第20話:やって来た瑠奈んち家の風呂場。

俺と瑠奈と馬草把うまくさわさんと未瑠奈みるなちゃんとその他、数名の

死人を乗せた電車はあの世に続く最寄りの駅に到着した。


電車を降りて無人駅を出ると一般の駅と同じようなロータリーがあって

未瑠奈みるなちゃんの指示通り、駅の左側に路地の一本道を行くとデカい門の前に

たどりついた。


「この門をくぐった先に東屋があってな・・・その先を行くと三途の川の

渡し場に出るんだ・・・その手前に過去につながる扉があるからな」

「扉の番をしてる鬼がいるけど、そいつとは私が話をつけるから扉が開いたら、

叶多と瑠奈ちゃんふたりだけで過去に行け」


「え?・・・扉の中にやみくもに飛びこんだってどこに出るか分かんない

じゃん」


「瑠奈ちゃんが頭の中で自分がこれから風呂に入るシーンを思い出せばいいから」

「そしたら思った場所に自然に出るようになってるんだよ・・・」


「叶多は瑠奈ちゃんと手をつないで行け・・・繋いだ手は絶対離すなよ、

時空を超えてる時にお互いの手が離れてもし誤ってカオスに落ちたが最後二度と

帰って来れなくなるからな」

「あ、それから、この腕時計を渡しておく」


「なにこれ・・・ 」


「それは刻時計こくどけいってもの」


「過去へ行きっぱなしじゃダメだろう・・・そんなことになったらタイム

パラドックスが起きるんだよ」


「過去の世界には、もう一人のおまえがいるからね」

同次元に同じ人物が存在したらいずれどちらかが消滅することになるんだ」


「瑠奈ちゃんを生き返らせることに成功しようが失敗しようが必ず帰ってこい」

「いいな・・・」

「この時計のゼロの数字に長針と短針が合わせてからリューズを押せ」

「そしたら帰ってこれるから・・・」


「分かった」


扉の場所まで行くと、そこにデーンとデカい扉だけが立っていた。

まじで、どこでもなんちゃらドアみたいだった。

たしかに扉の前に人が立っていて、鳶職人みたいにニッカポッカを履いて

工事用のヘルメットを被ったおっちゃんだった。

およそ鬼には見えないけど・・・。


未瑠奈みるなちゃんはさっそく扉の番をしてる鬼と交渉しはじめた。

最初、鬼はしぶってたみたいだけど未瑠奈みるなちゃんの脅迫だか命令だかに、

しょうがなさそうに鬼は過去への扉を開けてくれた。


「叶多、行け・・・気をつけてな」


「うん、じゃ〜行ってくる・・・瑠奈行こう」


なことで俺と瑠奈は未瑠奈ちゃんと鳶職人のおっちゃんに見送られながら

開かれた扉から手をつないで過去に旅立った。


中は真っ暗でをどこをどう進んでるのかさっぱり分かんねえ。


「瑠奈・・・風呂で亡くなった日のことを思い浮かべろ・・・ 」


「分かった」


しばらく暗闇を彷徨ったかと思うと俺と瑠奈はパッと明るい場所に出した。

ふと気づくとどこかの家の居間にいた。


「ここは?」


「わ〜久しぶり〜・・・私の家だ」


「喜んでる場合じゃないぞ、おまえの父ちゃんと母ちゃんに見つからないよう

ことを穏便に済ませないと・・・」

「大丈夫だよ、この日はお父さんもお母さんも親戚にお呼ばれしてて夜遅く

まで帰って来ないから・・・」


俺たちは生前の瑠奈が風呂に入る前に先に風呂場に言って瑠奈が来るのを

待っていた。

なにも知らない瑠奈は、風呂に入ろうと風呂場にやってきた。

服を脱ごうとしてる瑠奈に俺は声をかけた。


「瑠奈、突然ごめん」


幽霊の瑠奈も実体化して俺の横に来た。

生前の瑠奈は、なんだろって俺の顔を見てそれから俺の横にいる自分の

姿を見た。


「え?私?・・・なになに?・・・どうなってるの?」


瑠奈は両手をクチに当てて、目を丸くした。

そしてその場で気を失った。

倒れていく瑠奈を俺は支えた。

この場で倒れて頭でも打たれて死なれたら元も子もないからな。


「このまま亡くなった時の時間さえ過ぎてくれたら・・・」


時間が過ぎるのってなんて長く感じるんだ。


つづく。


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