二〇二四年 七月 二日



 起きるとまず胃が重く、胃酸がこみあげた。朝の体調であるから仕方がないなとトイレで吐く。元々胃は荒れやすいのだが、久しぶりの嘔吐。


 前日の夜は、バーで二杯飲んでいる。ウォッカハイ、ウイスキーロック。つまみに鴨肉、しっとりとした肉質を甘い油が包んでいた。けっして吐くような量ではなかった。そういえば、賞味期限の一〇日ほど切れた納豆を食べていた。


 食べ物のせいにするのは気が引けるというか、食べた人が体調を崩した責任を負える食べ物があるとするなら、逆に、人間にとって不都合な他の面倒ごとも、同時に引き受けなければならなければいけなくなる、と思う。納豆のせいで吐いたというのであれば、こちらにも、納豆側の言い分が降りかかってきてしまう。


 食べ物との距離感を正しく保つには、食べ物に罪を求めないことだ、当たり前だが。冷蔵庫の中身を日々みる、点検するだけで嘔吐は避けられる出来事だった。助手のような、冷蔵庫のアプリがほしい。


 夜の川辺に降りた。いつものように川を褒める。目を上げると街灯のあたたかな色に意識が向き、これもまた褒める。街灯のシェードが花形であることに妻はこのとき、気づいたといった。

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