第二十三章 Impending 5/7

「──無敵、か」


9月9日。僕はぶらぶらと歩きながらぽつりと呟いた。

最終決戦まであと3日。僕は爺ちゃんから聞いた話を参考に『I』に勝つ方法を考えていた。


「頭良いのに……小学生が考えたみたいな能力……」

『Invincible』、『無敵』。車椅子に乗っているという大きなハンデを抱えながら、『I』がここまで生き延びる事ができたのはこの単語のおかげだろう。

厄介なのは、ここでいう無敵というのは『無敵のラスボス』とか『天下無敵の将軍』とかいう比喩表現ではなく、本当に無敵だという事だった。たとえ主人公が覚醒しようと、ゲームのキャラをどれだけレベル上げしようと、システム上倒すことが出来ない相手のようなモノだ。たしかに、そう考えると『I』──桐生イオリが『僕は文字に恵まれた』と言ったのは間違いではない。むしろ大当たりだ。

無敵──文字通り、殺す事が出来ない状態。

強力だ。強力すぎる単語だ。

だが、その強力さゆえ、桐生イオリは『Invincible』という単語に信頼を寄せているはずだ。もともと自信家のように話すし、『I』という『アタリ文字』を引き当てて、彼の自信は絶好調に達しているはず。

そこに付け入るスキがあるかもしれない。


「はァ……」

僕はいったん立ち止まり、携帯を取り出して鴨ちゃんに電話をかけた。


『マナブくん?』

朗らかな声で彼女は答える。


「もしもし。今良いかな」

僕は声を押さえて携帯に耳を近づけた。「お願いがあるんだけど」

『それはいいけど……ちょっと聞こえづらいね。今どこにいるの?』

「ホームセンター。3日後の戦いに備えてちょっと、ね」

『もう3日かぁ。私に手伝えることあるかな』

「それなんだよね。ちょっと頼みたい事があって」


僕はそう言いながら歩き、キャンプ用品の売り場に辿り着いた。

しゃがみ込んで品定めを始める。


「これから3日間、毎日使って欲しい単語があるんだ。朝4時前に起きる事は可能?」

『あー、たぶん』

「ありがとう。じゃあ、作戦を伝えるね──」

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