赤城君とのお出かけ
私、青崎楓は舞い上がっていた。
今日は私の初めてのお友達、赤城君とデー・・・・お出かけをする日
でも初めてお出かけするから舞い上がっているわけではない。
気になる男の子とお出かけをするから、こんなにも心が躍っている。
昨日二時間も悩んだ服の中から選りすぐりの一着を身に着ける。
時刻は待ち合わせ時間、十時の二時間前。
今日だけは組の人達に邪魔をさせない!
昨日読んだ【男の子と仲良くなる本】の内容も頭に入っている。
いざ!戦場へ!!
勢いよく自室の扉を開け、玄関に向かうとそこにはいつもの様に組の人達が居た。
「「「おはようございます!お嬢!!」」」
「えぇ、おはよう」
これまたいつもの様にやり過ごし、ようやく敷地外に出る門を潜ったその時、いつもの運転手が目に入った。
「おはようございやす。楓お嬢様」
「えぇ、おはよう。水上」
「本日はどちらまで?」
「今日は本を買いに出かけるだけ・・・電車で行くから送り迎えは不要よ」
今日だけは車での送り迎えをしてもらう訳には行かない。
一件話が通じそうな目の前の黒スーツでサングラスの男、青龍会直系水上組組長【
私とお出かけしている赤城君を見たら、間違いなく他の組の人達と同じで、赤城君に良からぬ事をするに決まってる。
だからこそ、ここで水上さんを振りき・・・・
「なりやせん!お嬢様!」
・・・れる訳も無く。
「なぜ?」
「お嬢様をあんな箱に詰め混むなど・・・・万が一痴漢などされれば!!!」
「お嬢様の送迎は俺の使命!電車よりも快適かつ安全に目的地まで一秒の狂いもなく到着して差し上げます」
もうこうなったら!
中々終わらない水上さんに対して、私は禁忌のカードを切った。
「運転手・・・・坂口にやってもらおうかなぁ・・・なんて」
チラッと横目で見た水上さんは当然黙ってる訳も無く焦り始める。
「なっ!お嬢様!!それは・・・・」
「わかったら今日は大人しくね」
「うっ・・・・分かりました」
なんとか振り切り久々の電車に乗った。
ショッピングモール前のカフェで時間を潰し、待ち合わせの15分前。
注文したコーヒーを飲み干し、お店を出る。
赤城君も着いてるかもしれない、それに本にも【デートは待ち合わせの十分前には到着】って書いていたし。
待ち合わせ場所は確か1Fの雑貨屋さん前。
モール内を進み雑貨屋さん付近まで来た時、雑貨屋前のベンチで私を待ってくれている彼を見つけた。
「お待たせしました!」
私は学校の外で初めて会う彼の元へ、思わず手を振って駆け足で向かった。
彼も私に気付いたのか、スマホの操作を止め返事を返してくれる。
「おはよう、青崎さん。全然待ってないから安心して、俺も今着いたとこだよ」
「そ、そうですか・・・良かったです・・・・あっおはようございます」
赤城君、いつもと雰囲気違うかも・・・・制服姿じゃないから当たり前だけど。
今日は白のTシャツに黒いズボン。
サコッシュも似合っていて可愛い。
【相手の服装を褒めて距離を縮める】
よ、よし!本で読んだ通りに今思った言葉を・・・・
「私、赤城君の普段着初めて見ました!」
「普段の制服姿も素敵ですが、その・・・・カッコイイですね」
よし!ちゃんと言えた!
赤城君もちょっと顔赤くなってるし、手応えありかも!
「お、おうありがと・・・・青崎さんもその・・・・いつもと違う服装、可愛いよ」
!?
まさかの反撃に私の顔は茹で上がりそうだった。
「あ、あ、あり・・・ありがとうございます」
「ーがお嬢の?」
「あはは、そろそろ行こうか、ずっとここで話してるのもアレだし」
「ーあの野郎」
「ですね、行きましー」
赤城君の言う通り、買い物を始めようとした時、背後から確かに聞こえた声に私は振り返った。
あのお店の入り口付近にいる三人・・・・まさか!
いいえ、間違いない・・・・うちの人達だ!!
なんだか微妙に体が隠れ切っていないけど、あの強面の顔と見覚えあるスーツ。
最近飯田さんの組に入った人達だ・・・・
なんで?どうして三人揃ってここに?あの隠れ具合、買い物じゃないよね。
まさか・・・・いや、うちの人達ならあり得る!
私はうちのヤクザの事をよく理解している。
きっと《お嬢がお出かけしている所を監視しろ》とか、一緒にお出かけしている相手がお嬢にふさわしいかを見極めろ》とか言ってここに来たんだよ・・・
はぁ・・・もう本当うちの人は・・・・
「ど、どうしたの!?何かあった?」
「い、いえすみません、行きましょう赤城君・・・・」
とにかく!うちの人達が私達を監視に来ている事を赤城君に気付かれる訳にはいかない。
変に意識して組の人達に勘違いされれば、赤城君が危ない・・・・
最悪の場合は・・・・いえ考えないでおきましょう。
組の人達に怪しまれない行動・・・あの三人には”あくまでお友達とお買い物に来ている”と言う報告を飯田さんにしてもらう。
赤城君には怪しまれずに普通のお友達として接しつつ、本のアドバイス通りに少しづつ距離を詰める・・・・
今回の初デート・・・・初デートにしては難易度が高すぎる気がするけど、乗り切って見せる!
ここを乗り越えて、赤城君ともっと仲良くなる為に・・・・
そう意識した瞬間、赤城君の手が私に触れた!
【組の人達にバレてはいけない!!】
この事で頭がいっぱいで、つい赤城君の手を払ってしまった。
「あっ・・・・・・」
「・・・・・・」
やってしまった!!
せっかく赤城君と手を繋ぐチャンスだったのに・・・・ごめんなさい赤城君
組の人達は・・・・・・・ゲッ!?
怪しんでる!!!
先程の場所を振り返ると、明らかにジッーとした目でこちらを三人が見ていた。
まずいまずい、とりあえず赤城君に弁明しないと・・・・
「ご、ごめんなさい!手を繋ぎたくないわけじゃなく・・・・どちらかと言えば繋ぎたいのですが、その・・・・恥かしくて」
「あはははごめんね、妹の言葉を意識し過ぎてたみたいだったよ」
「それじゃあ気を取り直して行こっか」
「あっはい!」
何とかこの場は乗り切れそうだ・・・・・ごめんね赤城君・・・・
デートってこんなに大変なんだ・・・・
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