第3話

 レオルは支給された結晶に魔素を注ぐことに夢中になり、心ここにあらずと言った調子で、ガーリック教諭の引率する後に続いて異界の扉に向かっていった。ただ、それは他の生徒も変わらず、普段は斜めに構えているレイラも支給された結晶に夢中になっているようだった。

 そんな様子にガーリック教諭は自身の若いころを思い出しながらも、異界の扉の前まで来たので生徒達の意識を現実に引き戻すために掌を強く打ち付ける。乾いた音が響き渡り、生徒達の意識が戻ってきたのを確認すると話し始める。


 「では皆さん、こちらに注目してください。」


 ガーリック教諭の指示に従い正面に目を向けると、巨大な扉が宙に浮いた状態で佇んでいる。その表面には様々な植物を入れ乱れるように描かれ、幾何学模様を形成していた。扉の中心には緑に輝く円形の宝石が収められており、教諭が手を触れると宝石の中心から植物の造形をなぞる様に光が巡り、ゆっくりと扉が開かれた。

 開かれた扉の先は渦巻くように歪んでいるが、淡い緑色の光を宿しどこか優しい雰囲気を感じさせた。


 生徒達は結晶に引き続き、初めて見る異界の扉に対しても興奮を示していいるが、ガーリック教諭は気を引き締めなおすように伝える。


「これから先、皆さんには異界へと向かってもらいます。そして支給した結晶より孵化した魔物以外に、2体の魔物たちを仲間にしてきてもらうのが課題です。

 期間は夏の新学期までの半年間となります。異界は一度足を踏み入れると、出現先はランダムになります。そのため自分と仲間にした魔物達のみでの探索となるため、私達教員も手助けすることはできません。十分注意してください。」


 モンスター達の力を競うモンスターバトルでは3体の魔物を選出して戦うのが基本となる。そのため、どこの学園でも魔物を三体揃えることを最初の課題とするのが定番となっている。

 ただ定番というだけで決して優しい難易度ではなく、半数程度は課題をこなせず学園から去っていくことになる。魔物たちを仲間にすること、これがシンプルながらも最も必要な才能となってくる。


「帰還する際には今からお渡しする導き石に魔素を込めてください。そうするとこの扉の前に帰ってくることができますので初回は無理のない範囲で帰ってくるのを進めます。では受け取った人から異界へと向かってください。」


 そうすると青く小さな石がつけられたネックレスが配られていく。最初に受け取った生徒がネックレスを首に下げると、恐る恐るといった感じで異界の渦に触れる。すると全身が淡い緑の光に包まれ、渦の中に巻き込まれるようにして、異界へとその身を投じたのであった。

 最初の生徒が行ったのを皮切りに次々と生徒達が異界へと向かっていく中、ネックレスを先に受け取ったレイラはレオルに向かって提案する。


「どうせなら同時に異界に向かうとどうなるか試してみない?」


「たしかにちょっと気になるな。そしたら少し待っててくれ」


 しばらくしてネックレスを受け取ったレオルはレイラと隣り合って扉の前に立つ。どこかお互いに緊張したような面持ちの二人は目を合わせてうなずきあう。


「準備はいいか?」


「もちろん」


「じゃあ行くぞ」


「「せーーの!」」


 二人は同時に異界の扉へと手を伸ばし、緑の光に包まれるのであった。






 

 

 

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