※ 第14話 初めてのお店


かつて、このグライソにおいてグラ娘は二種類に分けられていた。

競技者かそうじゃないか、の二つに。


オーディションでオーナーから指名されなかったグラ娘は清掃員や肉体労働に従事するしか無かった。

けれど、科学が発達して機械化が進んだ現代においてはその労働力も過剰気味だった。

なまじ身体能力が高く、少人数で済んでしまうが故に需要に対して供給過多だった。


そんなある日、ユウガオと名乗る女性が指名漏れしたグラ娘を集めて娼館を開いた。

それはグラ娘にとって競技者かそれ以外……この二択から抜け出す新たな選択肢だった。

時には低ランクの競技者よりも稼げるこの仕事は、指名漏れしたグラ娘に残された最後の希望なのだ。


なお、自チーム所属のグラ娘と結ばれる事は別に悪い事じゃない。

だけど人間とグラ娘とでは寿命に差がありすぎる。

ただでさえ辛い別れが、身体を重ねた相手ともなればその悲しみは計り知れない。

だからオーナーの多くはビジネス……お金の関係で割り切れるこの場所で性欲を発散する。

かく言う私も興味があって……チームがDランクに上がって少し余裕が出来たのでこうしてやってきた。


ちなみに、オーナーになる為の試験には女性同士での性行為も含まれている。

私の時も実際に候補者同士でペアを組んで、試験官監視の下で行為を行った。

この時のパートナーが何を隠そうシェリー。

あの日以来、妙に懐かれちゃったな。


何故そんな事を? と聞かれれば、ここがグライソだから……としか言いようが無い。

なにしろここは男性の存在を完璧に抹消している、女性同士で愛し合うのが当たり前の場所。

男性を恋しく思ったり、女性同士の行為に忌避感を抱いてグラ娘に違和感を覚えさせない為に必要な措置だ。



「さて、と。お値段お手頃なのは……この店かな?」


「いらっしゃいませ」



店に入ると、綺麗な店員さんが出迎えてくれた。



「えぇっと、こういうのは初めてなのですが……」


「ご安心ください。そう複雑な事ではありませんので。

キャストも慣れている者ばかりなのでどちらのプレイにも対応出来ますよ」


「は、はぁ……」


「こちらが今空いている者のリストになります」



手渡された端末に目を落とす。

そこにズラリと並んだグラ娘達の顔と名前に、私は思わず感嘆の息を漏らした。



「あ、この人……」


「ピンとくる娘が居ましたか?」


「あ、はい。綺麗な人だな、と」


「彼女はフロール。この店のナンバー2です。

ベテランなのでお客様にきっとご満足いただけるかと」


「なるほど……じゃあこの人を指名でお願いします」


「かしこまりました、それではこちらがお部屋の鍵になります」


「ありがとうございます」



鍵を受け取って部屋に向かいながら、私は期待に胸を膨らませていた。

どんな風に愛して貰えるのか? どんな事をしてくれるのか? そんな妄想ばかりが頭を埋め尽くしていた。



「ふぅ〜……いや、緊張するな……」



別に交際や性行為の経験が無い訳じゃないけど、こういうお店を利用するのは初めてだ。

だから期待より、緊張の方が上回ってる。



「でも……」



だけど、それでも私の胸は高鳴っている。

不安以上に期待が勝っている。

そんな自分の心を自覚しながら私はベッドに腰掛けてその時を待つ。



「失礼しまーす」


「は、はいっ」



唐突にドアがノックされ、慌てて姿勢を正す。



「ご指名ありがとうございます! 本日はお世話になりますフロールです」


「あ……こ、こちらこそ……」



入ってきたのは長身で細身のグラだった。

長い紫髪に翠の瞳。そしてなにより目を引くのがその大きな胸だ。

シェリーに匹敵するんじゃないだろうか?

そんな感想を抱きながら私は彼女に慣れた手付きで服を脱がされていく。

そして彼女も服を脱ぎ、お互い裸になったところでベッドに座って向かい合う形になる。

すると彼女はゆっくりと私を抱きしめ、唇を重ねてきた。



「ん……ちゅ……んぅ……」



最初は軽いキスだったが、徐々に舌を絡ませ合う濃厚なものへと変わっていく。



「はぁ……はぁ……」



長いキスの後、ようやく解放された私は肩で息をしながら彼女を見つめた。

すると彼女は妖艶な笑みを浮かべつつ私の胸に触れた。



「あ……」



彼女の手が優しく胸を揉む度に甘い刺激が走る。

その快感に耐えられず思わず声を漏らしてしまう。

そんな私の様子を楽しみながらフロールは私の耳元で囁く。



「やっぱりMなんですね。一目見た時から分かりましたよ、アブドウナビさん?」


「っ!? な、なんで私の名前を……ふあぁん♡」



突然本名を呼ばれ動揺する私だったが、その隙を突いて彼女は私の胸の先端を口に含む。

そしてそのまま舌先で転がすように弄ぶと、もう片方の胸に手を伸ばし指先で摘まんだり弾いたりし始めた。



「あっ♡ だめぇ……それ、感じ過ぎちゃうからぁ……っ」


「ふふ……可愛いですよ、アブドウナビさん。いえ、ルカさん」



そう言ってさらに強く吸い上げてくる。同時にもう片方の乳房にも爪を立てられる。

その痛みすら今の私には快楽として受け止めてしまう。



「ふふ、史上初の格闘術を主体にしたグラ娘、シルバーファング。

彼女を育てているのが新人オーナーともなれば自然と名前も聞こえて来るというものです。ねぇ? ルカオーナー?」



ついに彼女の手が私の下腹部に伸びる。

情けない事に、前戯で散々高められた私の身体はいとも簡単に絶頂を迎え……けれどそれだけでは終わらず、屈辱的な懇願の言葉を言わされるまで責め苦は続いたのだった。




……うん、次来たらまたフローラさんを指名しよう。


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