ウチの幼馴染参上

俺が住む家の右隣には幼馴染が住んでいる。

容姿端麗?成績優秀?そんな学園のマドンナ的要素は持ち合わせてはいない。

そう言う人は他にいる。

オレンジ色のショートヘアが特徴的で、特徴的・・・・もう語ることはないな。

まぁ明るくて運動神経が良い、男勝りな女の子【橙山香織とうやまかおり】は俺の幼少期からの幼馴染である。


「でね、海ってまだ全体の5%しか解明されてないんだって~」

「ふぁぁ・・・・そりゃすげな」

昨日のテレビで知ったであろううんちくを登校中の会話で披露してくる香織。

俺はあくびをしながらいつものように適当に話を流していた。


ここだけ聞けば、俺がただの冷たい奴に聞こえるかもしれないが、もうこの話は三回目である・・・・

昨日のテレビを見た直後であろう20時のRAIN、突然かけてきた21時の電話。

そして・・・・今。

三回も同じ話を聞いて今更どう反応すればいいんだ・・・・いい答えを知っている人がいたら是非!挙手して教えてほしいもんだね。


「はる!!」

「ん?なんぶぁ!?」

突然俺の頬を引っ張り始める香織・・・・痛いから止めろ。


「ちゃんと聞いてるの?」

きびでぶろ聞いてるよ

「絶対嘘!!」

うほじゃなびっで嘘じゃないって

「もう・・・!」

頬を膨らましながら俺の頬から手を放してくれた。

ほとんど毎日こんな中身の無い会話をしながら登校をしていた。


* * * *


「あれ?今日は青龍会の人達いないね」

「ほんとだ・・・青崎さん、何かあったのか?」

中身の無い会話を続けること二十分、ようやく学校が見えてきた時、普段ならこの時間に必ずいるはずの人達がいなかった。

学校の有名人、関東最大規模のヤクザ組織のお嬢様、【青崎楓】・・・・のお迎えの人達。

派手なスーツで身を包み、顔や手に入れ墨が入った人達が約二十人。

入学してからもうすぐ三か月、彼らを目にしない登校日の朝は無かったって言うのに・・・・


ちなにみ先生たちが注意した時には・・・・

「あぁ!?ワシらはお嬢のオヤジ、青崎会長の子分や」

「お嬢がちぃちゃい頃から面倒見させてもろてたわけや」

「ワシらにとってはお嬢は実の娘みたいなもんやさかい、親が娘の見送りに来て何か問題でもあるっちゅうんかいな?」

「これ以上ガタガタ抜かすようやったら、学校もろとも・・・・・ぶち壊すで」


と言う言葉に先生たちは委縮し、それ以上何も言わなくなった。

その日に青崎がヤクザの人達にブチ切れたと言う話も聞いた。


「あれ?」

学校の正門前に見覚えのある生徒がいた。

学生カバンを正面、腰の位置で持ち、姿勢よくたっている女子生徒。


彼女はこちらに気付くや否や、前髪を整え始めた。

俺はその生徒の前まで行き、いつものように挨拶をする。


「おはよう、青崎さん」

「お、おはようございます!赤城・・・君」

少し頬を赤くしながら挨拶を返してくれた彼女こそ、【青龍会】会長の愛娘、

【青崎楓】である。

ウチの幼馴染にはない、【容姿端麗】と【成績優秀】を持ち合わせた人物。

”ヤクザの娘”と言う肩書が原因で恐れられてはいるが、俺は知っている。

彼女が実は臆病だけど優しくて・・・・たまにおちょこちょいな女の子って事を。


「今日はいつもの人達いないんだな。」

「初めてじゃない?青崎さん一人で登校してるのって」

「えっと、はい・・・・今日は無理やー」

「”お友達”と登校したいって言ったら話を聞いてくれました」

今無理やりって言ったよね・・・・

あれか、ヤクザのお嬢様口調で無理やり家に待機させたって所か。

もう俺以外に友達ができたなんて、うれしいような悲しいような。

まぁ青崎も家がアレなだけで中身も外見も普通以上に良い子だからな・・・・


「じゃあ、邪魔したら悪いし・・・・先に教室行ってるわ」

そう伝え歩き出そうとした時、制服の袖を青崎が掴んできた。


「い、一緒に行きませんか?」

「・・・・・」

「・・・・・」

はっ!!!

あ、あぶない。今俺ライフが二機は死んでたぞ。

あんな上目使いで照れながら言われたら・・・・断れるわけがない。

って言うか断る理由も無いんだけどね。


「あの・・・・赤城君?」

「あっ、あぁもちろん」

軽く放心状態になっていたが、誘いに答え一緒に教室に行こうとした時・・・・


「私もいるんだけど・・・・」

「うおっ!!」

「きゃっ!!」

ジト目で急に俺と青崎の間に香織が入ってきた。

急に目の前に来るな・・・・・合い変わらず距離が近い・・・・


「え、えっと・・・」

「コイツは【1-D】の橙山香織」

「は、初めまして。青崎楓です」

突然の乱入者に驚きの声を上げた青崎に香織の事を紹介したのだが・・・・当の本人はムスッとしたまま俺を睨んでくる。


「な、なんだよ・・・」

「私とはすごい違いじゃん、ねぇ?はる」

「は、はぁ?」

「私にはあくびで適当に返事をするだけなのに、青崎さんには笑って挨拶して?ヘラヘラしちゃってさ・・・・」

な、なんだコイツなんでこんなに急に不機嫌になったんだ?


「いつから仲良くなったの?私聞いてないんだけど」

「いや、まぁ一週間前くらい?かな」

「って言うか別に俺が青崎さんと友達になった事を香織に言う必要はないだろ?」

怖っ!何なのコイツ、なんでこんな暗い声出せるの!?

て言うか、その黒いオーラみたいなのは何!?俺幻覚でも見えてる!?


「あっそう、私先に行く!」

「お、おう・・・」

そう言って先に校舎に向かった香織だったが十メートルほど進み振り返った。


「あと、今日十九時からだから遅れないでよね」

その言葉を伝えまた歩き出す香織の背中に向かい「りょ、了解」と返事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る