第2章 初めての試験

第7話 作戦会議

「それでは、作戦会議を始めよう」

 入学から二日目。放課後の第三理科室にて。ユグナからの召集で集まった第三の選択肢の五人は、彼が立つ黒板の近くに集まっていた。黒板には綺麗に整った字で一から十二までの数字と、所々に試験という文字が書かれている。


「二ヶ月後、入学してから初めての試験が行われる。一部例外もあるが、内容は各クラスの授業で学ぶ内容の筆記試験だ」


 黒板にAクラス〜Eクラス筆記と書かれる。そしてその下に、Dクラス魔法実技試験と彼は書き足す。


「試験にはDクラス、つまり魔法使い向けの魔法実技試験も含まれる。しかし我々のチームはその試験を受けたところで突破が難しい」

「そうですね……それにDクラスの筆記試験も、授業を受けていない私たちには厳しいことでしょう……」


 メロネさんが心配そうに言った。確かに、Dクラスの授業を受けていない人間に試験を解くことはできない。同じ新入生であっても、クラスによって学ぶ内容が違うと知ったのは、今日のことだった。自分のクラスの授業中、他のクラスは違ったことを学んでいるのだ。自分以外のクラスの勉強をできる機会はないし、試験も受けられない。そもそも自分のクラスの授業を聞くのすら精一杯だというのに。みんな僕と同じ考えのようで、困った表情を浮かべた。しかしユグナだけは首を横に振って強気の表情を浮かべている。なにか考えがあるらしい。


「Dクラスの試験を全て捨てることもできない。卒業のためには良い成績を残さなければならないからだ。そこで、作戦を考えてきた」


 再びユグナが黒板に何かを描き始めた。カッカッとチョークが黒板を打つ音を聴きながら、彼の手元を目で追う。姿勢いいなぁ、なんて考えるうちに迷いなく彼は書き進めていった。Aクラス、Bクラス……と順に五クラスを書き並べ、その隣に僕らの名前を書き始めた。


「筆記試験の担当割だ。無理は承知の上だが、自分の担当する試験は、満点を目指してほしい」


 書かれた内容はこうだ。AとDクラスの隣にユグナ、BとCはそれぞれクラスの者が担当。Eクラスのところには僕とポリトナちゃんの名前が載っている。


「ボクとサテくんは二人で受けるってことでいいの?」

「そうだ。試験の際は申請すればチームの席が用意される。二人は第三の選択肢の席に座り、交互に試験を受けてもらう。自分が担当する試験を集中的に対策し、もう片方が対策している試験は捨ててほしい。試験はチームごとの成績となるので、一人がすべて受けても、同じ試験を何人で受けても問題ないはずだ」

「確かにその辺りの話は、規約には明確に記載されていない。どのチームも基本的には自分のクラスの試験を受けるがな」


 アウィーロくんがそう良い、ユグナも頷いた。

「ああ。アウィーロの言うとおりだ。しかしこのチームは現状魔法実技を捨てざるを得ない。なのでその他の試験でカバーするしかないんだ」


 魔法使いがいない不利というものが早速回ってきたんだと僕は他人事のように思っていた。やはり魔法使いと組めるように待った方が良かったのかな。でも今更遅いよな。気持ちはいつだって揺らぐ。

「ユグナさんはAとDに名前がありますが大丈夫なのですか? そもそもどうやってDクラスの勉強をするつもりなのです?」


「問題ない。原始的だが、これを使う」


 メロネを安心させるように、ユグナは黒くて四角い小さな箱のような物体を見せてきた。

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