第2話 時は戦国乱世
澄み切った青空の下
俺の立つ物見櫓からは海を往く大小様々な船を見る事が出来た、しかもその船の多くが木造船で有り帆を張り人力で海を進んでいくのだ。その海を越えた先に大きな島が見る事が出来る。
背後を振り返れば板張りの家屋が立ち並び街道を往く人々の姿が伺える
その街道はやがて市街地を抜け広大な田園へと続きやがて白い残雪を纏った山々を背景とした巨大な山城へと至る
うん文句なしの絶景だ・・・・・・・・
そりゃそうだろう、此処にはコンクリートで造られたビルも街中に張り巡らされた電線もアスファルトで造られた道路も当然そこを走る車も存在していない、ほぼ日本の原風景と言える景色が存在しているのだから。
未だに信じられん光景ではあるな・・・・・
新次郎の部屋で目覚めてから既に1月が過ぎた
あの日俺の名を叫びながら泣きじゃくる母の声を聞きつけて父や兄姉が駆け付けてきたのだが皆心の中で「遂に新次郎が天に召されたか…」と悲痛な覚悟と共にやって来たのだが部屋を覗くと其処には泣きながら我が子を抱きしめて離さない母と
どこか気恥ずかしそうだが割と元気そうな俺がいた。
父などはかなりの覚悟で来ていた様で思わず膝から崩れ落ちた程だった。
今ではすっかりと体調が良くなり先日には
「・・・・もう大丈夫です・・・」
と医者の太鼓判も貰いこうして外に出る事も許されるようになった。
ただ医者を見る両親の眼は冷ややかだった、
まぁ少し前には
「もう手の施しようが無い」
と匙を投げた医者と同人物なのだからしょうがない
まぁ俺の件は特殊だからしょうがないと俺は思ったのだが、冷たい眼を医者に向ける父と母を見て気の毒には思ったものだ。
この1月の間に判った事と言えば現在の俺が目覚めた場所は越後国直江津、現代でいうと新潟県上越市に当たる場所だという事。
この物見櫓から見える海は日本海でその先に見えているのは佐渡島だ。
そして背後に見える巨大な山城はあの軍神として有名な上杉謙信の居城春日山城だった。
しかし父によると現在の城主は上杉謙信ではなく長尾晴景様だと言う、長尾晴景という人物について俺はあまり詳しくは無いが確か謙信の兄だったはずだ病弱で越後一国の主に相応しく無いと家臣や国人衆から突き上げをくらい弟の謙信に国主の座を譲ったはずでその治世はそれ程長くなかったはず。
この話で大分年代を絞る事が出来た謙信が家督を継いだのが1550年ぐらいだったはずだからそれ以前ってことのなる。
後はもう少し絞りたい所だが・・・新次郎の記憶では現在は天文6年という事は判ったのだが俺にはこの天文という年号が西暦何年にあたるのか全く判らない。
そこで仕方なく見舞いに来た父にいくつか時勢の質問をして判ったのが
去年の夏に駿河の今川家で内乱が起き今川義元が勝利した事などが聞けた。
この話で大体の時代が判った、
今川家の内乱はおそらく花倉の乱だ。
花倉の乱とは駿河の今川氏で起きた家督相続を巡る争いだ
その家督争いで勝ち残ったのが今川義元で後に駿河、遠江、三河の3か国を治める大大名になる。
今川家の花倉の乱は1536年だ
その話から推察すると現在はは1537年前後だろう
今年尾張のどこかで豊臣秀吉が生まれているはずで
武田信玄が16歳、上杉謙信が7歳、織田信長が3歳
徳川家康はまだ生まれてもいないだろう。
まさに戦国乱世初頭の下剋上上等の日本史史上最大の大混乱期である。
思わず頭を抱えたものだが・・・・・・・・・・ふと思い至った
何故・・・・・・一度死んだ俺がこの時代にこの場所で再び第二の人生を授けられたのかと?
俺は妻子を失い自棄になって人生を半ば諦めて戦場に行った、そんな俺がだ
ふと思ったのだ俺がここでこの時代で力を付けて日本をより良い方向に導けるならその後の不幸を防げるのでは無いのかと。
3次にわたる悲惨な世界大戦を防げないだろうか?
大勢の日本人が不幸になるのを防げるのでは無いのかと・・・・・・
俺も前世では40過ぎまで生きたいい大人だ
一人の人間に出来る事などたかが知れているのも判ってはいる
だが結果はやってみなければ誰にも判らないし1度は終わった人生だが今生は少なくとも悔い無く生きていきたい。
そう考えると、思考から靄が消えたような感覚を感じた。
迷いが無くなり明確な目標が出来た、今生での生き甲斐を見付ける事ができたのだ。
それならば新たな故郷となったこの直江津という場所は悪くない
現代でこそ鄙びた港町というイメージが強いがこの時代では人口では京の都に次ぎ日本海航路の重要な港として栄えていた。この時代ではまだ太平洋航路はそれ程発達はしていない当時重要とされた七湊も全て日本海側で直江津もその七湊の1つとしてかぞえられている。
先ずは今生での俺の目標は・・・・・・・・・
『日本を他のどの国にも負けない強く豊かな国にする事だ』
それは途轍もなく遠い道程だろうが、、、
先ずはその目標に必要な物は経済力、軍事力、そして教育、文化力と言った所だろうか。その中でも最も最初に取り組むべき事は経済力を高める事だろう。
金が無ければ人間食う事も出来ないし強力な軍を組織維持する事も出来ない。
俺がこの時代に来たのは唯の偶然なのか、神の様な超常なな存在によって誘われたのかは判らない・・・・・がもし誘った者が居たのなら彼等もきっとそう願っているのではないだろうか。
因みにだが佐伯遼佑が死んだであろうビルは今この新次郎の屋敷が暮らしている跡地に建てられた物だった。
それとこの時代で目覚めてから俺には不思議な力が宿ったようだ
別に炎を出せるとか瞬間移動出来るという様な派手な力では無い
少し眼を凝らして人を見るとその人の能力が頭の中で数値化され特性がある程度判るようになった・・・・そうゲームやネット小説で定番のやつだ
例えば父の重久を見ると
名前:蔵田 五郎左衛門重久 男
・統率:47/68
・武力:23/50
・知略:68/75
・政治:55/72
・器用:65/70
・魅力:65
適正:商人
こんな風に父のステ-タスが頭に浮かぶ様になった
うん・・・・まるで学生時代に遊んだ某野望系のゲームみたいだな・・
温厚な父らしく戦闘は苦手らしく、もろ文官タイプのステ-タスだ
ちなみに母だとこうなる
名前:蔵田 幸 女
・統率:52/78
・武力:70/79
・知略:57/73
・政治:35/70
・器用:73/75
・魅力:65
適正:槍
女と言えど流石に武家出身の母だ明らかに戦闘タイプのステ-タスである
父と母が夫婦喧嘩したなら物理的には父はまず勝てないな
最初は俺の頭がおかしくなったのかと思ったんだがな
考えれば非常に便利な力だ
在野から隠れた人材を発掘し武力の高い者を選び抜いて精兵ばかりの軍を結成したり内政の高い者を選び抜き優秀な官僚集団を造り上げたりとこの乱世を生き抜くうえでかなりの助けになるだろう。
どこかの女神様に合って力を授けられた覚えも無いのだが、使える能力は使わせて貰うとしよう。
そうと決まれば直ぐにでも動き出したい所で有るが中身はともかくとして俺は今7歳の子供である、思いつくことは色々と有るが具体的に言えば金が無い。それに俺は未だ7歳、親の許可も必要だろう。。。
「うん・・・・先ずは親父殿に相談するか。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます