第5-4話 君も怒りに打ち震えているだろうか
全員の頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのを感じ取ったのだろう。
「いきなり『|別天津神(ことあまつかみ》計画』などと言われても意味不明だよな」
「ちょっといいか」
そう言ったのは
「
もたれていた壁から体を離すと、目の前にあったパイプ椅子を引き寄せ腰を下ろす。それから床に置いてあったカバンからノートパソコンを取り出し長テーブルの上に置いた。
慣れた手つきでキーボードを叩くと、画面に向かって「どうも」と素っ気なく言って会釈した。
「アンタの部下が『
ノートパソコンの中が急に人の声がして騒がしくなるのだった。
『それはイカン!』
『そうだ! アレは最高国家機密事項なんだから!』
『なんとしてでも秘密にせねば!』
どうやら美兎が話している相手は1人や2人ではないらしい。
画面は8分割されているが、どの男の制服にも階級章が付けられているところを見ると、警察の幹部連中が勢揃いしているようだ。
彼らが美兎の言う「面倒な連中」だというわけだ。
「そんなことを言ってる場合ですか!」
机を叩き怒りを爆発させたのは
『だ、だが……このことが世間に知れたら警察の威信は地に落ち──』
「威信など、とっくに落ちてますよ!」
あまりの迫力に、画面の向こうでは『ヒィ』と悲鳴が上がる。
「都内の警察署はほぼ壊滅状態。おまけに自衛隊も襲われた」
(警視庁だけじゃなくて、他の警察署や自衛隊までも襲われているだと……)
「まだかろうじてマスコミには知られていないものの、こんのは時間の問題でしょ!
そうなれば面子もクソもない。世間は大混乱におちいる!」
口惜しそうにまた拳て机を叩くのだった。
「この件は
黙ったまま彼を戦場に送り込むんですか!」
戦場──その言葉に会議室の中の空気が一気に張り詰めた。
それはノートパソコンの向こう側も同じだったらしい。しばらく顔を見合わせていた幹部たちだったが、やがて渋々といった感じでうなずいた。
『博士。あなたの口から、彼らに説明してやってくれたまえ。『
それだけに余計に聞かされた話は衝撃的だった。
今から60数年前ことだ。
日本政府は優秀な人間だけを集め、その者たちに子供を産ませるということを密かに行うことにした。
これは単に、優秀なDNAを持つ者を増やすことを目的としたものではない。
いかにして優秀な「スキル」を創り出せるのか──といったことを主として行われた計画だった。
それが先ほどからお前たちが再三耳にしている『
名称の由来は、日本で最初に生まれた神とされる『
他国では『ゼウス計画』や『ミッション ホルス』、『コードネーム カオス』などと呼んでいるらしい。
神の名前をつけだかるのはどこも同じのようだな。
名付けた者は厨二病なのかもしれやい。
やってることは神に矢を引くような真似なのに。
おっと、話が逸れてしまったな。元に戻そう。
優秀なDNAを持つ者たちを密かに集め、根気良く交配を繰り返していくうちに、ある日、突然変異が起きた。
これまでは火、水、土、雷、風の基本属性に加え、闇と光の7属性しかないと思われていたんだが、そのどれにも当てはまらない属性のスキルが生まれたんだ。
その日を境に、次々と特異なスキルが生まれるようになった。
お前たちがよく知る『
他にも『
そしてこれら特異なスキルの総称を『
火属性や水属性などと違い、スキルは1人につき1種類だ。
『
『
ただし、サブ属性には所有することが可能だ。
つまり1人の人間が『
そんな『神威属性』を持つ子供が生まれると、まずは自我が生まれないよう定期的に記憶を消去されるんだ。
やり方は簡単だ。
『
記憶を消すのはお手のものだろ?
なぜ自我を消すのかというと、知っての通りスキルは所有者の性格や思想などに影響を受けるからだ。
例えば同じ火属性だったとしても、気の強い者は火力が強くなり、優しい性格なら炎は柔らかく暖かいものになる──といった具合だ。
『
何せ『
プライドの高い『上級国民』たちは、誰かのお古では納得しない。
だからとりあえず『
ここで1つ、疑問が浮かんだんじゃないのか?
そう。メイン属性を外すことができるのは、所有者が死亡した時のみだ。
平たく言えば、子供たちは『
早い子だと12、3歳。遅くても20歳までにはどの属性かがわかる。
そこで選抜されるわけだ。
ノーマルな7属性のいずれかだった場合、そのまま街のどこかに捨てられる。
まあ、大抵はZ地区あたりだがな。
誰かに拾われ、育てられるならそれはそれでもかまわない。
運がなければ野垂れ死だ。
どうせ被験者たちには『
それに対して『
気取った言い方をしているが、要は殺されるということだ。
でないとメイン属性は外せないからな。
外された『
まさに鬼畜の所業と言える。
これでお偉いさんたちが執拗に、『
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