第7話 黄色いもふもふ

 次の日。

 私は明るくなってきた時に自然と目を覚ました。


「ん〜よく寝た!」

「おはようセリ」

「おはようラビとヴォルフ。早いね」

「たまたま目が覚めただけよ」

「オレはあんま寝てねえしな」


 ヴォルフは昨日からずっと起きていたのかもしれないな。

 もしかしたら私達が危なくないように見ていてくれたのだろうか。私達が襲われたらやばいと言ってくれたからな。

 そうだったら嬉しいけれど……


「疲れてない?」


 体調が気になって私はそう聞いた。

 仮に一日中起きていたのだとしたら体調が悪くなってしまうこともあると思ったのだ。


「別に。お前よりはマシだ」

「そっか。なら良かったよ」


 私はヴォルフの頭を撫でた。

 もふもふを撫でたかったというのもあるのだけれど、ありがとうの気持ちを込めているのだ。


「なんだよセリ」

「んー?撫でたくなっちゃってさ」

「そうかよ」


 ぶっきらぼうなヴォルフの返事を気にせず私は撫でていた。嫌がっている感じはなかったのでもっと撫でていてもいいということだろう。

 すると、視線を感じた。


「えーと、ラビも撫でようか?」

「な、なんでよ⁈」

「撫でて欲しそうだなーって」


 ラビはむすっ、としてから


「お願いするわ」


 と、言った。

 図星だったのが恥ずかしかったのかもしれないな。


「よしよーし、可愛いねえ」


 私は、どんな反応をするのか気になりわしゃわしゃと撫でてみた。


「ちょっと、毛が乱れるからそんなに早く撫でないでよ!」

「えへへ〜ごめんねえ」


 今度はゆっくり撫でる。毛が乱れるからわしゃわしゃはされたくないけれど、撫でてはほしいという感じのラビに頬が緩みそうになりながら。

 しばらくしてから手を離した。


「満足した?」

「えぇ」


 ラビが頷く。


「さて、そこのおチビが満足したってことで、飯食うか?」

「だからチビじゃないわよ!」

「食うか食わねえのかどっちだよ」

「食べるわよ!」


 なんだかこの会話も面白くなってきた。

 喧嘩というより痴話喧嘩みたいなものに見えるからかな。

 あれ?痴話喧嘩でも喧嘩なのか?

 まあどちらでもいいか。


「セリは?」

「食べるよ〜」


 みんなで昨日の余っていた果物を食べた。

 この世界の食べ物も美味しいなあ。

 

「んじゃ、ひよこがいるとこまで行くか」

「うん!昨日からワクワクしっぱなしだよ!」

「ここからどれぐらいかかるのかしら?」

「あー近道すりゃすぐだろ」


 もしかしてだが、またあれをするつもりなのだろうか。

 いや、でも加減してって言ったし大丈夫なはず、だよね?


「じゃあ背中に失礼しまーす」


 私とラビはヴォルフの背につかまった。


「早速行くぞー」

「ぎ、ぎゃああー!」


( 結局こうなるのかー⁈あーー無理ー‼︎)


「おい、着いたぞ」

「んぇ?」


 意識がほぼ飛んでいた私にヴォルフが言う。

 言われて、前を見てみると……


「うわーひよこがいっぱい!すごい!」


 黄色のもふもふが沢山いた。

 黄色ではないのもいたので、さすが異世界だなとも思った。

 だが、私は見慣れている黄色のひよこを一羽持ち上げた。


「もふもふだ〜幸せ……」


 今まで、ちゃんと触ることがなかったからなあ。

 仕事の時もお世話することはなかったし。


「よくすぐに動けるわね……」


 ラビが言う。

 ヴォルフの全力疾走で疲れ切ってしまったのだろう。

 私はこうして動けているけれど。


「もふもふは最強だからね!」

「あっそ」


 呆れたように言われた。

 仕方ないじゃないか。ひよこを見たのは久しぶりなのだから。


『あの、そろそろ離していただいても?』


 ずっとひよこを撫でていた時、そんな声がした。


「ん?ラビかヴォルフ喋った?」


 すると、きょとん、として


「いや?オレはなんにも」

「私も何も言ってないわよ」


 と答えた。

 どちらも喋っていない。それなのに声が聞こえた。

 どういうことだ?


『あの、ここです。あなたの手の上にいます!』


 もしかして……

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