第42話 打ち上げ強行

 それからというもの、ポリトナは第三の選択肢の集まりにめっきり顔を出さなくなった。教室で集まりにくるよう声をかけても完全に塞ぎ込んでいるようで、いい返事をもらえない。

 その話をすれば、争いの原因であろうユグナがでは強制的に呼び出そうなんて言い出す。そんなの火に油じゃないかといえば、彼は困った顔をした。あんなに純粋なポリトナを怒らせるなんて、何をしたのか問い詰めたい。


「ユグナはどうしてポリトナがあそこまで怒っているのか知ってるんだろ?」

「おそらくこれだろうという理由はあるな」


「一体何したんだよ」


「彼女の学生名簿の詳細を資料室で確認しただけだ。知られたくない情報があるようだった」

「君さぁ……」


「リーダーとして知っておこうとしただけだ。口外するつもりはない。その、そんなに嫌だったのなら申し訳ないとも思う」


 なんとも歯切れの悪い返事だ。でもこの発言は使える。

「ポリトナを呼ぶから謝ろう一回。こんな時期に、喧嘩している場合じゃないし」

「そうだな……みんなにも申し訳ないと思っている」


 今日はお開きにしようということになり、ユグナは早々に帰ってしまった。第三理科室には三人が残る。


「打ち上げしたら仲直るとかないかな」

「そんなムードじゃなさそうに見えるぞ」

「だよね……でも……」


 どうして僕がこんなに打ち上げに固執しているかというと、予定していたバーベキューの材料に理由がある。僕たち第三の選択肢は、先日学園で行われたバトル試験トーナメントで大変素晴らしい試合の結果、準優勝となった。

 その報酬に学園は、魔法を使わないものでできる限り願いを叶えると言ってくれたのだ。なので僕は学園にクレントアーレで一番いいお肉が食べたいと申し出た。学園側は快くすぐに取り寄せてくれて、最初に打ち上げをしようとした日にはすでに手元にあった。そしてそのいいお肉の消費期限がすぐそこまで迫っている。


「冷凍せずに、食べたいんだ僕は!!!」


「私もです……」

「なら、二人を呼ばないとな」


 僕は誰がなんと言おうと、明日バーベキューを決行する。その熱量に押されてか、ポリトナはチャットでOKの返事を返してくれていた。



ジュウ、ジュウといい音が鳴り、鼻腔をくすぐる。いい音、いい匂い、でも雰囲気は最悪だ。


「もし、このメンバーに何か打ち明けたいことがある人は、共有してほしい」

「言いたい人がいたらね」


 ユグナの言葉に僕はそう付け加えた。あくまでポリトナが話したくないなら僕はそれでもいいと思っているから。それにアウィーロには元々話そうか迷っている話題があるのは知っている。別にユグナの気持ちがわからないわけじゃない。

 入学してからここまで色々な苦難を共にしてきて、卒業まで一丸となって突き進むなら、お互いに打ち明け会いたいという考えは僕にもあった。でもそれは僕が打ち明けられる側であるからで、僕にも誰にもいえない闇があったなら、この場で暴れていたかもしれない。


「言わないことで、卒業の妨げになるようなら言ってほしいと思っている」


 ユグナが追加でそう言った。そういうのであれば、彼が見たポリトナの情報は事前に共有が必要ということなのだろうか。


「ここには五人もいるんだからさ、一人で抱えるよりもいいかもしれないよ。特にこのは頭がいいから、まだ解決してないことなら答えが出るかも」


「馬鹿にしていないか?」

「ううん。リスペクトしてる」


 今日は何度も話題が途切れるな、と思う。バックに肉が焼ける音がなければ沈黙でおかしくなっていたかもしれない。ポリトナは他の人の出方を待っているようだった。


「私は、言いたいと思う」


 アウィーロがそっと手を上げた。

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