第4話 異世界のアイテム

 建物の捜索は数分で済んだ。小さい木材だけの建物で探索する所が少ないからだ。

 一番大きい部屋は最初にゲートが繋がった部屋だった。その部屋は小さい窓一つに扉一つだけ。そしてそこに繋がっているのは台所。

 だが江戸時代のような台所で、土間となっており、土粘土で作ったであろう二つの釜戸と流しと水がめが置いてある。

 上履きを履いているから土間に降りるのは問題ないが、もしも戦うなんてことかあるからば靴を手に入れておいた方がいいだろう。

 一つ部屋に繋がる扉と、まだ開けてはいないが玄関と勝手口の二つだと予想している扉があった。扉自体にそういう目印があるわけではないが、窓から建物の外壁が見えなかったのと、土間なのを合わせるときっとそうだろう。

 で、いま居る場所は台所からしか行けない場所。その扉を空けるとそこも土間であったが、他とは違い埃被っているものばかりであった。

「うわ、この部屋だけ埃凄いですね」

「ふむ、この部屋だけ埃がのか」

 春斗は考えてるボクを置いて部屋に入っていく。

「なんか木箱ばっかですが、腐ってる匂いがする木箱や、細長い木箱とか様々な木箱かありますよ」

「……春斗。奥の方に隙間があったりするか?」

「隙間ですか?そんなに無いと思いますが」

「今すぐ全部出してみるぞ」

「え?なんでですか?」

「さっきも言ったが埃は生物が居ないと出てこない。つまり人が居るか虫が大量に居る可能性が高い」

「は、早く出しましょう!」

 春斗は血相を変えて荷物を運び始めた。

 ボクは非力だから運んでいないが、一つの結論を導きだした後、木箱を明け始めた。

 一つの結論とは、この部屋に人は潜んでいないということだ。土間ということは足跡が付きやすいが、春斗以外の足跡は見えない。屋根に逃げ込んでる可能性も考えているが、梯子のようなものがない、ということは、荷物を登って上がらないと届かないであろう。だが、荷物に足跡はないし、上の面がゆがんでいたりもしない。荷物の下にも何かあるようには見れない。木箱の中に入っている可能性もあるが、春斗が持てる木箱には確実に人は入っていないだろうから、本当に人はいないだろう。木箱の中に骸骨が入ったいる可能性はあるが。ついでに言っておけば台所にもないから確定だろう。

「先輩、中にあった物全部出しましたよー」

「ん、ありがとう」

 ボクはまた木箱を開けながら返事をする。

「僕いまから天井みてきましょうか?そこら辺の木箱を使えば上がれるでしょうし」

「いや、その必要はない。それにそこら辺の物は壊れる可能性があるからやめといた方がいい。というか早くこっちを手伝ってくれ。大きいものから仕分けしたいんだ」

「え?まだ居る可能性があるんじゃないですか?」

「そんなの物を運び出してもらう為の嘘だ」

「なっ、嘘つかないでくださいよ。びくびくしながら運んでたんですからー」

 文句をいいながらも春斗は木箱を開けて仕分けしてくれる。

「あ、これ果物ですけど腐ってますね」

「そういうのはそのまま玄関に置いておいてくれ。あとこれとこれとこれとこれも運んどいてくれ」

「全部じゃないですか」

「持てないんだから仕方ないだろう」

 春斗は渋々木箱を持ち上げて運んでいってくれる。

 いまのところ、大きい木箱には腐っている木の実しか入っていない。なのにも関わらず虫はいない。

「あれ?これは空か」

「あーたまに軽いのや重いのもあったのでもしかしたら果物以外も入ってるかもですね」

「ふーん、空箱か」

 なんで空箱なんてあるのだろうか?もう運んでしまったからどこにあったかわからないが、もしかしたら意味が……

「む、足音が聞こえる。音をたてるな」

 聞こえた方向は丁度春斗が荷物を置いている方の扉の奥からだった。突然静止することになったからボクも春斗もきつい体制となっている。

 聞こえたときはゆっくりと土を踏む音であったが、数秒の沈黙の後、焦ったのか、足音は速く何ともなって遠ざかっていった。

「まだ近くに居るかもしれないから、まだ動くなよ?」

 数分他の音が聞こえてこないか耳を澄ませていたが、何も聞こえなかった。

「そろそろいいだろう」

 そういうと春斗も安堵したようで、その場に座り込んでしまった。

「今のはなんだったんでしょうかね?魔物?それとも人間?」

「多分二足歩行だったと思うが、それだけじゃあ人間だか未知の生物だかの判断は難しいな」

「なんとかしてこちら側からだけ姿が見れたら相手がどんな人なのかわかるんですけどね。ドアスコープをつけるとか」

「生憎と素材が足らないのでね。そろったら作れるかもしれないがな」

 ボクは新しい箱に手を掛け、それを開ける。

「む、なんだこれ?」

 箱のなかには紫色に煌めく指輪が入っていた。

「なにか見つけましたか?」

「ただのアクセサリーだ。前にここにいた人の大切なものか何かもしれないから大切にしまっておくか」

 ボクは指輪をリビングの机の上に置いてこようと立ち上がったが、春斗は興味津々でこちらを見ていた。

「先輩つけてみてくださいよ」

「他人の大切な物かもしれないんだぞ?それを使うなんて恐れ多い。それにボクにはこういうのは似合わない」

「いいじゃないですか。そんなのバレないし壊れるようなものでもないですし、減るもんでもないじゃないですが」

「だがなあ……」

「管理してるだけで使わなかったら物がかわいそうじゃないですか。きっとその指輪も使ってほしいと思ってますよ」

「んーむ、それを言われてしまっては作り手でまある私はつけるしかない……か」

 ボクは押し負けてしまい、渋々右手の薬指はめることにした。

「ほらこれでいいだろう?」

「おおーやっぱり指の輝きが違うというか指輪一つでお金持ちに見えるというか……」

『生命体を感知。生体情報を読み込み中』

 突如そんな機械音が流れ出すと同時に指輪の宝石が発光だした。

「うわ!喋った」

「ふむ、面白いことになったぞ」

『読み込み完了。再起動を行います』

 ピーと公衆電話のような高い音を出しながら宝石の光は失われていく。

「今度は止まった?なんですかね?それ」

「ボクはよくわからないがゲームではよく出てくるらしいじゃないか。魔具ってやつ。それじゃないのか?」

「確かにゲームではそういうのありますが……」

 ピーとまた高い音が鳴り響き、輝き始める。

『おはようございます。保持者が変わりました。もしチュートリアルが聞きたかったらお申し付けください。私は声に反応します』

「チュートリアルを聞かせてくれ」

『わかりました。私は道案内やメモ機能、タイマーなどの機能がついています。道案内では最短距離や安全なルートなどをお伝え出来ますが、一度行った場所しか記憶できませんし、行ったとしても長年行ってないとアップデート出来ませんので、ご注意ください。次にメモ機能ですがいまは容量の関係で使えません。容量の増やしかたとしては……』

 ボクはどんな物でも説明やルールを聞いて覚えようとするが、春斗はどうやらそうではないようで、段々と眠くなってきている。学校が終わってからこっちに来てずっと力仕事をさせてたから無理ないが。

「ちょっとストップしてくれ」

『わかりました。いつでも確認することが出来ますのでその時はお申し付けください』

「春斗、寝るぞ」

 ボクは立ち上がり、春斗の元に近付いて腕を引っ張る。

「んー?あ、先輩。もしかして寝ちゃってましたか?僕」

「ああ、だから寝るぞと言っているんだ。晩飯も風呂も準備出来てなくて申し訳ないが、時間はまだある。いま何時で一日がどれくらいの時間だかわからないが……」

『現在の時刻は18十八時、一日は約二四時となっています』

「……だそうだ。なら変な時間に起きることも無いだろう」

「いや、大丈夫ですよ。まだ整理手伝います」

「……何回言わせるんだ。君が倒れたらおしまいなんだ」

「……わかりましたよ」

 渋々立ち上がってリビングへ向かう春斗に、ボクは白衣を手渡す。

「おやすみ」

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