第二十二章 Dedication 4/4
『I』からの電話の後、僕は落ち着かなくて夢中で勉強をした。そうして10ページほど教科書を進め、100問ほど問題を解いたころだった。
窓の外はすっかり暗くなり、真っ黒な空にビルや車の明かりが点々と浮いている。時折聞こえてくる電車の音と、窓を横切るライトだけが外の様子を知らせてくれる。
時刻は午後7時を回った頃だった。
この時間、僕はたいてい夕飯を食べている。
それは3分で茹で上がるパスタだったり、レンジに入れて放置するだけで出来る冷凍食品だったり、コンビニから取ってきた弁当だったり、はたまたカップラーメンだったりするが、たいてい時間のかからない食事だ。
今日は勉強が長引いたのもあって、少し遅い食事になる。僕は食卓の上に置かれたカップ麺を開けながらお湯を沸かした。
「さて……」
そしていざ、容器にお湯を注ごうとした瞬間だった。
インターホンが、ピンポン、と陽気な音を立てた。僕は思わず手を止める。
「またかよ」
呟きながら玄関へと向かう。なぜこうも夜遅くに来客が来るんだろう。時間を考えて欲しい。
僕はドアノブに手をかけ、ひねって押した。「はぁい」とぶっきらぼうに言い、顔を上げた。
そこに、1人の女性が立っていた。
*
「え──なん、で……」
僕は思わず、そう言った。
息を呑み、目を見開いて、僕は目の前に立っている女性に向かって言った。
遠くでクラクションの音が聞こえる。アパートの外をバイクが通り過ぎ、そのヘッドライトが彼女の背を明るく照らした。
「──『なんで』、って?」
彼女が口を開けた。
それはとても優しく、そして、どこか悲しい声だった。
「約束したでしょ? 『マナブくんを守る』って」
そう言って、彼女は──
「一緒に終わらせよ? この『文字戦争』を」
鴨川ダイヤは、歯を見せ笑うのだった。
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