第8話 ひよこって喋るの?
私は手に持っていたもふもふを見てこう言った。
「ひよこ⁈」と。
ラビはビクッとした。
「どうしたのよ?ひよこならさっきからずっと触ってるじゃない」
「い、いやそうじゃなくて……ひよこの声、聞こえる?」
「なにも?ピヨって声しかしてないわよ」
「そ、そう……」
驚いた。とても。
だってまさかひよこまで喋るだなんて思ってなかったから。
嬉しいけれど、そりゃ驚きもする。
『すみません。驚かせてしまって』
「いいのいいの、それとごめんね。ずっと撫でちゃってて」
『いえいえ、触られるのに慣れていなかっただけなので。良かったら他のも触ってください』
そう言われたので、私は周りにいるひよこも沢山撫でた。
撫でられて嬉しいって子もいたし、撫でられるのが嫌って子もいた。
そういう子はすぐに離すようにした。善意で触らせてもらっているのだ。悪いようにしてはいけない。
私はひよこを堪能した。
「ありがとう」
ひよこにお礼を言った。
『いえいえ、こちらこそ久しぶりに安全に過ごせて良かったです』
「どういうこと?」
安全に過ごせた。しかも久しぶりに?
今まではどうだったのだろうか。
『最近は風が強かったり、自分達より大きいものが通るので怖かったのです』
「風、か……」
この柵も何もない場所で過ごすのは大変だろうなあ。
というか、設備が整ってないよね。全体的に。
もっと動物園みたいにすればいいのにな。
(あっ、そうだ!)
この時、私の頭の中に無謀な案が浮かんだ。
「動物園を作ろう!」
私がそう言うと、みんながポカンとした。
「「動物園?」」
声を合わせて言われた。
そうか、みんなは分からないのか。
「んーと、簡単に言うと、動物みんなが安全に過ごせる場所かな」
『そのような場所があるのですか⁈』
「うん。私の元いた世界にはあったんだ。だから、こっちにもそれを作れば安心できるかなって」
正直、自分でも呆れる。
こんな無謀な案を出す自分に。
でも、ひよこの話を聞いて思ったのだ。
不安を取り除いてあげたい、と。
仮にも私は飼育員だったのだから。
こちらの世界では動物と意思疎通ができる。なら、一から作ってみるのもいいじゃないか。世界を救うなんて大層なことはできない。
だが、せめて、私の大好きなもふもふは助けたい。
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