第46話 黒い柱
戦いを始めて三十分が経過した。放たれる力には強弱があり、防御のシールドは三回に一度ぐらいの頻度で破られることがわかった。なので攻撃をぶつけて相殺する作戦で迎え撃つ。
魔力は無限ではないので、ユグナとアウィーロは武器での攻撃を交えて応戦する。
「はあっ……当たり前だけど、まだまだ威力は衰えないね」
「そうですね……」
魔学の教授によれば、力の放出が続くのは六時間前後らしい。一時間も経っていないので、まだまだ序盤だ。ユグナが飛ばされて隣に着地する。最近は着地の直前で浮遊魔法を使用して衝撃を無くしていた。全く器用なやつである。
僕はまだ、飛ばされている間に魔法を用意する余裕がない。
「氷とハンマーは効いてるか」
「だね」
ここまで戦って、黒い柱は氷の攻撃と強力な物理攻撃に弱いことがわかった。ちゃんと属性で有利を取れるならなんとか戦える。
「……って思ってた頃もあったよね!!!」
そこから二時間が経過した。攻撃は弱まる気配がない。しかし僕らの攻撃は最初と比べてかなり力が落ちていることだろう。
「すみません、指輪をつけてはいるのですが……」
「流石に限界はあるだろう、謝る必要はない」
ドンっと音を立ててメロネのハンマーが地面にめり込んだ。いくら装備で補助しているとはいえ、あの大きな武器を振り回し続けているのはメロネ自身だ。体には相当な負担がかかっているに違いない。ポケットを確認する。回復薬はもう残り一本だ。
「大丈夫だ。隙は必ず作ってやる」
「今はこれ飲んで、温存して」
正直立っているのがやっとだ。僕らは残りの回復薬をアウィーロとメロネに手渡した。僕らでチャンスを作るしかない。
「ま……って」
そこからさらに時間が経過する。ポリトナにそんなことを言っても届かないのはわかってる。でも、もう立っていられない。膝をついてしまったらもう立ち上がれない気がしたので、一歩づつ進んでなんとか耐える。
「ああ……」
見上げると目の前に大きな黒い柱が見えていた。避けられない。真正面から受けることになる。もうダメかもしれない。
「どうする……」
「どうするも何も、一応足掻くしかないだろ……」
ユグナと僕は一歩前に出た。アウィーロもフラフラと揺れながら弓に魔力を込めている。だがもうわずかな力しか出せないだろう。僕らはここまでのようだ。でも、そうしたら。
”もしもの場合は、人間である君たちの命を優先し、ポリトナさんの急所を狙って動きを止めます”
「絶対手を出すなぁああ!!」
僕はポリトナに照準を合わせている職員に叫ぶ。正直、勝算はないけれど。僕らのシールドに攻撃が当たる。その防御は虚しく、一瞬で消え去った。しまった、もう。メロネが僕らの前に出た。僕らを守るように彼女はハンマーを構える。
「よせっ!」
「止まってぇぇぇええええ!!!!」
メロネの叫び声を聞きながら、僕とユグナは必死に手を伸ばしていた。このままでは、メロネに直撃する。
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