二千二十四年 六月 二十四日


 今日は暑くなった。患者を診ているうちに、診療室の冷房を一度下げたくなる。壁に張り付いたパネルの前まで歩き、下矢印のかたちをしたボタンを一回だけ押す。ぼんやりとコンセンサスが必要だなと思う。「一度ならよかろう、ということではないんだよ」と思い直した。


 ところで、「虫の舎む田んぼ」、そこに暮らす場所と書いて「田舎」という。そのくらい虫が多いので、虫のことを考えてみる。


 蚊が、庭先にたくさんいた。今年はじめての蚊柱が立っている。頭につっこまれたら大変なのでくねくねと変な歩き方になってしまう。


 「蚊柱」とことばにいうから「蚊」と言ったが、よく考えればこいつらは蚊ではない。もっと小さいように思える。


 この田舎では、春から梅雨にかけての「夏としか思えない何とも言えない時期」にも、みかける虫の種類が入れ替わっていく。うんざりしたころに、ぱっ、といなくなりみなくなる。せわしないのはその一生が、繰り返しを含めても、それでも人間の感覚にしては短いからだ。梅雨になればいなくなるごく短命な羽虫の群れも、また夏に戻ってくる。


 蚊柱が出てくるとカメムシをみなくなる。昼間はそう思っていたが、夜中に顔のすぐそばに飛びこんできたものだから、うわ、と思った。

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