第二十三章 Impending 4/7
「──ん」
朝、7時ごろに起きると、僕の目はすぐに異変をキャッチした。
──鴨ちゃんがいない。
僕は布団から抜け出し、「鴨ちゃん?」と声をかけた。それから部屋をくまなく探し、隣の部屋やトイレ、風呂などを見て回った。
しかし彼女はどこにもおらず、眉をひそめながら風呂から出てきた僕は、食卓の上に紙片が置いてあるのに気付いた。
それは鴨ちゃんからの手紙だった。
『おじゃましました。気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったよ。じゃあ今度は9月12日に、一緒に戦おうね!』
手紙の右下には丸々と太った鳥の絵が描かれていた。模様から察するにメスの鴨だろう。その鴨から吹き出しが出ていて、手紙の内容をぐるりと囲んでいた。
僕は部屋をきょろきょろと見回す。ベッドの上の布団は綺麗にたたまれており、外れていたシーツも元に戻っていた。
「……起こしてくれれば良かったのに」
僕は1人つぶやく。鴨ちゃんの言う通り、昨日は快眠できたのだが、別に途中で起こされても文句を言ったりはしなかったのに。
僕はふと思い立ったので、手紙を持ったまま玄関へと向かった。昨日鴨ちゃんに貸してあげた僕のパジャマが無いなー、などと思いながら、僕はドアを見た。
玄関のドアの鍵は、閉まっていた。
「……?」
僕はもう一度手紙を見る。そしてもう一度ドアを見た。
「鴨ちゃん、ウチの鍵持ってないよな……?」
思考がそのまま流れ出るように、自然と口が開いていた。
鴨ちゃんにはこのドアの鍵を外からかける方法がない。なら、鴨ちゃんが玄関から出て行った後に鍵がかかっているのはおかしい。
僕はいちおう部屋に1つだけある窓を調べた。しかしそちらにも鍵がかかっていた。
色々と考えていると、そういえば、鴨ちゃんが着替えを持って来ていなかった事に気が付いた。まさか僕のパジャマを着たまま外に出たのだろうか。
「……」
『Disappearance(消滅)』みたいな単語を使えば、鍵を開けずとも出ていけるだろうか。でも、わざわざ家から出ていくのに『文字』を使うか?
しかし、それ以外の説明が思いつかなかった。僕はとりあえずその説を信じ、これ以上考えないようにした。
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