第3話 俺ニート、親から手紙に絶望する

そして迎えた朝。昨日とても大事な話を聞いて、


夜にどうするか悩んでいた割にはよく眠れた。


こういうときは眠れないっていうオチになると思ったんだがな。




ひとまずいつも通り、まずは朝食をとることにした。




(今日はトーストか……)




ちなみに俺はパンよりご飯派である。




(ん……?)




トーストが乗っている皿の近くに、1枚の手紙が置いてあった。


俺は早速読んでみる。




『淳一へ、今まで私達は甘く育ててきました。例え淳一が無職であろうとも、かわいい息子だからと言って働くことを強く催促せず、そのままにしてきました。しかし、最近の物価高の関係で、もう何も働かない人を養うのには限界が来ました。冷静に考えてみたら、ずっと無職の人を養うのには無理があったと思いました。そこで淳一にチャンスを与えます。1週間以内に職を探してきてください。それができなければあなたを追い出します。母より』




(……え?)




あまりにも突然の就職脅迫に、俺は驚きを隠せない。


そして数秒後、その感情は絶望に置き換わる。




確かに最近物価高は大きく進行している。昔の約3倍の値段となっていたのだ。


にもかかわらず給料は物価高に追いつくほど増えてはいない。


だが!いきなり働けと言われても、すぐにOKと返事を返すことはできない。


……俺はもうこのまま働くしかないのだろうか?




……その時!ふと走馬灯のように昨日の出来事を思い出す!




(ハローニートとの契約!これだ!)




唯一働かなくてもいい選択肢である、ハローニートとの契約!


もはや迷っている暇はなかった。


俺は早速ハローニートの事務所へと向かった。




だがいざハローニートにまたいくとなると緊張してきた。


今日から人生が変わることを考えると落ち着かない。


そのためかハローニートへ向かうために乗る電車とバスは、


昨日よりも長く感じた。




……なんとか到着した俺は、すぐにピンポンを鳴らし、




「昨日の件をお話するために来ました」




「あっ!どうぞ中へ!」




すぐに中へ案内された。




「ここに来たということは、契約するということですね!」




「はい、正直不安な所はありますが、どうしても契約しなければならない事情ができて……」




「わかりました!ではこちらが契約書になります。一度契約すると解約はできないので気を付けてくださいね」




どうせ契約しなきゃ生活できないんだ……するしかねぇ。


俺は早速契約書にサインをした。


名前、年齢、性別の他に、なぜか住所と電話番号を書く欄まであるのが気になるが……




「あっ!そういえば、私はまだあなたに名乗っていませんでしたね」




「そう言われたら確かに、俺もまだ自分の名前を言ってませんでした」




気づくのが遅い!と我ながら思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る