新魔法使いに慣れなかった者

ダミー

第1話 始まりのチャイム

「やったぞ春斗!実験に成功したぞ!」

 六限目終わりのチャイムがなり終わって数十秒後、ボクは廊下の反対に居る春斗を見つけ、走って春斗の元に行き背後をとると、背中を押して部室へ無理やり連れていく。春斗の隣に男がいたが、無視して背中を強く押し続ける。春斗は困ったように、そして恥ずかしそうに顔を下げてから自分で歩き出す。

「やめてくださいって、興奮しながら僕に近づくの。恥ずかしいんですって。ちゃんと部活には行くのでその時でいいでしょう?それにまた白衣を着ながら走ってきて。余計目立ってしまいますし、白衣が汚れてしまいますよ?」

「そんなことより!新しい実験に成功したんだ!これによって部活の更なる質のいい活動が出来るぞ!」

「そんなことって……」

 春斗はため息をつきながら階段をリズムよく降りていく。

「先輩の科学力は本当に今の世界をひっくり返す程だと思ってますけど、僕の高校生活に影響を与えないでくださいよ。それに先輩は部室で謹慎ですよね?出てきていいんですか?」

「そんなこと気にするな!ボクが作った発明品を一番最初に見れるんだぞ?八十一億人以上が世界的瞬間の時に生き、その極僅かな人がその発明を見ることが出来る!そんなの生活を捨ててでも仲間と見に行きたいじゃないか!」

「確かに一日二日捨てたら見れるなら今すぐにでも見に行きたくなりますが、一時間も捨てずに僕は見に行けるんですからいいじゃないですか。その発明で先輩が消えるわけでもないんですし、その時に見ましょうよ」

「ふむ、ボクが消える、か。案外間違えじゃない憶測だな」

「え?それはどういうことですか?」

 ボクは春斗を抜かして階段を降りると、階段の隣にある錆びた扉を開ける。

 そここそがボク達、ミキと春斗の部活、科学研究開発同好会の旧部室であり、ボクの家でもある。そこは半地下になっていて、扉を開けて直ぐのところに三段の階段がある。部屋の中はいつもどおりで、手前には色々な研究道具が置いてあり、奥にはボクの食べた物のゴミや布団などが置かれている。がいつもと違う所もある。それは部屋の真ん中に巨体で禍々しいゲートが置いてあることだ。

「見たまえ。これが新しい発明品だ!」

 ボクの身体の特徴とも言えるオレンジ色のボブどころか、着ている白衣やその内側の制服の一部であるリボンやスカートまでもがゲートに向かってゆれている。

「え?先輩、何を作ったんですか?」

「これはこう使うんだ」

 ボクはゲートとの間を走って詰めると、そのままゲートの中に入る。

「ちょ、先輩!?待ってくださいよ」

 春斗はボクが消えた事に驚いたのか、戸惑いも無しにゲートへ入って来る。

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