第二十二章 Dedication 3/4

電話が終わった後、僕はしばらくぼーっとしていた。もうこの殺し合いが始まって2か月になろうとしているが、『殺し合いの約束』というのは初めてだ。

思い返せば、僕はいつも巻き込まれていた。『K』の時も、『E』の時も、『J』も『P』も、あの廃ビルでの戦いも、僕が望んで起こした事ではない。言ってみれば、僕は自発的に戦った経験が1つも無い。

「…………」

なら、なぜ最後の最後になって『I』と戦うつもりになったのか。

それはたぶん、終わらせたかったからだろう。この不毛な殺し合いを。僕と爺ちゃん以外の敵を全員殺し、文字を持ったまま一生を生きていく。そんな未来が、もうすぐそこまで来ているように思えた。


『──考えろ』


ふと、記憶が蘇った。


『誰が怪しい? 何故、俺たちは殺し合いなんてしている? 俺たちの──参加者全員の共通点を探すんだ。俺たちはランダムに選ばれたワケじゃねェ』

これは4日前、『P』が──花岡が僕に向かって言った言葉だ。そして、彼はこう続けた。

『この3つが分かれば、この殺し合いを終わらせられるかもしれねェ。もう誰も殺さなくて良い、理想の未来がつかめるはず──』


誰も殺さなくて良い、殺し合いが終わった世界。

その未来に魅力を感じ、僕は『P』と手を組むことにした。どうせ一度終わりかけた人生だ。賭けるのは簡単だった。

だが、当事者である『P』が死んでしまった。僕1人でも達成できる未来かもしれないが、残りの参加者が4人、そのうち敵が2人だけ、と考えると、どうも現実的とは思えない。

「いちおう、可能性はあるけど……」

僕は椅子の背もたれに体重を預けながら、天井に向かって呟く。横目で窓の外を見ると、もう既に日が傾き始めていた。

僕は椅子に座りなおし、ノートを開く。『I』と『Q』と殺し合う事が確定した以上、何かをしていないと気が落ち着かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る