第5-3話 君も怒りに打ち震えているだろうか
再び
(こんなところに、こんな建物があったなんて──)
街中のど真ん中にそびえ立つ巨大ビル──一言で表すならそんな感じだろう。
だが、街中とは言ってもそれは地理的なものであり、周りには店舗と呼べるようなものか特に見当たらない。
ほとんどがビルやコンクリートの打ちっぱなしの、愛想のかけらも見当たらないようなシンプルなデザインの建物ばかりがならんでいるのだ。
後部座席にいる小鳥はもちろんのこと、
そんなふうだから道路には一般の人間は歩いておらず、このエリアだけなんとなく他の地区から隔離されているような感じがした。
それもそのはずで、ここの地区の敷地に入るためには高速道路の自動料金所のようなところを通る際には、身分証明書の提示を求められるのだ。
そもそもの話、こんな何もないただ整然と建物が立ち並ぶだけの無機質な場所にはなんの用もないので、足を踏み入れることはまずなかっただろうが……。
警視庁の裏口から入った時と同様、カードキーを差し込むと、カチャリと鍵が開いたので中に入る。
するとそこは真っ直ぐな廊下が続いていて、1番奥の突き当たりにはエレベーターがあるのだった。
上に行くボタンを押すと、すぐにドアが開いたため、
ここまで誰1人として口を開く者はいなかった。
なんとなくではあるのだが、口にしてはいけない気がした。それは小鳥や
硬く唇を結んだまま、階数を示すデジタルの数字を見上げていたのだった。
エレベーターのドアが開くと
|凸守がその光景を見てまず思ったのは、
「ここはNASAか……」
といったものだ。
実際には行ったことはなかったし、妻と一緒に観に行った映画で見ただけなので、あくまでも想像でしかない。だが、そう思わせるに足るほどの光景だったのだ。
まず棚田式に並べられた机と椅子には、所狭しとスタッフたちが座っていて、みなマイクをつけてパソコンに向かってキーボードを叩いている。
中でも
それは何分割にされていて、ところどころに見覚えのある景色が映し出されている。どうやら街中にある防犯カメラの映像を、ここで一括管理している場所であるらしかった。
「無事だったか、ツユ」
やって来たのはロマンスグレーの中年男だ。
白髪混じりの豊かな毛量を後ろに撫で付けていて、紺色のスーツを着込んでいる。胸の辺りが膨らんでいるところを見ると、どうやら拳銃を携帯しているようだ。
「キュウさんもご無事で」
2人はがっちりと握手をすると、「キュウさん」は
それに気がついた
「こっちは部下の
「そっちが噂の不出来の
と、「キュウさん」は
どうやら「不出来の──」についての説明もフォローもないらしい。
(どうやら俺がいないところでは、相当な言われようをしているらしいな……)
苦笑している
「こちらは
「よろしく。わたしのことは『キュウ』と呼んでくれ」
そう言って真っ直ぐに
「ツユの義弟の
驚くほど力強く握られてしまった。
「一応……『トツ』と呼ばれてます」
「そうだったそうだった!
口元には笑みを作っていたが、それでも鋭い目は初めて見る者たちを素早く見渡している。
身長は170センチあるかどうかではあるが、ガッチリした体格だ。エラの張った顔つきは、答案用紙に正解を書いただけで今の地位まで登り詰めたわけではないことがつぶさに見て取れた。
机に向かっているだけなら、これだけの筋肉は必要がないからだ。
(まだまだ現役バリバリって感じだな)
握手した右手をゆらゆらと振る。まだジンジンと熱を持っているのだった。
向こうは軽くだったのかもしれないが、
「立ち話もなんだから、こっちで話そう。全員、来てくれ」
近代的な先ほどの部屋とは打って変わり、連れて行かれたのはどこの会社にでもあるようなやや広めの会議室、といった感じの部屋だった。
中央には4つの長テーブルを四角くなるように並べられていて、その周りにはパイプ椅子が等間隔に置かれている。
部屋の1番奥にはホワイトボードがあるのを見ると、どうやら「会議室といった感じ」ではなく、本当に会議室として使用されているところなのかもしれない。
「さあ、入ってくれ」
会議室には「先客」がいたからだ。
その人物は長い髪の毛を後ろで束ね、白衣を着ている。
両手は白衣のポケットに突っ込まれていて、壁にもたれ、
やや面長の輪郭に、形の良いパーツがそれぞれに然るべき場所に収まっている。小鳥がかわいい系だとしたら、こちらはキツめの美人といったところだろうか。
スラっとした長身で、
「紹介しておこう。こちらは
「博士?」
「こちらの
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