スカイダイバー
べっ紅飴
第1話
「10年経ってる。夢なんかとっくに諦めたさ。」
数年ぶりに再会した昔馴染みとカフェテリアで食事を楽しみながら、俺は遠い昔を思い返しながらそう語った。
「それに、エイミーとてそんな昔の約束忘れてるだろ」
「そうかな?俺はそうは思わないぜ」
目の前の男、グレンは不敵に笑って見せた。
「なんせアイツは生粋の冒険家だからな。あれは死んでも治りはせんよ。いつだってでかい夢を語っては笑われて、かまいもせずに何度も夢を語る。そんでもって、笑ったやつらはみんなアイツと旅に出ちまった。きっと、馬鹿が移ったんだろうな。今どこで何をしてるのか知らんが、アイツはお前を待ってると、俺はそう思うぜ。」
お前はどうだ?とグレンは挑発するような目で俺を見た。発破をかけているつもりだろうが、いつまでも世話を焼いてくる近所のおばちゃんのような鬱陶しさを感じて、軽くため息が出る。
「ならなんで迎えに来ない。」
思わず、そんな愚痴が口からこぼれ出た。
「そりゃアレだ。10年経ってるからな。意地張ってるお前と同じで今更連れ戻しになんてこれないんだろうさ。」
口の中に飯をほおばりながら、グレンは調子のいいことを言った。
「行儀が悪いぞ。」
「そういうお前は女々しいな。」
「なんだと。」
「なんだよ?」
俺はしかめっ面をしてグレンを睨みつけるが、俺は久しぶりのやり取りの可笑しさと懐かしさを感じて、10秒と経たず吹き出してしまった。
「ハハ、なんだか懐かしいな。昔はこうやってよく口げんかしたよな。」
「ああ、最後には俺たち2人がエイミーにげんこつ喰らわされて無理やり仲直りさせられたりな。まったく、懐かしすぎて嫌になるな!」
グレンもまた、笑っていた。
「そういえば、グレン。お前なんで帰ってきたんだよ?」
聞き出そうと思って、なかなかそうできなかったが、今なら聞き出せそうだと、俺は再開してから胸の内に潜ませていた言葉をグレンに投げかけた。
「あ?おお、そうだ、言ってなかったな。忘れてたぜ。」
グレンはそう言うと、ポケット中から少しクシャクシャになった手紙封筒を取り出した。
「お前宛だ。」
グレンが俺に封筒を差し出した。
「言っておくが、エイミーじゃねえぞ。」
からかい交じりの視線を混ぜてグレンは言った。
それを聞いて俺は少しだけがっかりしながら手紙封筒を受け取った。
裏返して差出人を確認すると、サクヤと言う見知らぬ名前が書かれていた。
「サクヤ?知らない名だな」
「そりゃ無理もねえな。俺も偶々会って知ったんだが...」
もったい漬けるようにグレンは言い淀んだ。
「どういうわけか、お前の母親の名前らしい。」
「は?」
スカイダイバー べっ紅飴 @nyaru_hotepu
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