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 私の場合、中途半端な満員電車で口を大きく開けながら眠れるほどの度胸はないし、気軽にLINEを送信できる相手もいない。同じサークルで同級生の彼氏とは、春休みが始まるまえに別れたばかりだ。


 しかたがないからLINE画面を起動して、昨夜のやりとりを読み返す。


 既読をつけたメッセージは、たったの一件。


 友人のマコからもらった、連絡事項みたいなメッセージだ。


『ねえ、ウミ。ウミの名前の漢字って、三尼海ミアマウミであってたよね?』


 西野麻子ニシノマコは私と同じ二年生だが、年齢的には一個うえ。一浪して大学に入ったからだ。


 同じ学部で同じサークル。入学してすぐに仲良くなった。


 マコの性格はというと、よくも悪くもB型だ。はっきりしていて、さっぱりしている。なんでもかんでもずばずば言うし、行動だって大胆だ(それはA型の私がいつもはらはらしちゃうくらい)。


 顔が小さく背が高く、胸はぺちゃだがモデルみたいにスタイルがいい(ちびの私が横にならぶと彼氏彼女のサイズバランス)。


 髪は長く縦に巻いているスタイルで、小顔に散らばるパーツパーツがいちいち大きい(そしてうるさい)。


 基本的には綺麗系の美人だが、ちょっと淡水魚にも似ていたりする。


 私は飾り気のないマコのメッセージを読み返し、なんだかちょっとおかしくなった。かわいらしい顔文字やスタンプのひとつもなく事務的に話を進める文章が、なんだかすごくマコっぽい。


 マコはたしか、サークルの名簿を作る係りと言っていた。きっとこれは、それに関する連絡だろう。その証拠に私が返事を送ったあと、マコからLINEは返ってきていない。


「ふぁーあ」


 私はスマホで顔を隠し、口を開けないあくびをした。


 涙の先に映っているディスプレイの四つの数字はびくともしない。


 時間なんてつぶれなかった。

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