第2話
しばらくの間、生徒たちのざわつきは収まらなかったが、ガーリック教諭の視線に気付いたものから、1人ずつ口を閉ざしていく。教室全体に静寂が戻ったのを確認してから教諭は話の続きを始めた。
「では実際に現地に赴く前にいくつか基礎的な復習をしておきましょうか。ではそうですね、レオル君。名誉挽回の機会を差し上げましょう。」
「はい! 先生! 任せてください!」
先ほどとは打って変わってハキハキとした返事にガーリック教諭は苦笑いをしながら質問を投げかける。
「では一門目。モンスター達をテイムするためには、まず何をしなければいけませんか?」
「生物から無機物まで、あらゆる存在が宿している元素である魔素。その魔素の結晶を手に入れることです!」
魔素はレオルの説明のように世界中の生物から無機物まで、あらゆる存在が宿している元素であり、その魔素が集まり結晶化したものがより多くの魔素を吸収していくと実体化し、学術的には魔物、一般的にはモンスターと呼ばれる存在が生まれる。その実体化するまでの間にモンスターテイマー達は自身の持つ魔素を与えることで、魔物達との間に絆をつくるのである。
「よろしい。二問目もいきましょうか。魔素の結晶はどうすれば手に入りますか?」
「異界に行き、魔物を倒した時のドロップ品か、自然発生した魔素の結晶を手に入れることです!」
異界とは人間達の住む世界とは異なる魔物達が住む世界であり、国やテイマー協会が管理している異界の扉を潜ることで、異界へと行き来することができる。
また異界で魔物を倒すと、その身体は魔素化し、倒した者達に吸収されるが、時々吸収されるはずの魔素が集まり結晶化することがある。これはドロップ品と呼ばれ、モンスターテイマー達はドロップ品と魔素の吸収による能力の増加を目的に異界でモンスター達と戦い、戦力を増強していくのが基本となっている。
「正解です。ちゃんと座学の内容は頭に入っているようですね。」
ガーリック教諭は納得したように頷き。今後の流れについて改めて説明を始める。
「これより皆さんには、学園より魔素の結晶を支給します。最低ランクの結晶ですので、魔素を注いであげれば数十分で魔物へと変化、我々テイマーから孵化と呼ばれる現象を起こします。支給後、学園の管理する異界の扉へと向かいますので、丁度異界に着いた頃に孵化すると思います。」
ガーリック教諭が説明を終え合図をすると、教室の扉が開き、カートが運び込まれてきた。カートの中には黒よりも紺に近い、夜色とでも言うべき色の球体が乗せられている。球体には淡く光るひし形の模様が所々に散らばっており、色と相まって星空を圧縮したような外見をしている。
結晶を目の前にし、目を輝かせる生徒達へガーリック教諭が支持を出す。
「では名前を呼ばれた順に結晶を取りに来てください。」
受け取った生徒達は興奮冷めやらぬ様子で結晶に魔素を注いでいく。教壇側の生徒から順に名前を呼ばれていったため、レオルが呼ばれたのは一番最後となった。
「最後にレオル君。前へ。」
「はい!」
レオルにカートから最後の一つとなった結晶を渡される。結晶はレオルの手に渡ると、カーテンの隙間から差し込む光を反射し、一瞬のきらめきを放った。それはまるでレオルとの出会いを結晶が喜んでいるかのような光景だった。
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