第2話 異世界移動してしまいました
「で?どうするんですか?」
春斗はボロボロな椅子に腰掛け、ボロボロなテーブルに前屈みになって怒っているのだが、その言葉からはあまり怒りを感じない。
「どうする?そんなの新部室の装飾をだな………」
「いやいやいや、それよりもやることがあるでしょう?それにここが新しい部室なのもおかしいし、そもそもここはどこですか?そして管理者は誰ですか?」
ボクはせっせとその場にあるもので自分の机を作っているが、春斗は動く気もしない。
「どうやら君には事実を受け止める能力とすぐに落ち着く余裕が必要のようだ」
「僕は事実を受け止めてますし、落ち着いてもいますよ!けどなんの情報も準備も無しに異世界に連れてこられて帰る方法がないなんて絶望ですよ!死にますよ!?どうするんですか!?責任とってくださいよー」
「……あえてこことゲートが壊れた話に触れなかったのだが。君には触れない勇気も足らないようだ」
「触れてくださいよ!?一番触れるべき話でしょう!?」
流石にもう話はそらせないか。
「はあ、仕方ないな。全て話すしかないな」
椅子を引き春斗の方へ向けると、静かに白衣をすくって座る。
「まず先に一つ訂正して起きたいが、まだここが異世界だと決めつけるのは早い。確かにこの家を見るだけであっちに無さそうなものをいくつか見受けられる。がまだここが異世界だと確定するものはないだろう?ボクは世界で見つけられてない物質だって見つけたんだから。まだ公開されてないだけの物かもしれない。それに君は外国に行ったことがあるかい?外国に出るだけで普段見ないものを沢山見ることが出来る。だからまだ異世界だと決めつけるのには……」
「……さっき窓からドラゴンが見えて二人で震えたのを忘れたんですか?」
「んー!?」
「……安心させたくて今のような事を言ったんでしょうが、別にいいんですよ、もう。安心なんて出来ないんですから」
「……そうだな。巻き込んでしまったし、本当に真面目な話をしよう」
ボクは胸元に入れてあった手紙を取り出し一度春斗に近付いて渡すと、すぐ椅子に戻る。
「なんですか?これ」
「依頼からの手紙だよ」
「『彼のために異世界を移動する物を作ってください』?この手紙に名前などは書いてありませんが、先輩はこの人の事を知ってるんですか?」
「勿論知っているが、これの意味までははっきりしていない」
「うーん。この文だけでは、彼が異世界に渡りたいという夢がある、そんな気もしますが……」
「……そんな夢を叶える為にバカ真面目に大金かかるかもしれないことをするか?それに異世界に行ったってメリットは少ない。ならその大金をこの世界に使った方が現実的でいい」
「何らかの事情があるんですかね?彼が異世界に行ってしまった、とか」
「ふむ、面白いな。帰ったら調べてみるか」
ボクは椅子を元の方向に変えて、来たときに見つけた紙と鉛筆を使って今の事を書いておく。
「……いやいやいや!結局ここはどこなんですか?本当に異世界なんですか?それにここはなんなんですか?」
「ここは異世界で、ここはもう使われていない家。いや山小屋かもしれないが、どちらにしろ使われていない。そして生活も出来る。食べれる物はもしかしたらあるかもな」
「え?先輩この建物の事調べたんです?」
「埃を見ればわかる。壁のまわりによく貯まっているが、そこら辺には少ないだろう?埃は人や布類がなければあまり出来ない。虫や風の影響でも増えるが微妙足るもんだ。つまりしばらくここには人が住んでいないんだろうが、ものすごく長い期間空けてるわけでもないだろうな」
「へー」
「それにしても君はここの生活は大丈夫かい?」
「大丈夫なんて言葉はこの先言えないと思うんですけど」
「いや、そういう事で言ったんじゃないが……すまん、主語が足りなかったな」
ボクはその言葉を言うのが恥ずかしかったから、だとか好きという感情があるから、なんてものもないのだが、きっとこれを言った後の春斗の表情を見てしまうと笑ってしまうかもしれないから、一旦春斗と逆の方を向いて笑わないようにしないと。もし笑ってしまったら春斗を傷つけてしまうかもしれないから。いや、仕方ない事だとはわかっているのだが……何故か笑ってしまう自信があるのだ。
「しばらくの間ここに二人で止まるんだ。君もそういうお年頃だろうから、理性が飛ぶ可能性もあるだろう?」
「……は!はあ!?僕が夜這いでもするとでも!?」
春斗がおもいっきりテーブルを叩いた音が響き渡る。きっと赤面になりながらテーブルを叩いて立ったんだろう。
「い、いや、そういう事をする男ってイメージがあるわけではないが、お、まえ、がそういうお年頃を思ってだな」
「笑ってんじゃないですよ!!先輩!!僕はそう軽々とそんな事をする男じゃないですよ!?そ、それに……エッチなんて今まで誰とも考えてないですからね!?」
「く、くひっ、エッチって、アハハハハ!や、ヤバ、ツボった、アハハハハ!お腹痛い」
僕はその言葉に耐えられなくなり、足を動かしながら笑い始める。
「そんな笑うことないじゃないですかあー!」
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