イケメンの親友とラブレター
「はる!今日は私習い事があるから、ちゃんと夢の言う事聞いて一緒に帰るんだよ!」
「お前は俺のお母さんか!」
隣の教室【5ー2】に入る前に香織は俺に大声で忠告をして来た。
「夢、はるの事お願いね!」
「うん!香織ちゃん、また休み時間にね」
「俺は問題児か!!」
「あっくん、行こっ・・・」
「へいへい」
俺は少し不貞腐れながら教室に入った。
香織は俺と同じクラスの夢にお願いをした・・・・俺の事を言う事を聞かない問題児だと思っているのか?
今年は香織と違うクラスになったと思えば、毎朝教室前で同じようなやり取りをして?されて?
クラスメイトからは・・・・
「ヒューヒュー!」
「毎朝仲良い夫婦だね!」
「遥と香織は本当お似合いだよね~」
何て事を言われる毎日・・・・
はぁ・・・なんだかなぁ。
別に香織の事は嫌いじゃないけど・・・妹くらいにしか思ってないしなぁ。
「オッす、遥!今日は寝坊か?」
「おはよう力也。まぁ、そんな所・・・」
自分の席に着くと隣の席の男の子が話しかけて来た。
「おはよう力也君」
「おう、夢もおはよう!」
夢も俺に続きその子に挨拶をした。
刈り上げた茶髪に整った顔・・・まぁいわゆるイケメンと呼ばれる男の子【
足は速いし、勉強もできる。
最近はプロサッカーチームのジュニアユースにも選ばれたみたいだし・・・
小学生男子が欲しいものを全て持っている力也は当然・・・
「力也君!日曜日私とお出かけしない!?」
「ちょっと邪魔しないで!私が力也君と遊ぶの!」
「何言ってるの、私よ!」
「いいえ、私よ!!」
とまぁこんな風に女子からモテモテだった。
いつの間にか力也の周りには人だかりができ、俺と夢は教室の端で会話をしていた。
「相変わらず凄い人気っぷりだな・・・」
「しょうがないよ、やっぱり力也君はカッコイイんだもん」
「なんだよ、夢も力也のファンか?」
「べ、別にそんなんじゃ・・・」
少し頬を赤らめた夢は力也から視線を逸らした。
「あーあ、良いなぁ~。俺もあれだけ女子にモテてみたいなぁ」
俺が力也の方を向いて口にした言葉に夢は反応した。
「いいよあっくんは・・・・一生モテなくていいの」
「いや、なんでだよ!俺だってモテたいのに!」
「あっくんのばか・・・・」
そう呟くように吐いた言葉と共に、夢は自分の席に向かった。
そのまま俺も席に戻ると予鈴前を察し、皆席に着き始める。
「で?誰と【でーと】するんだ?」
流石のモテ具合に少し妬けてしまい、頬杖を突きながら気怠い目で質問をした時、予想外の返事が返ってきた。
「ん?遥だよ?」
「は!?」
おいおい、勘弁してくれよ!
俺にそんな趣味ねぇーよ・・・・うわっ、なんか一部の女子がキャーキャー言ってる・・・・
「つーわけで日曜日、遥の家にスマブラしに行くからよろしく~」
「んな勝手にー」
俺が言葉を言い終わる前にチャイムがなった・・・・
* * * *
「ったく、なんで図書室だけ違う建物にあるんだよ」
俺は放課後の廊下を文句を口にしながら歩いていた。
香織の借りていた本の貸出期限が過ぎていたようで、習い事のある香織の代わりに返却をしに行っていたのだが・・・・・遠い。
校舎から少し離れた場所にあるプレハブが図書館となっており、片道五分はかかる。
アイツはいつもの様に『お願いはる!先生に怒られちゃうよ!』って泣きついてくるし・・・・
本当、アイツは世話が焼ける妹だよ・・・
香織の実妹で一つ年下の美穂の方がしっかりしてるよ。
「あーもう早く帰ろう・・・夢も待ってるだろうし」
俺は【ろうかは走るな!】の張り紙の言葉を守り、早歩きで自分の教室である【5-3】に向かった。
「夢、お待たせ。帰ろ・・・・う」
教室に入っても生徒は一人もいなかった。
あれ?夢の奴、先に帰ったのか?
いつも要がある時は言ってくれるのに。
まぁいいか、俺も帰ろう・・・
夢もいない事だし、下校しようと下駄箱に向かった時に彼女を見つけた。
「おーい、夢」
「あ、あっくん!?」
俺の呼びかけに何故か驚いた様子だった。
夢は何かを見つめていたであろう手を後ろに回していた。
「先に帰るなら言っといてくれよな」
「ご、ごめん」
「ほら、早く帰ろうぜ」
いつもの様に土足に履き替え歩いて帰ろうとした時、夢はその場で立ち尽くしていた。
「夢、どうかしたのか?」
「う、ううん大丈夫・・・・ごめんね。今日は先に帰っててくれる?」
「何かあるのか?」
「別に・・・何もないけど、今日は一人で帰りたい気分だなぁ~って・・・」
明らかに俺から目線を逸らしている夢は確証はないけど何か嘘をついている気がした。
一歩、夢に向かい近づくと夢の背後から何かがヒラヒラと風に舞いながら落ちて来た・・・・
「ん?なんか落ちたぞ?」
「だっ、だめぇー!!」
俺はその何かを広い上げ確認しようと表面を向けた時、夢が慌てて声を発した。
夢の制止よりも先に俺の視界には拾い上げたものが写っていた。
これって・・・・
俺の手には手紙が・・・・ラブレターがあった。
手紙の表紙には相手の名前とメッセージ・・・・【近本力也君へ】
そっか・・・・そう言う事ね・・・・
「あっ、あっくん・・・これは違くて・・・・」
「な、なんだよ、そうならそうと早く言ってくれれば良かったのに・・・・」
「お、俺・・・・力也と仲良いからアシストしてやったのにさぁ!」
「ち、違うの・・・私はあっくんが・・・」
俺の声は震えていた・・・・無理に笑った表情は、鏡を見なくても引きつっている事が分かる。
夢は何かを言っていたが、そんな言葉は何一つ耳に入らないほどに動揺していた。
「ほ、ほら返すよ!ごめんな勝手に見ちゃって!」
「お、俺応援してるから!頑張れよ!!」
「あっくん!!」
俺は夢に手紙を渡し、逃げるようにその場を去った・・・・
その日以降、俺は夢の顔をまともに見れなくなってしまった。
「はる!聞いてるの!?」
「え!?あっ、えっと・・・ごめん」
「あっくん・・・・大丈夫?」
「うん・・・別に・・・」
また今日も顔を逸らしてしまった。
あの日から二日経って夢とはまともに会話をしていない。
どう話せばいいのか、そもそも話をしていいのかも分からなくなっていた・・・・
* * * *
「遥、どうした?早くスタートボタンを押してくれよ」
「あっ、ごめん・・・」
力也と遊ぶ約束をした日曜日、俺はゲームのコントローラーを握ったまま、またボーっとしていた。
力也の声に反応してスタートボタンを押し、ゲームが始まる・・・
力也・・・夢と付き合ったのかな・・・?
夢は特に何も言ってないし、香織も知らないようだし・・・・
「良しっ!俺の勝ち!!」
「あっ・・・」
考え事をしていると対戦は終わっていた。
「どうしたよ、遥。いつもより手応えないぜ?」
「あっ・・・悪い、もう一回やろうぜ」
「うっし!そう来なくちゃな!」
俺はまたスタートボタンを押し、第二回戦が始まった。
今回は集中しよう・・・・
せっかく家に遊びに来てるんだし。
俺は慣れた手付きでキャラクターを操作し、力也の残機を一つ減らした・・・・
いつもなら喜んでいた場面なのに・・・・どうして今日はこんなにも気持ちが入らないんだ?
ゲームをしながら考え事をしていると、力也の方から口を開いた。
「そう言えば俺・・・ラブレター貰ったんだよね」
「・・・・へぇー、流石力也だな」
落ち着け、冷静に・・・・力也が告白される事なんてよくある話じゃないか。
と言うか、どうして俺の心はこんなにも動揺しているんだ?
「それで・・・付き合うの?」
「まぁな、俺も気になっていたし・・・なんかあの手紙で熱意?みたいなのが伝わったって言うか何と言うか」
「そっか・・・・」
胸が痛くなった。
「あ、あいつ良い奴だから、大切にしてやれよ!」
「もちろんそのつもりだけど、遥って俺にラブレターくれた相手って知ってるの?」
「あ、いやそれはー」
俺がごまかそうとした時に隣の家窓から声がした。
「はる!ケーキあるけどいる!!?」
「りっきーも来てるんでしょ!!?」
隣に住む香織には電話を使う知能が無いようだ。
ちょうど空気も一方的に悪くなって来たタイミングだった為、俺たちは香織の家に行きケーキを食べた。
香織の家に行く時に俺の胸の痛みが少し和らいだ気がした。
その瞬間、俺は胸の痛みの原因を理解することができた。
あぁ・・・・分かった・・・・
俺って・・・・夢の事が好きだったんだな・・・・
結局夢とは会話もしないまま翌週には、急遽決まった夢の親の仕事の都合で他県に引っ越して言った・・・・
「ちょうど、良かったのかもな・・・・」
最低だけど俺は夢の住んでいた家を眺めてそう呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます