第31話 準備を整えて
「二ヶ月後からバトル試験のトーナメント戦が開始される。予選突破はもちろん、このチームで優勝を目指したい。そのために今日からまたイーグルの探索を行う。第一の目標はアウィーロの使用する弓、そして追加の魔道具の調達だ。アウィーロに関してはより攻撃力の高さに加え、性能も良いものを入手したい。今よりも実力を引き出せるようにな。また、今回はトーナメント戦ということもあり、勝ち上がった試合で魔道具を切らさないよう、アイテムも多めに用意する必要がある」
全員が集まってユグナが次の試験の作戦を話始めた。
彼の言うとおり、アウィーロは弓の扱いがとても上手いが、探索で弓が見つかっていないために、未だ学校支給の武器を使用している。アウィーロの技術なら、攻撃力の高い弓に変えればさらに戦闘が有利になるだろう。僕とポリトナの短剣も支給のものだが、僕らは魔法や魔道具をメインに使うのでそこまで急ぐ必要はない。
そこから試験までの間に僕たちは放課後や休日に探索を繰り返した。流石に他のチームも探索を本格的に始めているようで、武器の入手率は下がっている。
「あ、あった……!」
そして試験が数週間後に迫った頃、ようやく攻撃力の高い弓を発見した。アウィーロに試し撃ちをして貰えば威力は十分で、あまり仕事をしない彼の表情筋も嬉しそうに笑顔を作っている。魔道具も十分なほど集まってきている。そしてここにきて嬉しい装備もいくつか見つかった。
ぶん、とメロネが大きなハンマーを持ち上げる。その様子をアウィーロが満足そうに見て頷いた。
「すごいです! 全く重く感じません……!」
「良かった。ずっとこういうものを探していたんだ」
メロネが今使用している武器はかなりの重量と威力があり、その重さから長時間の使用には向かない。それを解消できないかと探し求めて辿り着いたのが今彼女が両手に身につけている指輪だ。指輪には魔法がかけられており、重いものを持つ負担を代わりに請け負ってくれる優れもの。
バスや電車なども持ち上げられてしまうらしいが、想像の時点で絵面が怖いので、彼女には「やらないでね」とお願いしておいた。
「今日の探索は十分だろう。そろそろ引き上げようか」
ユグナの後に続いて歩いていると、僕のスマホが振動する。通知を見たら本当に久しぶりにデューイから連絡が入っていた。
”トーナメントで戦おう”
結局彼とは会えないまま進級までしてしまった。入学前は本当にこまめに連絡をくれる人で、もっと仲良くなれると思っていたから一年以上会えていない現状にモヤモヤしてしまう。すっかり雰囲気の変わってしまった彼に僕は非常に困惑していた。そんなに僕らの友情って薄いものだったのだろうか?
”その時は流石に直接顔を見せてよね!”
それでもトーナメントで会おうというなら僕は頑張ろうと決めた。参加するのは二年生だけ。入学当初の人数で見ると、全体の八割だ。残りの二割は留年や中退で二年生には含まれない。まずは参加する八割から予選で半分が落とされる。僕らが身構えすぎていたのか、予選は結構楽に突破できてしまった。ここから先はトーナメント戦。
予選を勝ち抜いたチームとの戦いになる。卒業がかかっているのはもちろん、学生たちは優勝した際の報酬を目当てにやる気を出しているものも多かった。その報酬とは以下の通りだ。
”優勝したチームにはチームメンバー一人一人の願いを学園側が用意できる範囲で叶えることとする”
天草先生も言っていたが、これには毎年生徒たちの目の色が変わるという。学園には職員として優秀な魔法使いがたくさんいる。僕たちができることよりも何十倍も大きなことを魔法でやってのけるのだ。
学園側が用意できる範囲なんて言っているが、その魔法が及ぶ範囲を含めると、できないことなどほぼないらしい。その報酬も確かに魅力的だ。しかし僕ら第三の選択肢にはもっとやる気にさせる理由がもう一つ。なんと初戦の相手が、まさかのカエル作戦で勝った相手だった。
イービスくんからはキイルを通して宣戦布告をいただいている。
今回は正々堂々と勝負することができそうだ。
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