第4-4話 君も不気味に感じただろうか
と思われたが、どういうわけか頭部が欠損したのは
彼は無事だ。
では誰が頭部を失ったのか。
答えは──頭を撃ち抜かれていない方の、もう1人の黒スーツの頭が吹っ飛んだのだった。
訳がわからず
「おやおや。さっきは上手くいったんですけどねぇ」
どうやら敵にとっても予想外の出来事だったらしい。驚いているように見える。やはり目元が隠れているため予想するしかない。
ただ、間違いないのは仲間であるはずの黒スーツが2人も死んだのに、意に介していないということだ。
「この鬼畜野郎が!」
警察官として目の前で人が殺されたのだ。黙って見過ごすことができないのだろう。加えて正義感の強い彼にとって、サングラスの男の行動は許し難いのだった。
「待ってください! 義兄さん!」
「離せ! トツ! あのクソ野郎を野放しにできるか!」
義理とはいえ、
振り払おうとするのを羽交締めをするような格好で義兄を静止する。
「ここは一旦弾きましょう!」
「何⁉︎ バカなことを言うな!」
「あまりに危険です! だから体勢を立て直しましょう!」
「この腰抜け! だったらお前たちだけ逃げろ!」
「あ、あの……」
小鳥だ。
かすかに体を震わせているが、
「ア、アナタの名前……な、なんて言うんですか?」
一瞬、沈黙が訪れた。
この緊迫した場面では、あまりにも似つかわしくなかったからだ。それでもすぐにサングラスの男は肩を揺すった。
「これは失礼しました、お嬢さん。ワタシの名前は『鈴木』と言います」
「そ、そうですか。じゃ──」
小鳥は大きく息を吸い込む。
やめろ、と
「
また沈黙が訪れる。
「お嬢さん、もしかしてアナタ……」
「鈴木」が1歩2歩と小鳥の方に向かって歩い来る。
「え? な、なんで動けるの⁉︎」
小鳥が目を丸くしていたのだが、それは
だが、この中で1番驚きの表情を作っていたのはサングラスの男──「鈴木」だろう。
おもむろにサングラスを外すと、そこから切れ長の目が現れた。目一杯に目を見開き、かすかではあるが、薄い唇が震えているように見えるのだった。
まるであり得ない光景を目にした時のようだ。
「も、もしかして名前を聞き間違えた? じゃ、じゃあ、もう一回──」
「やめとけ!」
「え? で、でも……」
1メートル四方の小さなもので、人1人が通れるくらいの大きさだ。
はめ込み式のため、取っ手を持ち上げて開くと、地下へと続く階段が現れるのだった。
「義兄さん! ここはいったん退きましよ!」
「この場はとりあえず逃げましょう!」
「ふざけるな! 犯罪者を放置したまま逃げられるか!」
「あまりに不測の事態が多すぎる! このまま戦っても勝てるかどうかわからない!」
「だからお前たちだけ流ればいいだろ!」
「この分からず屋!」
なおも抵抗する
「小鳥! お前も早く階段を降りろ!」
「は、はい!」
小鳥の体が完全に地下に潜ったのを確認すると、続けて|凸守(でこもり》もまた階段を降りる。
ドアを閉める直前、「鈴木」を見た。
何やら口元が動いた気がした。
何を言ったのかは聞こえなかったが、
マタ アイマショウ ツクヨミ
読唇術ができるわけではないため確実ではない。それでも「鈴木」がゆっくりと口を動かしていたため、当たらずとも遠からず、といったところだと確信している。
「トツさん! 何してるんですか!」
先に降りた小鳥が階段を見上げていた。その横には憮然とした表情の
我に返ると、ドアを閉めた。するとすぐに黒煙が上がる。
やがて探偵事務所は真っ赤な炎に包まれるのだった。
一方、探偵事務所では──
「す、『鈴木』さん。は、早く行きましょう……。ア、アタシたちまで燃えてしまいます……」
これまでただじっと見守っていただけの、残りの1人の黒スーツが促した。オロオロとあたりを見回している。
ずいぶんと小柄な人物で、顔だけを見るとまだ子供のように見えた。
「鈴木」は改めて事務所内を見回す。
「『
頬を持ち上げてそう言うと、黒スーツに蹴りを入れる。
小柄な黒スーツはあえなく床に転がるのだった。
「このグズ!」
まるで蔑むような視線を向ける。
「なぜ『
「す、すみません……」
「まったく! アナタは本当に使えない子ですねぇ、『伊藤』さん」
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