第十八章 Dearest Sage 7/7
今日、思い知らされた事がある。
それは、僕が主人公ではない、という事。
なんとなく、この戦いは生き残れると思っていた。最後まで鴨ちゃんとセイジさんと一緒に乗り越えて、3人無事に生き抜くと、そう思っていた。そう、勘違いしていた。
違った。
この戦いに、正義とか悪とか、そんなものは無かった。主人公も脇役も居ないし、台本なんてモノも存在しなかった。
鴨ちゃんとセイジさんが死ぬ。それは、僕の敵だった『F』や『R』、『X』が死ぬのと、何も変わらない。鴨ちゃんもセイジさんも主役じゃないし、ご都合主義で生き残る事もない。
それを、僕は理解していなかった。
自分をいつの間にか『主役』みたいに考えていた。このまま勝ち進んで、この殺し合いもなんとなく終わる気がしていた。そんな、傲慢すぎる勘違いを僕はずっとしていたのだ。
「──ウソ、だ……こんな……」
受け入れられない。
セイジさんと鴨ちゃんが光に包まれている。それを、僕は受け入れられなかった。
「まだ生きてるだろ! やめろ……やめろよ!」
僕は光を取り払うように2人の身体をはたいた。でも、光は消えるどころか数を増していった。
「やめ……て……」
僕の抵抗もむなしく、2人は完全に光に包まれた。そして、まるで空気に溶けていくかのように、光は虚空へと流れ出す。
「あ……あ……」
僕は空を掴む。何度も、何度も。2人の身体は既に欠けているが、それでも僕は抗った。
──ありえない、ありえない、ありえない。
──やめて、返して。
──嘘だ。
やがて、僕の脚の上から2人の体重が無くなった。
*
──空っぽだ。
玄関も。僕の心も。
何もかも、奪われていった。
光の無くなった玄関は、頭が痛くなるほど冷たい。
それでも、僕はその場に座り続けた。
2023年、8月7日、午後8時2分。
朝霧セイジ、鴨川ダイヤの2人が、僕の目の前で消滅した。
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