第十三章 Perilous 1/9
2023年、7月30日。水曜日。
僕はベッドから起き上がり、顔を洗ってから朝食を食べた。アパートを出て川沿いに歩き、大船観音を左手に臨みながら大船駅のエスカレーターに乗った。
そのまま直進し、左折して改札を通る。正面にはアトレがあり、まだ開店前のラーメン屋の看板が見える。少し奥に行くとたこ焼き屋や本屋などが並んでいる。
僕は電光掲示板の前で左に曲がり、一番線を目指した。途中の自販機でオレンジジュースを買い、プリペイドカードで支払う。
「──まだ10分くらい余裕あるな」
僕はそう呟き、しかし他にやる事もないので一番線のホームで電車を待った。
20分後。僕は湘南新宿ラインに乗り、横浜駅で降車した。
*
駅から学校までは歩いて20分と言ったところだろうか。退屈な時間だ。これが帰り道ならダイキかヨシアキ、それか鴨ちゃんが一緒なのだが、登校する時はたいてい僕1人だ。
1本か2本早い電車に乗れば一緒になれるのだが、僕はどうしても、たった10分程度の早起きが出来ない。たとえ前日に10分早く寝たところで、目が覚めるのはいつも7時30分だ。どうあがこうと、これは変えようがないらしい。
僕は8時23分に学校の正門をくぐり、25分に教室で自分の席に座った。
「相変わらずだな」
ヨシアキがこちらを振り向き笑う。その5分後には、もう授業が始まっていた。
*
数学、国語。
同じことを繰り返しているような、そんな授業。理科のような実験も無ければ、歴史のような時間の進みも無い。僕が嫌いな2つの教科だった。
そうこうしているうちに2限目が終わり、3限目の英語が始まった。
「──はい、グッドモーニン、エベリワン」
伊藤コウタロウ先生が行方不明になってから──というか、亡くなってから──英語の授業はとりあえず池内先生という人が担当になっている。彼は本来2年生の担当なので、伊藤先生の穴を埋めるために今までの倍働いているという。
しかし、カナダに留学経験のある伊藤先生と違って、池内先生は教科書を読むだけの授業だった。英語の発音はひどいものだし、ちょくちょく文法や単語の綴りを間違えている。それを指摘するほど僕は野暮な人間ではないが、伊藤先生の頃と比べて英語の授業が好きではなくなってしまったのは事実だ。
一度も発言することなく僕は英語の授業を乗り切った。そして11時45分、昼休みが始まった。
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