第8話 事故物件に引っ越したら女の化け物が現れるので追い出してやった話【8】
どうすることも出来ず、僕は再びZに電話をかけた。すると呼び出し音が鳴る前にZは電話に出た。暇だったのかな?
声を聞いた途端、なぜ御守りにうんこを入れたのか問い詰めたかった。のだが、本気で助けようと考えた上でうんこを入れてくれていたらキツイことも言えない。しかし、うんこを入れるなら入れると伝えてくれたっていいとは思う。まぁでもうんこを入れといたよって言われたら受け取り拒否してしまっていたかもしれない。誰のうんこだ? つか、うんこ以外に何か選択肢はなかったのか? 考えても思い付かないな。ってことは・・・やっぱりうんこで正解なのか。
そんなことを考えていたらうんこが...あ間違えた、Zが何度も『もしもし?』と電話越しに言っていることに気付いた。
『 あっ、ごめん、考え事してた。実はさ─』
この短時間で自分の身に起きた(うんこ以外の)内容を話す。
するとうんこは御守りはどうしたと聞いてきた。あっ、Zだった。こちらからその話に触れづらかったので良いタイミング。僕は変色した御守りを手にとって眺めながら語り始めた。
『 いや、それがさ、ずっと持ってるんだけど・・・これ最初は白かったじゃん? それが今見たら茶色くなってるんだけど。』
それを聞いたうん...Zは、声のトーンが変わった。
『 それはヤバイ。お前今からうち来れるか?』
『 今からうんち?』
『 は? うちだよ俺んち。もう帰ったらダメだ。死ぬぞ? 今日泊まっていいから来いよ。とりあえずそれからどうするか考えよう。わかったな? 絶対に今は部屋に戻るなよ。』
『 ちょっと待て、どういうことだ? 御守りって何が入っていたんだ?』
『 塩だけど。』
『 え? 塩?』
その答えに僕は驚きを隠せなかった。当然といえば当然だ。うんこだと思っていたから。ではなぜそれが茶色く変色していたのか疑問が残るがその異常な事態に、うん...Zが焦りを見せていた。
─ごめんZがうんこにしか見えなくなってきている。
Zが言うには、どうやら僕の同居人は想像以上に物凄い怨念を持った悪霊だということだ。その強い力のあまり御守りを腐らし無効化させた。中身の塩も
『 本当にヤバイから、俺の言う通りして今から来いよ。分かったな?』
この話を聞いて首筋に寒気が走り、全身に鳥肌が立った。もう帰れない・・・帰れるワケがない。
『 わ、分かった。行くよ。』
『 おう、待ってるよ。』
電話を切った瞬間、僕は座席を倒し放心状態に。
ぼーっとしながら横になっていると、色々な考えが頭の中をグルグル回る。これからZの家に行って飲みながら話して嫌なことを忘れようというポジティブなものから、その後はどうするか。呪物化しているかもしれない僕が行ってZに迷惑がかからないか。他にも身に起こった恐怖の記憶などのネガティブなものまで。
なぜだ・・・。
なぜだ・・・。
なぜこんな現象が起こる。なぜ成仏しないで
なぜ・・・なぜ・・・なぜだっ・・・!
・・・おかしくね?
──この瞬間、僕の中の強い不安や恐怖は反転して強い怒りに変わったのだ。
それからすぐに座席を起こし、Zに電話した。
『 もしもし? Z? ごめん、やっぱ行けなくなった。』
『 えっ? どうした、何かあったか?』
『 あぁ、ちょっとな・・・。ところでZ、ひとつ聞きたいんだけど、僕の部屋にいる女の化け物の姿って見えたんだろ? どんな感じ?』
『 は? どんな感じって。』
『 見た目だよ。可愛いとかそうでないとか。あとは歳とか。』
『 あぁ、生前は可愛かったんじゃないかな。歳も俺たちとそんなに変わらなと思うなぁ。普通に生きてたら羨ましい話だよ。笑』
『 そうか、よかった。』
『 おい、よかったって何だよ。何でそんなこと聞くんだ?』
『 悪いねZ、もう心配ない。全てが終わったらまた連絡するからさ、ありがとう。』
『 何言ってんだ? ちょっと、おい─』
ここで僕は電話を切った。
条件は揃った。これから部屋に戻りある作戦を決行することに決めた。それは・・・。
──女の化け物を部屋から追い出してやることだ。
もちろん本気だ。命を掛けることになるが必ず成功させてみせる。そうと決まればアイテムを調達して帰ろう。
必ず叩き出してやるからな!
その後帰宅した。玄関の前に立ち、鍵を開けてドアノブを握り、大きく深呼吸をした後に決戦の扉を開いた。
中へ入るとすぐに鍵を掛け、そこでもう一度深呼吸をし靴を脱いで上がる。
すると早速、歓迎なのか
──これは性癖ではない・・・
防衛本能だ──
さぁ、ここで決着を着けようじゃないか。
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