第九話 Viper 6/8

「…………」

──少年院。

聞いた事はある。でも、まさか自分が行く羽目になるとは決して思わなかった。

弁護士になる夢は──いや、もはやまともに生きる権利すら、失ってしまったのかもしれない。


あの担任──朝霧セイジとかいうヤツは、最後まで僕を助けてはくれなかった。その場しのぎの言葉や謝罪を繰り返し、臆面もなく『気付けなくてごめんな』などと言った。

島津を落としたあの日も、アイツはまず僕を責めた。次に島津の心配をした。僕に対して退学処分を言い渡したあの校長も、セイジが進言すれば考えを改めたはずだ。

なのに、アイツはそれをしなかった。アイツは生徒の心配なんて全くしてなかった。心配だったのは一つ、自分の受け持っているクラスが問題を起こすこと。ただこれだけだった。自分の事しか考えていなかった。だから、あんな心にもない事を悪びれもせず言う事が出来たのだ。


知らない人の、知らない車。

知らない場所の、知らない匂い。

後部座席に揺られ、窓の外をぼんやりと眺めながら、アキトはぽつりと呟いた。


「…………こんなはずじゃ……なかったのに……」

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