第52話 虐められる夢

 また夢を見ていた。

 僕はまた、あの座席に腰を掛けて。スクリーンに投影される映像を見ている。

 主人公の男の子は、荒い息を立てながら、校舎裏と思われる薄暗い小道を駆けていた。

 誰かが追いかけてくる足音が聞こえる。

『おい、お前、マジできもいんだよ』

 次の瞬間、背後から声。

 肩を掴まれて振り返らされると、そこにいたのは、小学生くらいの男の子だった。頭は坊主。小太りで、ニキビだらけの顔をしている。体操服を着ていたのだが、その胸には「東条」というゼッケンが貼り付けられていた。

 五年二組 東条健斗。

『学校に来るなよ!』

 小学生だった頃の東条健斗は、そう叫ぶと、握りしめた拳を、男の子に叩きつけた。

 ゴツンッ! と嫌な音がして、スクリーンが真っ黒になった。

 再び明るくなったとき、映っていたのは黒いアスファルト。男の子の荒い息が聴こえたかと思うと、映像の中央から赤い血が滴った。

 顔を上げる男の子。

 にやにやと笑った東条が、彼を見下ろしていた。

『バーカ、この貧乏人』

 そう言った東条は、再び拳を振り上げる。

 その様子を見ながら、僕は頬杖を突き、首を傾けた。

「…………」

 この映画って、もしかして…。

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