こっちも修羅場?

「おはようございます、赤城・・・・・君!?」

「どどどどうしたのですか!?」

 空気が黒くなっていそうなそんな絶望感溢れるため息を吐き出しているからなのか、

 自分の席で寝そべっている俺に向かい青崎は開口一番驚きの声で訪ねて来た。


「あっおはよう青崎さん・・・・ごめんちょっと寝不足で」

 顔だけ上げ、声の方を確認した。

 もう流石に聞きなじみのあるこの声の正体は、顔を見ずとも判断できる。


 俺を心配して慌てていた青崎だったが俺の言葉を聞き、落ち着きを取り戻したと思えば怒りにシフトチェンジした。


「もう!また昨日も女の人とゲームしてたのですか?」

「その浮気男見たいな言い方やめてよ、ハハハ」


「実際間違ってませんよね?」

 不貞腐れながら何かを言っていたが、俺は自分が夜更かししていた理由を明かした。

 別に隠すことでもないし・・・・


「ちょっとテスト勉強してて・・・・寝不足で・・・・」

「あっ、期末テスト来週ですしね」

「でも赤城君ってそこまで中間テストの点数低くなかったですよね?」

「そうだけど、どうして青崎さん知ってるの?」


 俺はテストの点を公表してはいない。

 別にそこまで頭が良くないからだ。


 学校に張り出される順位表もほぼ真ん中、百五十位くらい。

 ちなみに青崎さんは堂々の一位。

 二位と三十点も離れている圧倒的具合。


 順位が近い人ならともかく、かなり離れている俺の点数を知っている理由・・・・


「えっと、その・・・たまたま目に入りまして」

「はは、だよね」


 なんか変な期待しちゃったよ。

 クラス分け表とかテストの順位表の様に全体に張り出されている物で、ついつい気になっている人の名前を探しちゃうアレのような感じかと・・・・


「あっでも今回も英語で赤点だと・・・・」

「そうなんだよ・・・・・もう・・・・・終わった・・・・」

 せめて授業が始まるまでは睡眠をと思い俺は現実逃避もかねて机に顔を近づけた時、青崎が俺の名前を呼んだ。


「赤城君!」

「ん?どうしたの?悪いけどちょっと眠気が・・・・」

「放課後に勉強会、しませんか!?」

「その・・・私英語は自身ありますので、良ければ私の家で・・・・・」


 もう目が覚めてしまった。

 青崎の家で二人っきりで!?

 余計な想像はよせ!

 しかし、香織以外の女子と二人っきりで・・・・


「皆さんで!」


 ・・・・ですよねぇ。

 って皆さん?


 背後を振り返ると、辰彦と桃原がいた。


「おっす、部活も休みだし、もちろんいくぜ」

「青崎さん、私も言っていいの?」

「はい、もちろんです!」


 まじか・・・・あの青龍会本部に俺は入れるの?

 それに香織以外で初めての女子の部屋・・・緊張するな。

 眠気は消え去っていた。


 ありがたい誘いなのだが、俺には一人声を掛けておかなくてはいけない人物がいた。


「青崎さん、もう一人誘ってもいい?」

「はい、もちろん!」

 許可をもらい、そのまま授業が始まった。


 * * * *


「で、でけぇ・・・・・」

「何この入り口・・・・雷門かよ・・・・」


 放課後、青崎の迎えに来ていた車に乗せてもらった俺達と追加の一人は青崎の家、青龍会本部に来ていた。


 グルグルマップで見た事はあったけど、実際目にすると迫力が違うな・・・・


 バカデカい門をくぐり、敷地内へすすむ。

 門を潜るとすぐに学校で毎日の様に見て来た光景が・・・・


「「「お疲れ様です!お嬢!!」」」

「ええ、ただいま」


 いつもの様に青崎に向け頭を下げるヤクザ達。


 全員顔怖ぇ・・・・

 あっ飯田のおっさんだ・・・・となりは確か坂口さんだっけ?


 見覚えのある顔を見つけていると、ジロジロ見られていると思ったのか、一人のヤクザが声を上げた。


「おい、こら・・・おどれ何見とんじゃ?」

「え!えっとその!!」


 こわ!実際ヤクザ目の前にするとこんなに怖いの!?

 足の震え止まんないんだけど!


「雪宮!おどれ、見てわからんのか!!」

「こちらはお嬢の客人や!丁重にお出迎えせんかい!!」


 運転手のおっちゃん!あんた良い人だったんだな!

 ごめん、勝手に怖い人と思ってしまって!


「本当ですかい?お嬢・・・・」


 雪宮なるヤクザが青崎にそう尋ねる。


「えぇ、こちらの方達は私の学校のご友人・・・失礼の無いように」


 俺たちに手を向けヤクザに説明をするのだが・・・・


「お嬢に・・・・ご友人が・・・・」

「わしゃ、いっつも心配しとったんじゃ、お嬢はいつも一人でおるさかい」

「アホ!そりゃお嬢に釣り合うだけの友人がおらんかっただけじゃ!」

「しかしまぁ、ええ子そうな子ばっかりやのぉ!」


 一人、また一人と涙を流し始めるヤクザ達・・・・これ何事!?

 友人ができなかった原因は十中八九あんた等が原因だからな・・・・


「そうと分かれば・・・・」


「「「おいでやせ!ご友人方!!」」」


 俺達にも頭を下げ始めたヤクザ達を前に流石に身内として恥ずかしくなったのか、青崎が誘導を始めた。


「ほ、ほらみなさん行きましょう!あのはなれが私の自室ですので」


 青崎が指さす方向には・・・・家じゃん・・・・


 家の敷地内に家が建っていた・・・・・


 青崎に付いていこうと歩き出した時、飯田のおっさんが俺を呼び止めた。

「赤髪の兄ちゃん、ちょっとええか?」

「あっはい、なんでしょうか?」


 飯田のおっさんに付いていき、人気のない庭園に連れてこられた。

 敷地内に・・・・・庭園・・・・もう考えないようにしよう。


「それで、僕に何か用でしょうか?」

「自分やろ?前お嬢と買い物デートしてた相手って」

「なっ!!」


 先ほどまでの明るい顔とは違い俺を睨みつけるその鋭いヤクザの目に俺は一歩後ずさりしてしまう。


「あぁちょい、構えんでええ」

「別に自分に何もする気ないし、部下からええ男気持った兄ちゃんやって報告も受けとる」

「は、はぁ・・・」


 あの買い物の時の三人ってヤクザだったのか・・・・

 俺ワンチャン死んでたのか・・・・師匠!あんたの教えてくれた合気道、今年めちゃくちゃ役に立ってるよ!


「自分を呼び出したのは一つ確認したい事があったからや」

「確認したい事?」


「ぶっちゃけお嬢と、どこまでいっとるんや?」

「へ?」

「付きおうて何日目や?」

「もう手は繋いだか?チューぐらいは今どきの若いもんは初日でやっとんのか?」

「は、はぁ!?」


「もしかして、もうお嬢の裸見たんか!?」

「ちょっ!落ち着いてください!」


 勝手に妄想して止まらなくなった飯田のおっさんは壊れ始めたロボットの様に狂っていた。


「う、ウチのお嬢に何さらしとんじゃ!!」

「嘘ぉー!!!」


 撃鉄を起こした拳銃をこちらに向ける飯田のおっさんの目は血走っていた。

 結局青崎が俺が付いてきていない事に気付いて止めに来てくれたが・・・・やっぱりやばいなこの組

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