悪役貴族に転生した僕は破滅フラグから逃れるために貴族家から追放されるように仕組んでその後に冒険者となったらヤンデレと化した妹が追いかけてきた件

リヒト

追放された悪役貴族

追放

「カエサル・アイランク……いや、カエサル。お前を我らアイランク侯爵家から追放する」


 少しばかりパーマのかかった白い髪に赤と青のオッドアイというずいぶんと目立つ髪と目を持ち、そして、目立つそれらを受けてほぼ反射的に視線を向けてしまう道行く人々を容易に魅了する完璧なアマイマスクを持った少年。

 そんな自他認める美男子である僕、カエサル・アイランクことカエサルがそう宣言を受けたのは己の14歳の誕生日会が行われている最中であった。

 誕生日会の途中でいきなり僕を呼びつけてきた父、アイランク侯爵家の当主であるカマセは言葉と共に一枚の書類を押し付けてくる。

 その書類には僕を一族から追放されたことを王家より認められたことが書かれていた。


「そうですか」


 あまりにも突然すぎる通告。

 侯爵家の家系の嫡男として生まれ、そのまま当主になる者として数多くの教育を受けていた中で告げられた家からの追放宣言。

 それを受ける僕は今。


「謹んでお受けいたします」


 ひゃっほぉー!とうとう来たぜっ!追放される時がよぉっ!

 内心で大喜びしていた。


「……むっ?そ、それだけか?」


「えぇ、それだけにございます」


 それ以外にあるかよ、クソおやじぃっ!

 おめぇは僕が狼狽している様が見たかったのかもしれねぇーが、それがうまく行くと思うなよぉ!

 表では冷静な態度を保ちながら、僕は内心で自分の父親へと暴言を吐き連ねる。


「何か問題ありますか?」


 まぁ、とはいえ僕ももう大人だ。

 今世では未だ14歳だが、16歳まで生きた前世の記憶が自分の中にある。

 精神年齢で言えば30歳である。

 しっかりと大人だ……受け入れてやろう。怒らずね?


「驚きとか、はないと?」


「いえ、驚いていないわけじゃないですよ?」


 驚くわけねぇだろ、ボケェ!こちとらすべて想定済みじゃい!

 僕は前世において、ここらの話の全てを知り尽くし、そもそもこうなるように自分から誘導していたのだ。

 驚くはずない。


「それでは、追放されたということなので自分はこれで失礼します」


 今日、この日に追放されることまで全て想定通りである。

 既に出立の準備はしてある。


「もう二度と会うことはないでしょうが……お元気で」


 僕は華麗にこの場で一礼し、そのまま意気揚々と自分のパーティー会場から退出するのだった。


 ■■■■■


「……えっ?お兄様を追放なされたんですか?父上」


「あぁ、そうだ。あの愚図など、追いだして当然であろう!……ちっ、最後、気丈に振る舞いおって、せめてもの恩返しでこの我に無様な姿を見せればいいものを」


「そうですか、……なるほど。そうですか。それでは私はこの辺で失礼いたします」


「むっ?何処に行くのだ?何処に?おーい」



「ふふふ、お兄様。ようやく二人きりになれますね」

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