第44話 タイムリミット

「ボクね、みんなとは違うんだ」


 違う? 何が違うというのだろう。


「人間じゃないんだよ。悪魔……悪魔なんだ」

「悪魔……?」


 メロネは両手で口を押さえている。知らないのは逆に僕ぐらいかもしれない。ちゃんと色々なことを知っておくべきだったな。こういう時に理解が早くなれるのに。


「悪魔はね、成長すると魔族になっちゃうんだって。魔族になったら心が消えちゃうの。そしたらボクは人間の脅威になる。捨て子だったボクを拾ってくれた人たちを危険に晒すかもしれないんだって」

「それは誰から聞いたの?」


「二年前に、村にスィッフユニオンの学者が来たんだ……。それで聞かされた。彼らに言われたんだ。十歳になる瞬間は学園内で過ごしたほうがいいって」


「どうして?」

「…………」


 ポリトナは黙り込んでしまった。膝の上で震えている手にメロネがそっと両手を添える。


「悪魔は十歳を迎える日に一度力の暴走が起き、力を放出するまでそれが続きます。小さな村で魔法耐性がない場所であれば、数時間で壊滅するでしょう」


「えっ」

「悪魔の子供を育てている村があると察知したスィッフユニオンは、その最悪を避けるために動いたんだ。この学園なら魔法空間があるからな。何より死者を出さなくて済む」


「それにクレントアーレには悪魔狩りの風習を持つ地域もある。悪魔だと知らられば未来の脅威と認知されて殺される危険もあるだろう。正体がバレて殺され、村の家族が悲しむことをポリトナは恐れているのではないか? だから、ユグナを攻撃した」


 彼女は涙を流しながら頷いた。人間に育てられたことで、人の心を教えられた悪魔の子供。見た目も中身も人間となんら変わりはない。


「ボクはもうすぐ十歳になる。もう、……あまり時間がないんだ」


 悲しそうな声でそう紡がれた言葉に、僕たちにある考えが浮かぶ。みんな同じことを考えているようで、力強い目線が交わり合った。

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