第23話

 そうだ、思い出したよ。それは、二週間前のことだった。

 僕が受けていた地域企画論の講義で、ある課題が出された。

 二人一組になって、町の観光名所や歴史を調べて、スライドショーにして発表するというものだ。二週間という短い準備期間ながら、成績評価は全体の四〇パーセントと、かなり重要な課題だった。

 これがもし、個人で取り組む課題なら気は楽なのだが、先生は二人一組になるよう僕たちに指示をした。しかも、公平さを保つべく、くじ引きだった。

 そして僕は、同じ学年の綾瀬という女とペアとなった。顔はまだ思い出せない。だけど、いつも友人に囲まれていた。笑い声がうるさかったから、まあそういう系の人間なのだろう。

 発表資料を作らなければならない…。でないと、単位を取ることが出来ない。

 そうは思っていても、綾瀬さんはいつも人に囲まれているから、僕が話しかける余地など無かった。まるで、「雨が降ってたから仕事に遅れました」とでも言うような、しょうもない理由だと思う。でも僕にとって、人に話しかけるということは、竜巻に向かって歩いていくようなものだったのだ。

 そうして、何もできないまま日は過ぎて、発表まで残り一日となっていたわけだ。

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