第2章 いざ出陣!

第11話 俺ニート、運命の初戦が始まる

「緊張していますか?」




「そうですね……」




負けたら強制労働……負けたら強制労働……


確定ではないが、可能性は高い。


そう考えると、とっても怖くなってくる。


ニートにとって労働は最も不快な存在。絶対に避けねばならない。




それ以降……俺たちは特に言葉を交わさなかった。


開始までの5分間はとても長く感じた。


何一つ物音が聞こえないレベルで、沈黙が続いた。


そして22時になる。




「さあ行きますよ!」




「うぇっ!?」




気づけば俺は、謎の異空間に飛ばされていた。




「ここが、例のゲームの会場ですか?」




「…………」




言葉が返ってこない。




「あの……アリスさん?」




もう1度声をかけてみるも、全く返事がない。




まさか……異空間では1人で戦えと言うのか!?


そのまま3分が経過……まだアリスからの言葉は聞こえない。


俺は急激に希望の光が絶望の闇に染まっていく。


戦闘のルールとかもまだ聞けてないのに、どうすればいいっていうんだ!




(ん……?)




ふと前を見てみると、もう1人男の人がいた。


その人の手元には……銃があった。




(……!)




相手は俺のことをじっと見ている。


これはやばい! とっさに俺は手持ちの銃の引き金を引いた!




(あれ……?銃が撃てない!?)




闇はさらに大きく深く染まっていった。


俺の手持ちは銃以外ない。唯一の武器なんだ。


それが使えないとなると、もはやどうしようもない。




(このまま……負けてしまうのか?)




この前聞いたセリフがふと蘇る。


「人生は諦めが肝心ですよ」




……そうか、ここが諦め時なんだな。


俺はゆっくりと銃を下ろし、少しずつ目を瞑った。




(…………)




目を瞑っている間は、時がものすごくゆっくり進んでいる感覚だった。


普段の2倍以上に時が進むのが遅く感じる。




(…………)




相手は何をしているんだ?全く撃ってこない。


ゲームとはいえ舐められているのか?




確かにゲームと言えばそれまでだが、負けたらペナルティがあるんだぞ?


そのペナルティの内容は明かされていないのだぞ?それなのに勝たなくていいのか?




どうしようもなくなった俺は、なぜか敵の心配をするようになっていた。


人間追いつめられると、何考えるかわかったもんじゃないな。




っとその時!




「すみません!お待たせしました!」




(……!)




その聞き慣れた美しい声、これは間違いないと確信した!




「アリスさん!心配してましたよ!どこに行ってたんですか?」




「ごめんなさい、ゲートに転送されたあと、忘れ物を取りに行ってまして遅れました……」




「そうですか……」




こんな緊迫とした場面で忘れ物をするとか、一体何を考えているのだ!

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