第5話 眠れぬ夜

 ボクは昼間に移動させた自分の机と向き合っていた。そこでボクは指にはめてある指輪をいじっていた。小窓から光が差しているので、真っ暗という訳ではないが、少し暗い。けれども宝石の輝きによって机の上くらいは明るくなっている。

 この指輪はスマートフォンのような機能がいくつも見受けられた。時計、地図、メモ等々。付いている機能であればそれを応用した利用、例えば地図とメモを利用して生物の生息地域を記憶し、図鑑のような形で記憶してくれたりするらしいが、まだ試したことはないが。それにいまはどうやら容量がないらしく、メモ機能全体は使えない。容量を増やすにはそういう改造かメモを消してください、とこいつに言われたが、仕組みもわからないのに中を見ようとすると壊れるのは当然。メモを消してみたいが、指輪を付けてる人、即ち同じ人でないと消すことも見ることも出来ない。というかまだこれは他の人の物だ。壊すわけにもいかないだろう。完全に手詰まってしまった。

「わからないな、何もかも」

 ため息をつきながらボクは小窓に近付く。月は小さく浮いているが、こちらの世界でも存在感は強い。

「いま何時?」

『十時になります』

「ってことはこっちは東側で、いまは春から夏に、もしくは夏から秋くらいか。あっちと同じならば、な」

 ため息を一回つくと、すぐに窓から離れる。

 こんな時には熱々の珈琲でも飲みたいが、生憎とそんなものはないし、そんな事をしている暇もない。早く出来ることをしなくちゃいけないんだから。

 ボクは元々ショートスリーパーだ。学校に居た時も一日三時間寝れば十分だった。そのおかげも相まって知識を増やし、何個もの発明をしてきた。公開したことはなかったが。

 ここからは後日談だが、新入部員なんかが来た時は、いや春斗が来たことは驚いた。先も行ったように公開されてないのだ。学校に居る生徒でさえこの部活のことは何も知らない。もしくは存在すら知りえてないのかもしれない。そんななか彼は新入生でこの部活を発見し、すぐに届け出を出したらしい。ボクもこの時は断ろうとしたが、上がそれを許さないのと、もしかしたら予算が増えるかもしれない、と言われて承諾してしまったな。

 確認は終わったが、動かせないとないとなると面倒だな。春斗が居ないなら小さいものを仕分けすれば良かった。

「そういえば細長い箱が二個あったな」

 立て掛けてある木箱を見つけて近寄ると、他とは違い扉となっていて、丁度開ける所がこちらに向いていた。

「……まさかな」

 ボクはそれを開けると驚愕してしまった。それは血痕のようなものが付いている、錆びた剣であった。扇いで匂いを嗅いでみると、鉄臭くて本当に血なのかわからなかったが、血のようなものが付いている。

「これを春斗に持たせれば今よりかは安全になるかと思ったが……」

 さすがにこんなものを見せるわけにもいかないだろう。それに初心者の上に筋力が無いんじゃあ使いこなせる訳がないしな。どっちにしろ無理だが、密かにこれらを落としておいた方がいいだろう。

 そっと扉を閉めて、もう一つの細長い箱を開ける。

「これもまた……」

 こっちに入っていたのは、いかにも魔法使いが使ってそうな木の杖だった。

「こんなのが入っていてもな」

 今度は怪しいところもないし、すぐに閉まった。

「ボクも早く休むか」

 そう言って春斗の所に向かうと、一つ大事なことを思い出した。

「む、このままではボクが襲いに行く形になってしまうじゃないか」

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