第9話 占いは最悪の未来を回避するためにあるのです
日も置かず、ノエが同じことを何度も占いうのは今日が初めてのことだ。
「わたしの占いが外れないことは、わたしが一番わかっているのですが」
占いの道具が散乱しているノエの部屋のベッドの横に腰を下ろし、床に並べたカードを捲って確認してしょんぼりと肩を落とした。
「他の占いなら、あるいは」
「ノエ、もういい」
「ですが」
自分の占いが外れるはずがないという自信と、それでも何かの間違いかもしれない、間違いであってほしいという気持ちとがノエの中で鬩ぎ合っている。
物心つく前からずっとノエの傍にいた俺には、星なんて感じるまでもなくノエの必死さが伝わってくる。
普段はマイペースなノエがどうしてこんなにも取り乱しているのか。それは数十分前のこと。ノエは未明からバルコニーに出て日の出占いを行い、俺はそれに付き添っていた。そして占いの結果がでた。
「兄さんになにか『よくないもの』が迫っています」
それがノエの狼狽えている理由である。
「力になれなくて悔しいです」
肩を落とすノエを胸に抱き寄せた。
しかしよくないことか。いつ起こるかも何が起こるのかもわからないが、ノエの占いに出た以上それは確実に起きる。
目を閉じて自分自身の星に集中し、少なくともヒト以外の“なにか”による祟りなどではないことを確認した。
星稔の血筋は古くから続くからか祟られやすいのだと祖母から聞いたことがあるが、祟りでないとすれば人災の可能性が高い。
もしやこの間から感じる視線の正体が関係しているのかもしれない。
いずれにしても。
「気にするな。ノエに落ち度なんてないんだから」
ノエが満足するまでしばらく頭を撫でてやった。
それから何事もなく登校して授業を受け、昼休み、午後の授業、ホームルームと進み、放課後。
いつもの通り第二校舎二階の西端にある空き教室に四人で集まっていた。
「へぇ。それで今日、ノエちゃんは休み時間ごとにお兄様の安否確認に来てたんだ?」
「はい」
「休み時間のノエちゃんの観察時間が今日はなかったの、そういう事情があったんだ」
「はぁ、花恋お前、そんな羨ましいことしてるのかいつも?」
「そーだけど? なんなら体育の着替えのときもー」
「あー、聞きたくない。ノエちゃんの着替えの話、聞きたいけど聞きたくねぇー」
「お兄ちゃん、きっもーい」
「誰だって気になるだろ。ノエちゃんのブラとパンツが何色か!」
「いやほんと、真面目にキモい」
「二人ともちゃんと聞いてください! 兄さんの一大事なんですよ」
「ご、ごめんねノエちゃん。嫌いにならないで」
「悪かったよ。反省」
「まあ殊勝になるのは願ったり叶ったりだが、一大事と決まったわけじゃないぞ。何かが起きることは確定だけどな」
「いやぁ、それにしてもお兄様に『よくないものが迫ってる』ねえ」
「お義兄さんがいうには人間の仕業?」
「なにか、いい方法はないですか? わたしには、起きるということしかわからなくて」
「しょんぼりしてるノエちゃんもんぎゃわ」
「ああ。眼福だが、オレにひとつ考えがある」
「本当ですか?」
「ああ。オレに任せとけ。お兄様とオレの二人で犯人を取り押さえる完璧な策がある」
「二人だけなんて、大丈夫なんですか?」
「ああ。だってオレたちは、最強だから」
「お前それが言いたいだけだろ」
「やはは」
「てかお兄ちゃんさ、どうする気? 相手が誰かもわからないのに」
「ま、それは企業秘密ってことで、デートしようぜ、お兄様?」
「はあ?」
※
恵の提案でノエが俺の運勢を一日ずつ占うことで何かが起きる日を特定し、運が悪いと出た日をデートの日に指定してきた。
そして約束の土曜日。ノエには何もないと思うが花恋がボディガードを名乗り出たので二人で隣町まで出かけさせ、俺は恵との待ち合わせ場所の浜辺に訪れた。
海風は塩味がし、例え足首でさえも浸かれば体温を持って行かれそうな程に冷たかった。俺は防波堤の上で膝を抱えるようにしゃがみ、無人の砂浜と少しばかり荒れ気味の波を眺めて恵を待った。
「よぉお兄様。待ったかい?」
しばらく経ち、軽快な口調が後方から飛んできた。
「ああ。待った」
膝に手を置いて屈伸をしてから恵の方を振り向くと、恵はひょっとこの面をしていた。
「なんだそれ」
「丁度家にあったからな」
そう言っておかめの面を差し出してきた。
ひょっとこは火を守る神。
おかめは福を招く神。
どちらも神楽くらいでしか見かけないものだ。
「どうでもいいが、名前的にはお前がおかめで俺がひょっとこじゃないのかよ」
「お兄様の名前的にはそうだが、けどおかめには厄除けの意味もあるぜ? 今日に限ってはお兄様だろ」
「ま、それもそうか」
思わず納得をして面を付けてしまったが、そもそも何のための面だ。
おかめとひょっとこの意味はその通りだが、別に恵の持ってきた面自体に特別な力があるようには感じない。
「神楽でもして神を降ろす気か? 俺は嫌だぞ。何が降りてくるかわかったもんじゃない」
「なんでなにかは下りてくる前提なんだよお兄様は。普通、見よう見まねで神楽を踊ったって、何も降りて来ねぇっての」
「相変わらず妙なことを言うな恵は。神楽なんだから、何かしら降りるだろ」
「いやなんでだよ」
恵はオーソドックスなツッコミを入れてきたが、恵なりのジョークなのだろうか。
まあ今日の提案は恵だ。
ここは飲み込もう。
「それで、神楽じゃないならなぜこんな面を」
「そんなの決まってるだろ? お兄様を狙う厄とやらをおびき寄せるんだよ、人目の付かないところにな。でも街中でそんな場所は、立ち入り禁止の廃墟ぐらいだ」
「また不法侵入するのか?」
「ま、今日は病院じゃあねーけどな、そこで、これだ」
恵は自分の付けている面を人差し指でトントンと叩いてみせた。
「防犯カメラのないところなら面だけで問題ない。後々不法侵入に対する捜査が入って聞き込みされても他人が覚えているのは面くらいだぜ」
「相変わらず、なにも考えていないようで考えているんだな」
「おいおいお兄様。それは褒めてるのか?」
「お前が判断していいぞ」
「なんだそれ」
恵は喉を鳴らして笑ってから歩き出し、俺も後に続いた。
十五分ほど歩きたどり着いたのは商店街だった場所の一角。外壁の塗装が剥がれて汚い灰色になっている五階建ての古い雑居ビルであり、フロア案内の看板の三階の部分にだけ何か書いてあるが、文字がかすれて読めなくなっている。出入り口の扉はなく、外から伺える中壁も所々ひびが入っていて廊下には砂ぼこりが溜まっている。
「人が出入りしている気配もなければ、管理もされてなさそうだな」
「ああ。通報されない確率の方が高いぜ」
ビルの中に入り恵に促されるまま二階まで行くと、とたんにカビ臭さが鼻を突いた。
「本当にこんなところを進まないといけないのか」
「まま、屋上まで行けば風も抜けるからマシだぜ、たぶんな」
「屋上でもこの臭いが続いてたら飛んでもらうぞ」
「おいおい、お兄様。五階建ての屋上から飛び降りるなんて、オレじゃなきゃ怪我するぜ?」
「そこはお前も捻挫くらいしろよ」
「愛しのノエちゃんが看病してくれるなら考えてもいいかもな」
「ははっ」
「なんだよお兄様。急に笑い出して」
「いや、昔ノエと『お医者さんごっこ』をしたのを思い出してな」
「あ?」
「なにキレてんだ」
「オレだってノエちゃんとお医者さんごっこしてぇんだけど?」
「知るか」
「詳しい話プリーズ」
「ミイラ男になりかけた」
「いやお兄様じゃなくてノエちゃんの方の話を」
「また今度、気が向いたらな」
そうこう言っている間の屋上の扉の前にたどり着いた。
ドアノブを握り、重たく分厚い扉に体重をかけて押すと、黒ずんだコンクリートの床と、向かいの無人雑居ビルと、奥の方の建物と建物の間に海、そして薄い青色の空が窺えた。
屋上の真ん中にまで歩み出て鼻で息をすると異臭は消えており、仄かに潮風の香りがした。
おかめの面を額にずらして振り返り、ドアのストッパーを降ろして開きっぱなしにするひょっとこに問いかけた。
「それで、俺の厄をどうおびき寄せるんだ?」
「それなんだが、お兄様。ちょっとここで待っていてくれ。三十分くらいで戻るから」
「は? どこに行く気だ?」
「スーパー。必要なもの買うの忘れてて」
「はぁ。早くしろよ」
恵は振り返ると軽く手を振りつつ階段を下りて行った。
ふむ、三十分か。
スマホで本でも読もうかと思いポケットに手を入れたとき、廃病院の帰りやこの間の帰り道で感じたのと同じ、刺すような視線を感じた。
ポケットの中のスマホを放して手を出し身構えた。だが、辺りを見回しても何もいない。
周辺の星を感じ取ろうとしたとき喉が圧迫された。手で首を絞められているような感覚がして後ろに仰け反ろうとしたが、靴の底に瞬間接着剤でも塗られたかのように、足が床に張り付いて動かない。
これはおそらく呪縛の類だ。
だが首を絞める力に呪いは感じない。物理的なものだ。
向きは前方。
距離はゼロ。
その場所の星を読み取った。
その星は、表面すべてが薄汚れていて中身も薄っぺらい。
「お、前、見覚えが、ある、ぞ。確か前、ノエにちょっかいをだしていた、男子生徒」
「な、姿が見えてる? くそ、あのエーミィルというオヤジ、だましやがって」
エーミィル、だと?
その男には心当たりがある。
以前ノエの水晶玉を買った店の店主が、そんな名前だったはずだ。
男子生徒は効果がないと勘違いしたのか、何かを投げ捨てた。それはウサギの脚のような見た目のキーホルダーで、離れたとたん、男子生徒の姿が現れた。
注視すると、そのキーホルダーに妙な力が宿っているのが伝わってくる。
「でも関係ない! このまま!」
喉を圧迫する力が増しいよいよ苦しくなって来たとき、道路側から何かが飛来し男子生徒の顔面に直撃した。
男子生徒は俺の首から手を放し、倒れて顔を抑えて蹲った。足元に落ちた飛来物をみると、それはひょっとこのお面だった。
続いて飛んできた方に顔を向けると、道路を挟んだ向こう側のビルの屋上でこちらに向かって助走をつけている恵を発見した。
「なっ」
道路は片側一車線の狭い道路とはいえ、屋上の高さは同じで距離は十メートルはある。
恵は向こう側のビルの淵で踏切り、まるで配管工のおじさんのような一足飛びでこちら側まで跳躍し、男子生徒の身体の上に着地した。
「ぐはあっ」
「お前、買い物に行ったんじゃ、というかどこから現れてんだよ」
「やはは。敵を騙すには味方からっていうだろ、お兄様? 厄の正体は人。ならそれは相当なストーカーであり、お兄様をずっと付け狙っていたということだ。しかもノエちゃんの占いでそれは好意の真逆の感情だとわかっていた。でも危害は今日まで加えようとしなかった。それはなぜか? 厄の正体はお兄様が一人になるタイミグを探っていた、チキン野郎だからだ。だからオレはお兄様を独りにし隣のビルに回っただけだぜ。入り口で撒いておいた海辺の砂が蹴散らされていたしな」
「だからって飛び越えてくる奴が、いや、お前はそういう奴、だったな」
思わずため息をつくと、身体がいつの間にか自由になっていることに気が付いた。
おそらく呪縛もなにかのアイテムの力だったのだろう。
喉を擦っていると蹲っていた男子生徒は鼻血を流した顔を上げて俺たちを睨みつけてきた。その分不相応な態度に腹が立ったので顎をつま先で蹴り上げると男子生徒は転がり、再び体を起こして俺に向かってきたところを恵に抑えられた。
右腕を後ろで固定されて左肩を掴まれ、両ひざを床に付かされている。
「いったい、何の恨みがあって俺を襲った?」
「ふん。アンタらが悪いんだろ」
「横恋ボーイ、答えないならそこから落ちるか?」
恵は肩を引っぱり、恵が跳んで来た方を男子生徒に見せた。
「放せ! やめろ!」
男子生徒は身をよじるが、恵に腕をねじられて大人しくなった。
「それにしても、俺の厄の正体がこんな矮小な存在だったとはな」
「そんなこと言ってもお兄様、さっきやられそうになってたじゃねぇの?」
「バカを言え。お前が来なくてもさっき程度の呪縛、呪詛返しの方法なんていくらでもある」
「ふーん」
「ま、そんなことより説明しろ。なぜ俺を狙った」
目だけを動かして男子生徒を見やると、
「あの日、アンタらへの仕返しだよ!」
そう、吠えた。
ぐきり、と音を立てて男子生徒の右肩が脱臼した。否、恵によって脱臼させられた。
「あっぐ、ああ」
声にならない悲鳴を上げる男子生徒を恵は蹴り転がしてうつ伏せにし、首を足で踏んで押さえつける。
「で、このチキンをどう料理する、お兄様?」
「まあまて恵。そもそも。あの日、俺が何をした」
「な、に?」
「確かにあの日、ノエにちょっかいを出していたお前を追い返そうとした。が、そんなの当然のことだろう? 俺がお前に恨まれるようなことなんてしたか?」
「な! 脅しただろう!」
「脅した? 俺がか?」
「命を懸けろとか言ったろ!」
「ああ、それか。ノエの存在とはそれほどまでに大きく、ノエ以外の全ては矮小だ。そのことを理解していないようだから教えてやっただけだ。お前の命などノエの前では、いや、星稔の前では軽いのだとな。そもそも、俺とお前とじゃあ何があったってお前の逆恨みだ。分を弁えろ、身の程知らずが」
男子生徒は恵の靴の下で藻掻くが、恵が足に力を籠めると、ミシィと人体から、特に首からは鳴るべきではない音が鳴り、男子生徒の顔には恐怖の色が浮かんだ。
「ふざけるなっ! コケにしやがって! 呪ってやる! 呪ってやる!」
男子生徒は呪言を吐き捨てるが、それは一切力のないものだった。
「分を弁えろと言ったばかりだろう? どうせエーミィル・タナンから買った道具がなければ何もできないお前などに、呪いに精通している訳でもないお前などに、星稔(おれ)を呪えるものか。お前、その道具を買うのにどれだけの対価を支払った?」
男子生徒は歯を噛みしめて顔を僅かに逸らした。
「まあいい。恵、そいつの顔を上げろ」
「うん? あいよ」
恵は肩が外れていない方の腕を掴んで背中に固定し、もう一方の腕を首に回した。そして男子生徒の両ふくらはぎの上に自らの脚を乗せて身動きを封じた。
「何をする気だ、お兄様?」
「決まっている。こんなことをしでかしたこいつには、落とし前が必要だ。目には目を。歯には歯を。呪いには呪いを」
「な、にをする気、だ?」
糸切り歯で人差し指を少し切り、血玉が出来たのを確認してから、男子生徒の口の中に指を突っ込んだ。
「んぐっ」
「二度とこんな真似ができないよう、目に物を見せてやる」
俺の血液を男子生徒の唾液に混ぜて摂取させる。
これは千年以上前から星稔に伝わる呪い。
星を感じる奇異な能力を持った俺だけが見つけられた、星稔旧本邸の地下にある隠し扉。その先に記された星稔の本当の力。
「星稔にあらずんば星稔にあらず。星稔を穢す者には万(よろず)の災いを」
唱えるように告げ、口から指を引き抜いた。
「うえっ」
「これでお前にも、星稔の血が僅かだが含まれた。それの意味するところがわかるか?」
男子生徒は苦虫を噛みつぶしたような顔を浮かべるだけで、答えない。
「まあ、わかる筈もないか。教えた方が効果的だろうから教えてやる。星稔本家を狙う魑魅魍魎はごまんといる。それに対応するために、星稔の本家筋は生まれてから十年を本家で暮らすことで相応の守護霊を宿らせる。守護霊自体は誰にでも宿りうるものだが、お前の守護霊は一〇〇〇年以上も星稔を狙う魑魅魍魎にどれだけ抗えるだろうな?」
ポケットからハンカチを取り出して指を拭ってから、続けた。
「これからお前は長い時間をかけて死にたいと思う程の苦しみに襲われる。だがこの呪いはそれを許さない。なにせ星稔を狙うモノは星稔の力を手に入れたいのだ。死なせては手に入らない。恵、もういいぞ。というか巻き込まれたくなければ離れていろ」
「確かに嫌な感じがするぜ」
恵は言いつつ男子生徒から飛び退いた。
とたん、自由になった男子生徒は両手で自身の頭を抱えてのたうち回った。
「ああああああっ! 頭が! 割れる! やめろっ! 入ってくるなァ!」
ゴロン、ゴロンと、右へ左へのたうち回り、やがて自分で頭皮を掻きむしり始めたが、途端に爪が割れて自傷が叶わなくなる。
「嫌だ! 許し、許して! 許してください!」
焦点のあっていない両眼で俺を見据え、頭を床に擦りつけようとするが、全身を襲う痛みに二秒と制止できないようだった。
「あと七、八十年。老衰で死ぬか、それまでに気が狂うか。お前に残された救いはそれくらいだ。いくぞ恵」
ひょっとこのお面を拾って恵に投げ渡しておかめの面を付け直し、階段に向かった。
「お、おう」
悲痛な、言葉にならない叫び声は、一階にまで来ると聞こえなくなったが外に出ると届いた。
「それにしても、こっえーことするなぁ、お兄様」
「今日見たことは誰にも言うな。特にノエには。ノエは星稔の力も、それを狙うモノのことも知らないからな」
「まあ別に言わねーけどなんなんだよ星稔一族って。なんで狙われてんだ、魑魅魍魎に?」
「教えてもいいが、後戻りできないぞ?」
「いや、聞きたくねぇよ」
恵がやははと笑うと同時に、一際大きな悲鳴がビルの屋上から響いた。
「どうでもいいがあの横恋ボーイ、ずっとあのままなのか?」
「いや。三時間もしたらあいつが星稔じゃないことに魑魅魍魎も気が付くだろ。飲ませた血も少量だしな」
「ふーん。相変わらずお兄様はハッタリが得意だぜ」
「命を懸ける覚悟もない程度のやつだ。命を奪うまでもないさ」
「ま、なにが襲ってもオレたちは、地元じゃ負け知らずだしな」
「俺とお前の地元は違うけどな」
「固いこと言うなよ」
やははと笑う恵をスルーしつつ数分歩いて悲鳴も聞こえなくなったころ、ノエの番号専用に登録している着信音が鳴り響いた。
「もしもし兄さん」
「ああ、ノエ。ちょどよかった。こっちはもう片付い」
「助けてください!」
一瞬背筋が凍ったが、続いたノエの言葉に力が抜けた。
「エスカレーターが、エスカレーターが!」
「状況はだいたい理解した。すぐにそっちに行く」
その後、二、三言ノエと話して電話を切り、ノエの元へ向かった。
合流すると、ノエは笑顔を浮かべて銀色の指輪をはめた手を振った。
荒んだ世界の中にいることで、ノエの星はよりいっそう綺麗に見えた。
〈占いは最悪の未来を回避するためにあるのです・終〉
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