第9話 エルフぬるぬる大作戦

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ダンジョン3丁目、配信中です。


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『きゃあああ!?』


 配信用水晶から出てくる女性の悲鳴に、酒場内の冒険者達は一斉に振り向いた。

 近くに居た者はもちろん、その辺りで暇をしていた者達も「なんだなんだ」と水晶の近くまで寄って来た。


『ちょっ、そこはぁ、ダメぇ……』


「おお……」


 水晶には褐色肌のエルフの女性が映し出されていた。

 革製のボンテージファッションだが露出はそこそこ――その服が、スライムの粘液によってみるみる溶かされていく。


 それだけではない。


 触手モンスターによって身動きが取れないよう四肢を固定され、絶妙に全裸にならないよう身体に巻き付いていた。

 ワキ、胸、太ももに巻き付く触手はゆっくりと動き回る。


『そこはダメだって……ひゃんっ』


 それが粘液と合わさり、それもうニュルニュルと動き――その度にエルフは艶のある声を上げる。


「なんか良く分かんないけどいいぞー!」

「どこだこれ。3丁目か!」

「下から見たら見えないかな」


 冒険者(ほぼ男)は次第に集まり始め、どんどん歓声もヒートアップする。

 

 水晶に向けられる興味の度合いなどが“投げ魔力ポイント”となり、その度合いが高ければ高いほど、対象に対してのポイントとなる。


 もちろん、こういった行為は商会でも禁止行為なので――。



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 この配信アカウントは緊急停止しました。


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 即停止処分となる。


「あぁ……」

「もうちょっと見せろよな!」

「いくらだ、いくら払えばいいんだ!?」


 そんな冒険者の嘆きの声に答えるように、映像の方もすぐに復活する。


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ダンジョン3丁目、配信中です。


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『ちょっと、胸ばっか攻めるのはっ、ダメだってぇ……』


「「「おおおぉぉぉぉッ!!!」」」


 こんな感じでエルフのぬるぬる触手プレイ生配信は、本日の配信ランキングぶっちぎりの1位を更新――。


 酒場内のボルテージは、最高潮に達しようとしていた。


 そして3丁目では――。


 ◇ ◇ ◇


「もっといやらしく! そして肝心な部分は見せない。これぞ王道!」

「スケサンよ……一応アタイだって女なんだけど。メスのエルフ相手じゃ全然盛り上がらないよ……」

「ヌル子、そこをなんとか頼む! 今度、イケメン冒険者来たらすぐ連絡してやっから!」


 触手モンスターのローパー(ヌル子・♀)は、嫌々ながらも協力はしてくれているようだ。

 これも全てはボスを救う――その為に、ダンジョン内のモンスター達は一致団結していた。


「しょうがないねぇ」

「ってスケサン! アンタ後で覚えてもごご――」

「よーし、触手を口に突っ込んで出し入れだ! そうだ! 人間共のリピドーを刺激しろ!」

「先輩楽しそうっすね」


『こちら3丁目モニタールーム! 魔力ポイントは順調に送らて来ている――100,200,300! 見た事ない数字だ!』


「よーし、それじゃーボスに一括送信だ!」


『了解! 内臓魔力、開放リリース――送信先、ボス!』


 壁に備え付けられた水晶にこちらへ向かってくるボスの様子が映し出されている。

 そこへ、ダンジョンの通路や壁、天井のあらゆる場所から目に見えるほどの魔力が一斉放出された。

 

『ぐ、ぐおおおおお!?』


 苦しむようにうずくまる、黒髪の冒険者の格好をしたボス。

 徐々に身体にまとっている聖なるオーラが弱まっていく――。 


「よっしゃッ!」

「おぉ、これはいけるっすか!?」


『ぐぅぅぅッ! ザコ、モンスターどもめ……がああああっ!!!』


 弱まったと思ったオーラが再び輝きを取り戻す。


「あぁ……」


 ボス部屋のモンスター達は落胆の声を漏らすも……。

 

「いや、でもさっきよりオーラ弱くなってるっすよ!」


 スラミンの言う通り、その輝きは先ほどよりも確かに衰えていた。


「よーし。次の作戦は――」


 リザードマンが挙手をする。


「丸飲みプレイ!」

「絵的に映えないからボツ!」


 イービルアイが触手を上げる。


「ちょっとずつ石化していく恐怖を実況プレイ!」

「冒険者共がドン引きするじゃねーか!」


 ゴブリン達がみんなで手を挙げた。


「いっそ本番! 本番ダ!」

「実はエルちゃんのこと、前からいいなっテ……」

「エルフとゴブリンって王道ダヨ!」

「この作品は全年齢対象だッ!」

「ちょっと! 全部聞こえているわよ!」


 ドドォォ――――ッ。


「な、なんだこの音は」


『緊急! 緊急! ボス、最後の隔壁を破壊し、この部屋まで一直線です!』


「クソッ。仕方ねぇ。俺達がもう1間を稼ぐから、ヌル子はM字開脚モードでぬるぬるやっててくれ! みんな、後は任せたぞ!」

「おお!」

「ちょっスケサン! あっ、いやッ。そこはおしり――」


 スラミンに乗った状態で部屋から跳ね出すスケサン。


「ってカッコよく飛び出したけど先輩。なんか勝算あるんですか!?」


 今のスケサンは両手足が短くなり、ほぼ1頭身状態だ。

 剣もまともに振るえるような状態ではない。


「もちろんあるぜ。その前にそこの部屋だ」

「宝物庫になんかあるんですか?」


 スケサンの言う勝算とは、ボスの暴走は本当に止められるのか。


 そして、エルの貞操と純潔は大丈夫なのか。


 次回、最終回。


 

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