第10話 前夜
「今何時?」
『十六時になります』
仕事をさせてから数時間。職人達はお昼もあまりとらずに働いていた。全くもってどうしてここまでやるのか不思議だ。
「君達は毎日何時に寝るんだ?」
そう職人達に聞いたのだが、しずかさんは首を傾けていた。
「何時ってのはなんでしょうか?」
「俺達は仕事が一通り済んで、こいつらを冷ます段階で休む。それ以外の時は絶対休まねえ。こいつらがダメになっちまうからな」
「明確な時間がない、というか時間という概念が無いからちゃんと周りを見ないといけないってことか」
この村には時間がない。つまりこの宝石を作ったのは本当に元日本人なのだろうか?
「それなら次休めるときに休んでくれ。明日は朝が早いからな」
「「わかりました」」
ボクはリビングに顔を出すと、らっかんちゃんは床に寝ていて、春斗も眠そうに机を眺めていた。
「おねむの時間か?」
「あ、先輩。食べ物や飲み物は揃いましたが子守りだけでは結構暇な時間が多くて……」
「なんだ?仕事が欲しかったのか?」
「いいやそういうことじゃないんですけど!なんか暇ってのはつまらないものなんだな、と」
「……人って生き物はどうやら時間だけを持っていてもつまらないらしい。だが、そんな時間を経験するのも人ってやつじゃないのか?」
「先輩……カッコつけてるようですが言ってる意味がわかりません」
「……考えるな、感じろ」
きっと今ボクの顔には汗をかきまくっていることだろう。
「それはそうとなんでこの件のことひきうけたんですか?」
「それはずっとここに居ても限界が来るだろう?なら結局どうにか行動をしないと……」
「それだけですか?」
春斗が鋭い目で見てくる。
「……確かに他にも理由がある。けど、それは少しでも上に権力を持ってた方が、色々な実験が出来たり素材をくれるかもしれないだろ?」
「まあそうですが……なんかがめついですね」
「うるさいなあ。こんな環境下だと何も出来ないんだから仕方ないだろう。それにここは魔法が使える世界だ。あっちのものが通用しないかもしれないだろう?」
「まあそうですね」
「別にそれだけだ。明日も大変な日になるだろうから、夜更かしはするなよ」
「わかりましたー」
そういうとボクは台所から物を盗ると、物置に向かった。
「よーし、久しぶりの工作だ」
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