プチ修羅場
「アハハハ!後輩君相変わらず弱すぎやって!」
夕食後、相変わらずのゲームセンスを披露する先輩にボコボコにされている最中、俺のヘッドホンからはいつもの様にあの煽り声が聞こえてくる。
「くそー!!!」
今日も俺の部屋に声が響き渡る。
「復帰阻止はリターンが大きいからやるべきやって言うたやろ?」
「いやでもそれでミスして一機無くなったら本末転倒じゃないですか」
そう!リターンが大きくても、リスクが小さくないなら意味ないじゃないか。
そう考えていると聞き馴染みのある名前が聞こえた。
「だーから君は意気地なし君やねん」
「なっ!?」
「先輩!どこでそれを!?」
この人が俺の現在進行形で使われているあだ名をしっている理由。
考えられる可能性は一つ・・・・
「夢ちゃんから聞いたで?」
「桃原さん・・・・」
やっぱりか・・・・・
もしかして桃原さん、意外と怒ってるのか?
「後輩君が悪いで?夢ちゃんええ子やから怒っとらんけど、普通ブチ切れやで?」
「うっ・・・・!」
アレで怒ってないのか・・・・女の子ってわからん・・・
「もうちょい女心もゲームも勉強せなあかんで?」
「なぁ、意気地なし後輩君?」
「あー、もう!!」
ホントこの人、俺への煽りが止まらないな!
何が楽しくてこんなテンション続けてるのか。
当分先輩にこのあだ名で呼ばれると思うと・・・・・はぁ。
今後が不安すぎる・・・
「へへへっ!あっそうや、勉強で思い出したんやけどな」
「ん?」
「ウチとゲームしてくれるのは嬉しいんやけど、後輩君大丈夫なん?」
「何がです?」
何だろう急に・・・・もしかして彼女と浮気とか思ってるのか?
いやぁ、ないな・・・・我ながらなんて想像を。
そんな下らない想像をしている暇もなくなる程の言葉が先輩の口から発せられた。
「高校生ってもうすぐ期末テストやないの?」
「・・・・・・あっ」
あーーーー!!!!!!!!!
テストは一週間後だった・・・・
* * * *
眠い・・・眠すぎる・・・・
結局あの後直ぐにゲームを止めて朝の五時まで、約七時間の勉強をして睡眠時間は二時間ほどだった。
今回のテスト・・・・英語だけは落とすわけにはいかない・・・・
中間と期末、どちらも赤点を取ってしまうと問答無用で増田先生の追加課題確定。
俺のテストの点はほぼ平均!・・・・・英語を除いて。
でもまじめに勉強をしていればきっと赤点なんて回避できる!
しかし!それができないのは毎日毎日ゲームに誘ってくる先輩のせい!・・・・・じゃなくて俺が誘惑に負けるから・・・
とりあえず他は捨てて、英語だけでもなんとかするか?
「・・・る!」
しかしなぁそれだと他の教科を落としかねないし。
うーん・・・・
「はる!!」
「ん?・・・・いたっ!!」
瞬間鈍い痛みが顔面を襲う。
名前を呼ばれ気付いた時には俺は電柱とキスをしていた。
「いててて・・・・」
「ちょっとさっきから大丈夫?ボーっとしてるよ?」
ぶつけた箇所を抑えていると一緒に登校をしていた香織が覗き込む。
考え事をしていて電柱に顔面ぶつけるとか漫画かよ・・・・
「いや別に、ちょっと考え事してただけでー」
「夢の事?」
食い気味に聞いてくる香織の顔も声も特に普段と変わりはない・・・のだが。
「ど、どうして、桃原さんが出てくるんだ?」
「楓ちゃんからRAINで聞いたからだよ、意気地なし君」
「うっ!」
二重の衝撃!
一つは外部、顔面から!もう一つは心にクリーンヒット!!
そして香織がこのあだ名を知っていると言う事は・・・・・
「どっちが可愛いかの論争・・・・楽しそうじゃない、ねぇはる?」
「私が同じクラスじゃない事をいい事に、まぁ次から次へと女を・・・・ね!!」
ですよねぇ・・・・俺が浮気しているみたいな言い方はやめていただきたい。
俺別に香織と付き合ってる訳じゃないよね?
だからその怖い顔はやめて!
「いやあれは事故みたいな物で、元はと言えば辰彦が!」
「そ、それに桃原さんには別にー」
「その桃原さんって呼び方なんなの?」
「え?」
「どうして昔みたいに夢って呼ばないの?」
俺が話し終える前に香織がまた言葉を挟んできた。
「いや、まぁほら、香織と違って桃原さんは六年ぶりだし」
「付き合ってもいないのに名前呼びってのはアレだし・・・・」
「それに桃原さんだって俺の事苗字で呼んでたぜ?」
小学五年生まで香織と一緒に遊んでいた女の子、桃原夢。
別に桃原とは喧嘩別れした訳じゃ無い。
アイツの親の都合で他県に引っ越していっただけ・・・・
入学式後の自己紹介でこっちに帰ってきている事を知ったが、前の様に遊んだりする年でもない。
「・・・はる!」
それに、アイツは覚えてないかも知らないけど、俺は・・・・・
「はるってば!!」
「あ痛ぁ!!!」
本日二度目の電柱とのキス完了。
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