ブレス

 竜の本懐。その真価。

 それは圧倒的な威力を誇るブレスだ。


「……っ!!!」


 竜というあまりにも強大すぎる巨体に保有されている魔力の量と質はどれもが一級品……それらを自身の口元に集めて放出されるそれはあまりにも強すぎる一発だった。

 竜のブレスは山を消し、国一つ丸ごと飲み干す。

 そう言い伝えられている存在だ。


「はやっ!」


 だが、その竜のブレスは発動までの準備期間が長いというデメリットを抱えている。

 その間に何とか竜がブレスを吐くのを止めるのがセオリーなのだがっ……!


「ちぃっ!」


 竜のブレスの準備期間は一瞬で終わった。

 瞬きの間に竜の口元に魔力が充填され、ブレスが吐ける態勢に入る。

 空間全体を震わせるような咆哮から一瞬の出来事であり、自分以外の三人はこの事態にまるで追いつけていない。

 魔法によって自分の脳を強化するという荒業を行っている僕だからこそ、何とか反応出来ているだけなのである。


「……っ」


 悩んでいる暇はない。

 僕はすぐさま行動を開始。

 全速力でまずはニーナを確保する。


「えっ……?」


 その後、すぐさま後方にいる王女様とガリアの元にまで下がっていく。


「我らを守り給え!」


 そして、僕は自分の手の中にあったアイテムを迷うことなく使用する。

 ゲーム知識より回収していたアイテム。

 込められた魔力を余すことなく吸収し、アイテムの破壊と同時にそれまでの魔力全てを発揮して結界を発動させるそれを僕は迷うことなく使用すると共に、自前の結界も張り巡らせる。


「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 その瞬間。

 竜の口より大きなブレスが放たれる。

 

「ぐっ」


 圧倒的だった。

 竜のブレスの勢いは。


「……ざっけんな」


 全部が吹き飛んでいった。

 僕が自分で張った結界も、アイテムによる結界も、竜を閉じ込めるために作った結界も。

 その悉くが飛んで行った。


「……ぶっねぇ」


 だが、何とか滑り込みでガリアの方も合わせて魔法を使ってくれていたおかげで何とか竜のブレスを耐えきることが出来た。

 ただ、その代わりとして。


「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 竜を閉じ込めていた僕の結界も吹き飛ばされたせいで、天空の覇者たる竜が再度、空に向かって羽ばたいていく。


「最悪じゃねぇの?これ……あと、もう二度も受けられないぞ、ブレスは」


 そんな現状に対するガリアの評価。

 ピンチという評価。


「……そうかもね」


 それに対して、僕も少しばかり同意してみせるのだった。

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