君はどっち派?
「増田の授業で舟漕ぐとか、遥は命知らずだなぁ」
サンドイッチを食べながら辰彦はそう言った。
「いやホント桃原さんには感謝だよ。改めてありがとね」
「ううん、気にしないで。眠たいときは誰にでもあるよね」
何度でも桃原さんには感謝をしたい・・・・
入学早々に、増田の体罰もとい追加課題を受けた生徒曰く、一週間のほとんどがその課題で潰れたのだとか・・・・
夏休み前にそんな課題をするわけにはいかない!
これからは先輩とのゲーム時間は次の日の時間割を見てちゃんと決めよう。
ゲームをしない選択肢?そんなものあるわけないだろ。
桃原の言葉に青崎はお弁当の卵焼きを箸で掴みながら口を開く。
「それでも最近の赤城君は、どこか集中しきれていないように見えますよ?」
「毎晩えっちな物でも見て夜更かししてんじゃねぇーの?」
!?
辰彦以外の食事の手が止まった。
「おまっ!女子の前でなんちゅー事を!!」
「はははは、すまんすまん」
アウト寄りのセクハラ発言をし、軽く謝罪をする辰彦と顔が赤くなった桃原、青崎の三人と俺は教室でお昼ご飯を食べていた。
最近はこの四人で過ごす機会が増えてきた。
香織も誘っては見たものの、お昼はクラスの子達と食べる約束があるようで・・・・
「えっとその、赤城君も男の子ですし・・・・ね」
「うん、お年頃だからかな?」
青崎と桃原は互いに顔を見つめ、その結論に至ったわけだが。
「ちょっ!勝手に俺のイメージを作らないでよ!!」
「それに桃原さんにはさっき説明したじゃん!」
「あはは、ごめん」
いつも通りの会話・・・・
辰彦の暴走を俺がツッコミ、女性陣が笑う。
七月になり、ようやく青崎がクラスに馴染めてきた気がした。
元々俺と一緒に青崎と話していた辰彦はコミュ力の塊みたいな人間だからなのか、直ぐに青崎と打ち解けることができた。
桃原も性格上なのか青崎を怖いとは思っていなかったようで、話をしてみたかったのだとか?
あのインパクトのある登校日以降、特に青崎の噂も広まらなくなった為かクラスの認識が【青崎さんってそこまで怖くなくね?】っと言う認識に変わり、男子も女子も容姿端麗な青崎と話すきっかけを探しているように見える。
「いやぁ遥には感謝だな」
「え・・・俺?」
急に俺に感謝を告げだす辰彦は答えた。
「だってよ、B組可愛さツートップの桃原さんと青崎さんの二人と昼飯を食えるのは二人と仲がいいお前だからだろ?」
「他の男子を見てみろよ!羨ましそうにしてるぜ。ゲへへへへ」
「キモイ笑い方すんなよ、それに俺は他をハブってるつもりはないけど・・・・」
確かに嫉妬っぽい視線を感じるが、俺は別に他の奴が一緒に食べたいって言ったら断る気も無いし。
そもそも俺目当てじゃないし。
「フフ、加納君はお上手ですね。ありがとうございます」
ゲスい顔で笑うキモイ奴もとい辰彦の言葉をお世辞と受け取り軽く流す青崎。
辰彦はおそらくマジで言っている。
「いやいやお世辞じゃないって、マジで二人の学校人気高いから、なっ!遥もそう思うだろ?」
「は!?なんで俺!?」
なぜ俺に振る!
確かに桃原は入学当初から人気だったし、最近青崎の男子人気の勢いが凄いけど・・・・
こんな面と向かって《可愛いよ》なんて言えないよ!
なんだか二人も俺の方チラチラ見てるし余計に答えずらい・・・・
「あ、あの・・・・赤城君も可愛いと思ってくれていたの・・・ですか?」
「わ、私も!思ってくれてたの?」
なにこの言葉で言い表せない圧力・・・・
上目使いでそう言ってくる二人を前に俺は目を泳がすことしかできない。
視界に入った横に座る元凶は楽しそうにニヤニヤして俺を見てやがるし・・・・・コイツいつか泣かしてやる。
なんだかクラスから視線を感じるし・・・あぁもう!恥ずかしい!!
この状況から解放されたい一心で言葉を伝えた。
「いや、まぁその・・・・綺麗だなっとは思ってたよ・・・・」
「・・・・・・////」
「あ、あくまでアレだぞ!?クラスメイトとしての意見で・・・えっと他の男子も言ってたし!」
恥かしさを隠すのに必死になっていたが、顔を赤らめた二人からは小さな声量での「ありがとうございます」と「ありがとう」が聞こえた。
「でも前に二人でお出かけした時、”可愛い”って言ってくれましたよね?」
「な、それは!」
恥かしさに俯きながらそう言った青崎の口を手で塞ごうとしたが、時すでに遅し。
「やっぱりお前たちできてたのか!」
「二人でお出かけって何?私聞いてないよ?あっく・・・・赤城君?」
お、おいなんだよこの空気、辰彦はともかく桃原ってこんなに怖かったけ?
「いや、あれはその青崎さんも誕生日だったしお祝いしたいなぁっと思って。」
「友達として!!」
「・・・・・友達」
あれぇ!?どうしてそこで青崎が落ち込むの!?
「青崎さんには言って桃原さんには言わないのか?」
「そりゃちょっと不公平だよなぁ、桃原さん?」
「そ、そうだね。ちょっとどうなんだろうって・・・・・思うかな?」
なぜ俺が詰められる・・・・・
俺は悪人か何かか?
「いや、あの時は服が似合ってるって意味で可愛いって言っただけで、別に青崎さん自身を・・・・あっ!!」
俺はとんでもない事を口走っていた。
案の定正面に座る青崎の表情は死んでいた。
「やっぱりそう・・・・ですよね」
「あっ違くて!今のは誤解で!!」
訂正しようにもトラブルメーカーが話すのをやめない。
「じゃあお前は桃原さんか青崎さんのどっちが可愛いと思うんだ?」
「なぜそこに戻るんだ!」
「それにお前そんな優劣付けるとか失礼だろ!」
「私はいいですよ?桃原さんがよろしければ」
「私も別に・・・・赤城君なら・・・・」
以外にもOKを出した二人は先ほどとは違う圧力で俺を見てくる。
俺が絞り出した答え、それは!
「え、えっと・・・その・・・・」
「どっちもって言うのはダメ?」
ごめんなさい、こう言うしかなくて・・・・・
「は?」
「は?」
「アチャ~」
優しい二人からはかけ離れたようなこの顔を見た感じ、ダメみたい・・・・・
辰彦は顔を手の平で覆っている。
目の前の二人が俺を詰めようとしていた時、クラス中から声が聞こえ始めた。
「そりゃないわ~」
「赤城だせぇ~」
「俺は断然桃原さん派!」
「はっ見るめねぇな、俺は青崎さんだぜ!」
「まぁでもなぁ・・・」
「男子はどうせ顔しか見てないんでしょ?」
「私は青崎さんのスタイルが素敵だと思うの」
「ウチは桃ちゃんの優しさは学校一だと思うなぁ」
「なぜ私はツートップに入っていないの!?」
「まぁでも・・・・」
いつの間にか俺たちの会話はクラス中に聞こえていた様で総じてー
「赤城最低!」
と言う結論に至った。
なぜ俺が・・・・・
俺を犠牲に青崎はよりクラスに馴染み・・・・・俺のあだ名は三日ほど【意気地なし君】になった・・・・・・泣いていいか?
休憩時間も終わりに近づき皆それぞれ席に着き始めた。
横の席の桃原は頬杖を突き、頬を膨らましていた。
「あっくんの意気地なし・・・・」
桃原が何かを呟いた様な気がした。
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