」

 渡した鉤縄を見ずに触った感覚だけで端を探すと、急ブレーキを掛けつつ後ろに回転すると、指定した二ヶ所に見事にひっかかる。柱は高い位置で固定することが出来なかったが、木にひっかかってくれたおかげで、垂れながらも斜めに仕掛けることが出来た。

「うお!」

 兵士達は意表をつかれたようで、しっかりとボクの推測通りに倒れてくれた。

「よし!中に入るぞ!」

「了解しました!」

 そういうやいなや、しずかさんは一飛びで扉を壊して建物の中に入った。

「隠密行動って忘れたのか!」

 中に居たのは兵士達ではなかったが、二十、三十くらいの綺麗な女性達で、皆怯えていた。

「今更ですよ。こんなに騒いだら」

「そうね……今更よ。こんな事になってしまったら」

 わざと鳴らしているかのような足音が奥の襖から聞こえてくる。しずかさんもそれに気がついたようで、後退りをしている。足音が止まったと同時にその襖は大きな音をたて、開いた。

「旦那様はもうこの建物には居ませんわ。けれども私があなたがたを討ち取って見せましょう」

「さち、さん?」

 怯える女性達の中の一人がそう彼女に訪ねるが、その女性に見向きもせずにこちらを凝視してくる。

「……あははーしずかさん。私達捕まっちゃうらしいですよ?」

「え?ミキさん!?急にキャラ捨ててどうしたんですか!?」

「私まだ外でいろんな事をしてみたかったんですよ。遊んだり、実験したり、真相を暴いたり。だから……」

 ボクはそう話をして気を引きつつ、秘密兵器をとりだす。

「こんな所で終わらない。終わるくらいならとっておきを見せてやる!」

 秘密兵器を、爆弾を思いっきり振りかぶる。

「離れろ!」

「チッ、やるね」

「あれって火がないと起動しないんじゃ……」

 急な事で反応出来ないのはわかるが、タネまで言い出すしずかさんを後ろに引っ張り、爆弾から離れさせる。

 だがあの中にはボクが見つけた、いや持ち込んだとある石を入れておいた。あっちの世界では見つけられない物。だけどボクはそれを使い様々な発明をしている。勿論爆弾を作る時にも使ったが、誰にも使っているところを見つかっていないだろう。いや、春斗はその存在自体は知っているからいいが、彼も本当の能力については気がついていないようだからね……

「出現!」

 大きな声でそう発言すると、それに答えるように投げた爆弾が爆発する。

「ふふふ、ふふふ。やはり、やはり近い匂いがしてここに来たんだ。久しぶりに楽しませてくれ。あいつの代わりになってくれ。英雄の一人。結月と同じ英雄さんよ!」

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新魔法使いに慣れなかった者 ダミー @dummy0831

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