第19話:あの世行きの電車でGO。

見ると真っ黒い電車が、こっちに近づいて来るのが見えた。

そして 0番線の前に停車すると、しばらくして自動トビラが開いた。


「お〜レトロな電車だな」


俺は以外とこういうの好きかも。


「さっさと乗るぞ」


未瑠奈みるなちゃんに急かされて俺たちは、これからこの電車に乗ってあの世に向かうんだ。

電車の中は、すでに数人の乗客が乗っていた。


「未瑠奈ちゃん、あの人たちは?」


「みんな死んだ奴らだ」


「げげっ、俺たち死人と一緒に乗ってんのかよ」

「ってことは、なにか?・・瑠奈も亡くなった時この電車に乗ったのか?」


「う〜ん、よく覚えてないかも〜」

「覚えてないって自分のことだろうが・・・」


「私、寝てたかも・・・」


「寝てた?・・・あのな、もっと緊張感持てよ」

「そういやさ、生きてる時からどこででもよく寝てたよなおまえ」


「叶多〜駅弁買ってくればよかったね」


「人の話聞いてんのか?」


「だってお腹空いたんだもん・・・叶多は空いてないの、お腹?」


「そりゃ、空いてるよ」

「俺は生きてるからな・・・だけどおまえ幽霊だろ、なのに普通に腹減るんだな」


「そんなこと今頃気づいたの?」

「ずっと一緒にいて・・・ひどい」

「自分の彼女でしょ・・・か弱い女にもっと気を使いなさいよ」


「悪かったよ・・・」

「でも、幽霊は食ったものどこに入ってってるんだよ」


「いつでもちゃんと実体化して食べてるから、ちゃんと消化してるよ」

「でも実体化が解けたら食べたものが床に落ちるかも・・・」

「まだ失敗したことないけど・・・いつか失敗するかもね、あはは」


「あははでないわ・・・なに、呑気そうに言ってるんだよ」

「もし失敗して食ったものが、そこらへんに落ちたら自分で掃除しろよ」


瑠奈は、掃除するのはおまえだよって言うように叶多を指さした。


「まじか?どこまでも手間がかかる幽霊だな 」

「早く生き返って欲しいわ・・・生きてた時のほうがまだマシだったぞ・・・ 」


「私は、叶多といられるなら人間でも幽霊でもどっちでもいい」


「俺は瑠奈とエッチできないと困るし・・・」


「叶多はそれしか頭にないんだね?」

「じゃ〜私じゃなくてもいいんじゃない?」


「だってさ愛しい彼女がいて相思相愛なのにできないって情けないと思わないか?」

「それにさ幽霊のままならいくら頑張っても実体化維持30分までなんだろ?」


「気合と根性が足りないのかな、私・・・」

「ジムにでも通って、もっと鍛えようかな」


「おまえらバカか・・・そのために瑠奈を生き返らせに行くんだろうがよ」


「おうそうだ、さっき言ったのにもう忘れてた」


「私・・・どっちでもいいです〜」


「どっちでもって・・・俺たちにとって大事なことだろうが・・・」


「ん〜よく分かんない・・・」


「叶多・・・瑠奈はもしかしたら、どんどん記憶を無くして行ってるのかもな」


「え?なんで?・・・なんで、そんなことになるんだよ?」


「死んだものは、前世での思い出を忘れて行くようになってるんだ」

「未練を残さないようにすることと転生した時、生前の記憶が残ってたら

ややこしいだろ?」


「じゃ〜このままだと瑠奈は俺のことも忘れて行くのか?」


「いずれな・・・だから急がないとね」


「窓の外、真っ暗でなにも見えませんね」


瑠奈が呑気にそう言った。


「本当ですね・・・」


今まで借りてきた猫みたいに大人しかった馬草把うまくさわさんが

ぼそっと瑠奈に相槌を打った。

電車は俺たちを乗せて死の国へ走って行った。


とぅ〜び〜こんて乳。

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