第7章 悪魔の暴走
第45話 仲間を守る戦闘
悪魔は人間の子供とほとんど変わらない。見た目も考え方も全く相違がない。
悪魔は成長すると魔族になる。魔族になったら心が消えて、魔王に忠誠を誓うようになる。
それを言いながらポリトナはもう自分を見捨てて欲しいと言った。しかし誰もが、首を横に振った。
ポリトナの誕生日当日。魔法使いの学園職員が分厚い結界を張っている。結界が長方体のような形状で、中はある程度の広さがあった。結界の内側には第三の選択肢の五人。ポリトナと距離をとって向かい合う形で他のメンバーが配置についている。
元々一般人への被害を避けるため、ポリトナの悪魔暴走をこのレイトノーウェス第二学園内で治めようと学園側は二年前からポリトナを受け入れる準備を始めていた。学園にはすでに対暴走魔力用の場所が用意されている。それがここ、魔法空間フォルテだ。
フォルテはギドルヴァーグの探索が終わった後の次のエリアに似せて作られている空間であり、学生は立ち入り禁止となっている。
「学園が彼女の入学受け入れを決めた時から、この日のためにフォルテが強力な魔法衝撃に耐えられるよう強化されてきたらしい」
「ここで力を使い切るまで暴走してもらおうって話か」
「そのようだな」
学園側の予定では、ポリトナの暴走を職員や魔物で迎え撃つつもりだったらしい。あまりにも暴走がひどく手がつけられない場合は、最悪ポリトナを始末するという手段も用意されていた。
放っておけばいずれ魔族となり、人間の命を奪うかもしれない。だから最終手段のハードルは結構低かったという。これに関しては聞いておいて良かったと今でも思う。
だからこうして、僕らの手で暴走が治まるまで相手をすることを申し出る理由ができた。仲間は殺させない。そう強く主張すれば、学園側は難色を示しながらも僕らの意思を尊重してくれた。
魔法発現者が過半数を占める異例のチームに任せてみようと柔軟な結論が出されたのである。もちろん学生の命最優先だとは言われた。
「そろそろだな」
ユグナが時間を確認する。日付が変わるまで一分を切った。少し先に座っているポリトナは晴れない表情をしている。
「大丈夫だから、リラックスしてー!」
声をかけてもひらひらとやる気がなさそうに手を上げるだけだった。もともとこの申し出にポリトナ自身は猛反対していたから、今でも納得がいっていないのだろう。仲間を傷つけたくないのは僕らも同じだ。でもこれからも一緒にチームでいたいからと言い聞かせて、無理やり首を縦に振らせている。
「来るぞっ!」
零時を超えてポリトナの体から大きな魔力に似た何かを感じる。ああ、始まるんだと僕は覚悟を決めた。
日付が変わる。その瞬間、ポリトナから何かが飛びだしてこちらに迫ってきた。
「避けろ!」
ユグナの指示で僕らは散り散りに飛んでいく。僕は魔法で空中に止まった。何に攻撃されたのかを確認するためだ。
「なんだよあれ……」
真っ黒いオーラのようなものがポリトナの体から出続けている。それは徐々に威力を増し、空間の三分の一を埋めて止まった。その黒いオーラから次々と黒の光線が放たれていた。
「これが、悪魔の力の暴走か……」
僕が地上に戻ると、他のメンバーも同じように驚いた顔をしている。これから数時間、僕らはあれと戦うことになるのだ。
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